F1日本GPの木曜日、鈴鹿のパドックに姿を現した平川亮(BWTアルピーヌF1リザーブドライバー) いよいよ開催が近づいてきたF1日本GP。角田裕毅のレッドブルへの緊急移籍で話題が沸騰しているが、もうひとりの日本人ドライバー、平川亮の存在を忘れてはいけない。BWTアルピーヌF1チームから鈴鹿のFP1を走行することになる平川について、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の中嶋一貴TGR-E副会長の期待と今後、そしてFIA F2の宮田莉朋や今後の海外若手ドライバー育成の方針について聞いた。
いよいよ今週末に迫った鈴鹿サーキットでのF1日本GP。まずはアルピーヌからFP1に参加する平川に、中嶋一貴副会長はどのような期待をしているのだろうか。
「そうですね。違うチームですので、自分がどういう立場で話をすればいいかは置いておいて(苦笑)、いちドライバーとして、ここまで国内からWEC(世界耐久選手権)、F1でもマクラーレン、ハースでたくさんテストして、いろいろな経験を積んできて、彼の成長を見させてもらって来ました。その経験を何よりも日本でたくさんのみなさまの前で披露できるチャンスだと思いますので、すごく期待をしている反面、いろいろなプレッシャーもあると思いますので、純粋に楽しんで乗ってもらえればという、それに尽きるかなと思っています」
当然、一貴副会長もかつて走ったように(2008年、2009年)、F1で母国の日本で走るというのは、どのようなプレッシャーがあるものなのか。
「うーん、どうだったかな(笑)。というくらい、自分にとっては昔のことなので。まあでもやっぱり勝手知ったる場所ということで、特にレースを世界で転戦してきている中で走る母国グランプリというのはプレッシャーもあるけど、やっぱり落ち着くというか。母国なのでもちろん頑張りたいという気持ちはありつつも、居心地の良さが勝っていたかなという記憶はありますね。ですので、平川選手もそういう風に感じてくれればいいと思いますね」
昨年末のオフ、平川選手がハースでテストした際、小松代表はじめチームからの評価が非常に高かった。昨年からWEC、F1で平川選手の存在感が高まっている中で、今後はどのような展開を考えているのだろう。
「僕の立場としてできることはもちろん限られますけれど、やっぱりいろいろな機会を作ってく中で、彼が実力を発揮することでそうやってチャンスが掴めることにつがると思うので、できる限りのことをしたいという気持ちはもちろんあります。とはいえ、やっぱりドライバーとして彼自身がどういう走りを見せられるかというところにかかってくるところも多い」
「それでも今まで、たくさんの人が彼に対して思っている期待値を超えるものを見せてきてくれていることも間違いないと思いますし、それが今の彼の高い評価につながっていると思います。今回もその周りの期待を超える走りを続けて行ってほしいですし、我々としてもできる限りのサポートを続けていくしかないかなと思います」
もうひとり、F1に近い存在として聞きたいのが、FIA F2に参戦している宮田莉朋選手について。開幕戦のオーストラリアではエンジンの不具合で12位という不本意な結果に終わったが、今季の宮田選手は昨年までのWECのサポートドライバーやIMSAなどの活動をせず、FIA F2に絞った。その方向性について、一貴副会長はどう感じているのか。
「去年1年やってみて、見えてきたことがたくさんある中で、僕ひとりの判断ではないですけれど、総合的に判断しての今年の選択ということになります。ただ、去年以上にF1というものが明確なターゲットになっていることの現れでもあると思いますし、彼にとってはそうすべきだとも思います。やはり結果を求められる年でもあるので経験を積む、学ぶということだけではなく、求められる結果を出すために最適な選択をしようとした結果が、今年のアプローチだと思います」
今年の1月にはハースで旧車になるが、宮田選手もテストでF1を初ドライブした。
「僕はその時、現場に行けなかったのですけれど、限られた時間の中ですごくいい走りをしてくれたと聞いています。やはり日本でスーパーフォーミュラをたくさん経験して乗って来ているので、本人のクルマへの感覚としてはFIA F2よりもF1の方がスーパーフォーミュラと近いのだろうなという気がしています」
◾️トヨタWECチャレンジプログラムの今後とドライバー育成の目指す先
そこで気になるのが、宮田選手が今年の参戦をFIA F2に絞ったことで、宮田選手が昨年兼務していたWECチャレンジプログラムの次の候補ドライバーがどのような状況になっているのか。
「ドライバー育成のチャレンジプログラムが、今はWECに特化する必要があるとはあまり思っていないですね。(小林)可夢偉(WECチーム代表兼ドライバー)もそうですし、僕自身もそうですし、TGRのWECのドライバーが全員、レースには出てないですけどテストドライバーなりなんなりF1を経験して乗っているわけですよね」
「そういった意味では、耐久レースに特化した育ち方がすべてではないとは思うので、F1を目指すなかでいろいろなその先の道がどこかで枝分かれしていくという方が、ある意味王道かなとは思います。もちろん、これからフォーミュラの階段を登っていくドライバー全員がF1のチャンスをつめればそれに越したことはないのですけれど、F1はそんなに甘い世界ではないですからね」
モリゾウさん(豊田章男トヨタ自動車会長)のF1への理解を含めて、ここ1〜2年でTGRドライバーの可能性が大きく広がった中でも、やはりTGRといえどもF1に乗るというのは簡単なことではない。
「もちろん、F1で引退するまで走れればそれに越したことはないですけど、これから5人、10人と未来に向けてドライバーがどんどんステップアップの階段を登っていくとして、その全員がF1に乗ることが成し遂げられるかというと、それは絶対にないと言い切ってもいいぐらい、やっぱりF1はそんなに甘い世界ではありません」
「そういった時、F1のチャンスがなかったドライバーにどんな活躍の場がありますかという意味では、WECという世界は非常に大きな意味があると思っていますし、WECはWECでF1と違ったレースの戦い方とか、車両開発の部分でも大きな意味があると思っています。そういったところに TGRに貢献してくれるドライバーが、この育成プログラムの活動の中から将来的に出てきてほしいと思っています」
少し前まではTGRの活動のトップ、ゴールがWECというイメージがあった。今はWECのゴールにこだわっているわけではないということなのだろうか。
「はい。ですので、今はそのゴールが広がった、選択肢が広がったと思いますね」
TGRのドライバー育成という点では、今年、スーパーフォーミュラで育成チーム(KDDI TGMGP TGR-DC)が誕生した。このスーパーフォーミュラでの育成に関しては、一貴副会長、片岡龍也チーム代表(TGR-DCレーシングスクール校長)との役割はどのようになるのか。
「そこに関して、僕は基本的に直接的な関わりはないですね。片岡代表の担当になるのですけど、とはいえ、そこで国内と海外と線を引く必要はないと思いますし、莉朋みたいに国内のトップカテゴリーで結果を出して海外に挑戦するという例もできた。そういった意味で、スーパーフォーミュラの育成チームに関しては、国内の若手ドライバーを国内トップカテゴリーまで含めてしっかり育成しようという想いがかたちになったチームと理解しています」
スーパーフォーミュラのチームも当然、チームの運営のためのスポンサー活動があり、今のスーパーフォーミュラではエンジニアとドライバーの相性の影響も大きい。当然、チーム力の差も当然あるので、ドライバーの成長度合いを把握するのは簡単ではない。
「今までは国内トップカテゴリーでも、やはりチームの環境に左右されてしまって、チーム任せになってしまっていた部分がありますので、トップカテゴリーでも自分たちで育成するという意味でのチームだと思います。今までは所属したチームの環境の中で、ある意味、自助努力で学んでく、その経験を通して育っていくというのが当たり前だったのですけど、そこも含めてきちんと育成していくという形の現れが、今年のスーパーフォーミュラの育成チームだと思っています」
昨年発表されたマネーグラム・ハースF1チームとTGRの技術提携と合わせて、TGRドライバーの活動がF1にも大きく関わってきた中、そのTGRの育成の先頭を走る平川が鈴鹿でどんなインパクトを残すことができるのか。ホンダ育成出身の角田裕毅のレッドブルでの初走行と合わせて、日本のドライバー育成が大きく世界に影響していくのは、何よりファンにとって嬉しい状況だ。
[オートスポーツweb 2025年04月03日]