新たにSUV時代に突入するSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”は、新車を担当する技術者向けの『ホモロゲーション・マスタークラス』と呼ばれる技術講習会を開催 この2025年より、新たにSUV時代に突入するSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”は、新車を担当する技術者向けの『ホモロゲーション・マスタークラス』と呼ばれる技術講習会を開催。新型SUVストックカーのシボレー・トラッカーにトヨタ・カローラクロス、そしてミツビシ・エクリプスクロスの3車種が登場する2025年シーズンに向け、この3メーカーを使用する全15チームを対象とした6日間の製造ワークショップを実施した。
昨季最終戦終了後には異例の“ドラフト制”で各陣営の車両割り当てを決定していたSCBだが、今回7台の車両を2グループ、8台の車両を2グループと合計4つのグループに分け、改めて車体構成をガイダンスする機会を設けることに。
このプロジェクトの開発者である自動車と電子技術の専門企業『アウダーステック』社の技術陣が主導し、各チームのエンジニアやメカニックを専用ベイに配置して理論的な指導を受講させたのち、総勢30台の新型SUVストックカーを組み立てるワークショップを開催した。
この専門家の認定と並行し、世界中のモータースポーツ技術に関する主要な出版物である『レースカーエンジニアリング』誌がその内情を記事化し、最新の3月号では6ページにわたって詳報。新型共通シャシーである“SNG01(ストック・ニュー・ジェネレーション・バージョン01)”の技術ハイライトを掲載している。
前述のとおりブラジル企業であるアウダーステックにより設計され、VCU(車両制御ユニット)などの複雑なシステムを含め地元の技術が活用されている“SNG01”は、世界的な鉄鋼大手『アルセロール・ミッタル』社と提携してDP980R鋼を使用した精巧な共通シャシーを構築。高張力スチール製の鋼管構造スペースフレームに、アルミニウム板と耐熱コーティングを施した耐火バルクヘッド、衝撃吸収とエネルギー散逸のためのカーボンアラミド製のサイドインパクト構造を備え、このプロジェクトのため特別に開発された車体は、フランスにある同社の研究所でテストされ、合計1800を超える部品がブラジルで設計、製造されている。
今回、参戦チームを対象に4つのグループに分割したホモロゲーション・マスタークラスは、ブラジル・サンパウロ州の都市コチアに位置するアウダーステック本社で6日間続き、クルマ1台につき4名のメカニックが付き、丸1日の座学とクルマを組み立てる5日間のワークショップというモジュールで構成された。そして最後に、参加したチームの技術陣は新しい資格を証明するアウダーステック発行の証明書を受け取る行程となっていた。
「彼らのほとんどはストックカーで長年の経験を持つ、定評のある技術者たちだ。それでもこの認定資格が必要なのは、彼らに“SNG01”の特定の機能を紹介し、日常業務やより重要な競技の状況で大いに役立つようにするためだ」と説明したのは、シリーズプロモーターのヴァイカーと同じグループ傘下であるアウダーステック社のCEO、エンツォ・ボルトレート。
「彼らは組み立てプロセスの詳細とそのすべてを深く学ぶことができ、製造プロセスに関する情報や、各アイテムが最大限の効率と耐久性を持つよう進める方法についても情報を得ることができたんだ」
この座学と組み立てワークショップを担当した4名の技術開発陣も、チームメンバーの作業を監視して指導し、開発者の視点からアドバイスを授ける役割を担った。
「チームのテクニシャンたちは、新しいストックカーの組み立てと調整に関するすべてのシステムと、手順に関する詳細なマニュアルも受け取る」と語ったのは、新型SUVストックカーのシャシーとサスペンション開発でリーダーを務め、かつてジョーダンF1チームでも働いていたホセ・アヴァローネ・ネト。
「このクルマ自体は以前のモデルよりもはるかに速く、より現代的であるだけでなく、あらゆるレース状況で作業がしやすいようにも設計されている」
このホモロゲーション・マスタークラスでは、システム組み立ての参考として役立つよう、すでに10000kmを超える開発テストに使用された3台の組み立て済み車両も用意され、各モデルの取り付けポイントをチェックするためのフェアリングセットも準備された。
「我々がつねに気にかけているのは、全員がプロジェクトのあらゆる側面について、まさに200%の準備と情報を得た状態でここを去ることだ」と、2022年半ばに始まった“SNG01”の開発プロセスでトラックテストを担当してきたラファエル・カルドソ。
その同氏は新型SUVストックカーのパワートレイン開発も主導しており、開幕戦のデビュー前にはシステム最終検証のための公式テストセッションを実施する予定だと明かした。
「彼らは全員経験豊富なプロフェッショナルで、すべてを非常に簡単に吸収した。この段階の後、全員にとっての次のステップは、ここで学んだことをトラックで使うことだね」
[オートスポーツweb 2025年04月04日]