岡谷雄太(HICity Racing Aprilia) 岡谷雄太がチーム代表兼ライダーを務めるHICity Racing Aprilia(エイチアイシティ・レーシング・アプリリア)が4月3日(木)にチーム名にもなっており大田区羽田空港に隣接するHICityで体制発表会を行った。初年度となる2025年シーズンは、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにフルエントリーし、鈴鹿8時間耐久ロードレースには、エクスペリメンタルクラスで出場を目指す。マシンはアプリリアRSV4 1100 Factoryとなり、鈴鹿8耐に向けては、フレームを始めオリジナルパーツを導入していく予定だと言う。
「チームを立ち上げて全日本JSB1000クラスに参戦することになるとは思っていなかったので、まずは発表会にたどり着けたことをご協力いただいた皆様に感謝申し上げます」と岡谷。
昨年の6月にHICity統括責任者の加藤篤史氏に共通の知り合いの紹介で出会い、その輪が広がって行ったと言う。HICityは、羽田イノベーションシティの略称で、観光施設として大田区の町おこしの役割を担いつつ、スマートシティ(次世代都市)のモデルとして最先端技術を駆使した町作りも行っている大型複合施設。その中にはバイクのシミュレーターを開発している『PROTOTYPE』を始め、モノづくりを得意としている企業も居を構えている。「生まれも育ちも大田区でレーシングライダーとして頑張っている岡谷というおもしろい青年がいる」という、ウワサは瞬く間に広まり加藤氏も「何かできないか?」と思い始めていた。
そんな岡谷は、父と同時期にレースをしていたEGUKEN Garageの江口謙氏に相談する。
「モノづくりを得意とする企業の方と知り合えたことを雄太から聞いて、うまくまとまれば、すごい可能性のあるプロジェクトになると思いました。モータースポーツ界を盛り上げることにもなりますし、お互いメリットになるはずですから」と江口氏は、岡谷の背中を後押した。
かつて町工場が1万を超えるほど存在していた大田区。ドラマ・下町ロケットの舞台となっていたことをご存知の方も多いだろう。以前に比べれば、その数3000社と少なくなったが、それでも高い技術を持つ会社が多く、その技術を使い、オリジナルフレームやパーツを作っていき、近い未来には、MotoGPロードレース世界選手権Moto2クラスに参戦し、岡谷自身が世界チャンピオンとなる計画を立てている。
「5年計画でMoto2チャンピオンになることを目標にしています。僕が今、25歳なので、30歳のときに世界一になりたいですね。大田区は世界に通じることができる技術を持っている地域ですし、生まれ育った僕がやらねばならないプロジェクトだと思っています。“下町バイク”と仮に言っていたのですが、実際に下町ボブスレーに関わった方にも協力いただけることになっています。その前に、全日本JSB1000に出るために、目の前のことをこなすことで精一杯なのが実情なのですが(笑)」
先日もてぎでRSV4 1100 Factoryを初めてライディングし、そのポテンシャルを垣間見た。
「エンジンは1100ccあるので速かったですね。ただ、バランスの問題なのか、全開にすると暴れてしまい扱い切れないところがありました。そこは、江口さんの持っているノウハウを活かして、うまく整えていければ戦えると思っています」
鈴鹿8耐は、エクスペリメンタルクラスでの出場を目指しており、こちらも大田区の企業に協力してもらい、オリジナルフレームの制作。さらにカーボンニュートラルな素材を使うマシンになりそうだと言う。
「カーボンナノチューブや植物由来のバイオマスプラスチックを扱っている会社もあり“コレってCNプロジェクトになるね”と鈴鹿8耐は、その方向でFIMに打診しているところです。オリジナルフレームで参戦して、日本におけるbimotaのような存在になれればいいですね」
ロードレースの魅力を伝え、チームが成長する過程をともに歩んでもらうために岡谷雄太ファンクラブ『ロクイチ』を立ち上げ、ファンに楽しんでもらう情報発信も開始。羽田から世界へ、壮大なプロジェクトをスタートさせた岡谷に注目して欲しい。
[オートスポーツweb 2025年04月04日]