梓役:石田ひかりさん このほど公開になった映画『アンジーのBARで逢いましょう』に出演中の石田ひかりさん(52)。
主演は現在、91歳の草笛光子さんです。
実は石田さんの出演は、草笛さんを尊敬してやまない石田さんからの“逆オファー”がきっかけだったのだとか。念願かなった石田さんは、草笛さん演じるアンジーから“塩をまかれる”ことに。「役得です」と笑顔で話す石田さん。
また、NHK朝ドラ『ひらり』女優の石田さん自身も心身の変化を感じる年齢に。実は「五十肩がひどかったんです」という告白から、素顔がのぞくSNS運用まで話してもらいました。
◆何がなんでも出演したいと思ったので逆オファー
――最新出演作の『アンジーのBARで逢いましょう』は、ある町に、謎めいた高齢の女性アンジー(草笛)が現れ、BARを始めたことから物語が動いていきます。全体的に外国映画のような不思議な空気の流れる作品です。
石田ひかりさん(以下、石田):タンゴっぽい音楽だったりして。素敵な作品でしたね。
――草笛さんがアンジーを演じていることが、世界観に説得力を与えていました。石田さんは草笛さんをとても尊敬されているそうですが、同じく草笛さん主演で昨年公開された『九十歳。何がめでたい』に続いての共演作ですね。
石田:『九十歳。何がめでたい』も『アンジーのBARで逢いましょう』も逆オファーです。私からの売り込みです(笑)。
――これまでの作品でも、「出演したい」という申し出はされてきているのでしょうか。
石田:何度もあります! マネージャーに「何か役はないか動いてほしい」とお願いします。その前にオファーをいただいていればいいですけど、現実として、そうじゃないわけですから。こうやって自分から売り込んでいく、それでダメなら諦めもつきますし。
◆草笛さんに塩をまかれて「役得!」
――動かなければ何も始まりませんし、今回も結果的に、とても面白い役で出演することに繋がりました。アンジーがBARを始めた場所がいわくつきだからと、そこから追い出そうとする女性役ですね。
石田:この役が残っていて本当にラッキーでした。割とシリアスに演じていたのですが、それが出来上がったものを観たら、コミカルな感じに仕上がっていて、すごく面白いシーンになっていた。みなさんにさらにいい役にしていただいたなと思いました。
――アンジーのBARに入っていって、木村祐一さん演じる行者と一緒に、水をかけられたり塩をまかれたりと、結構散々な目に遭っていましたね(笑)。
石田:こんなに幸せなことはなかったです。真っ赤なドレスを着て塩壺を持った草笛さんが、「帰れ! 帰れ!」と。ずぶ濡れの私とキム兄にガンガンお塩をまいてくるんです。もうこんな角度で草笛さんが!(実際に塩をまくフリをする石田さん)「私、一生忘れない!」と、本番中も思っていました。
――本番中も(笑)。
石田:役得です。本当に役得。草笛さんのこんなお姿。「絶対に忘れない!」と思いました。
◆Instagramを始めてファンの応援をより実感
――石田さんも女優デビューから、約40年です。映画『ふたり』(91)『はるか、ノスタルジイ』(93)、NHK連続テレビ小説『ひらり』(92)など、初期から数々の名作に出演してきました。女優さんのお仕事は、作品が残り続けます。今になって改めて、ファンの方の思いの強さを感じることはありますか?
石田:それはありますね。本当に多くの方に応援していただいていた、いまも応援していただいているんだなと日々思います。気が付いたら40年近くが経っていました。それをより感じられるようになったのは、Instagramを始めたときかもしれません。
――そうなんですね。
石田:やっぱりみなさんの声がダイレクトに届くんですよね。フォローしてくださる方は、本当に私を応援してくださってきている方々が多くて。たまに辛辣な意見もありますけれど(笑)、ほぼ優しいコメントですし、とても救われています。
――昨年「ぽかぽか」(フジテレビ)に出演された際、筒井道隆さんとのショットをアップされていましたが、実は私も『あすなろ白書』が本当に大好きで! いつも大切に見ていました。
石田:ありがとうございます(笑)。そう言っていただくことも本当に多くて、ありがたいです。
◆YouTubeチャンネルでの「寺の嫁」反響にびっくり
――SNSではYouTubeチャンネル「まぁるい生活」を更新されています。特に三重県のお寺である夫の実家に帰省したときの様子をおさめた「寺の嫁 年末年始お見せします」の回は大反響で330万回再生超えです(2025年4月5日現在)。
石田:そんなになってます!? あれに関しては、ちょっと面白いかなと思ってやったことが、こんなに話題になるんだと本当に驚きました。みなさんが少しでもお寺のことに興味を持ってくださるきっかけになったのならよかったなと思っています。でもこんなに反響があるとは思っていなかったので、本当にびっくりしました。
――実際にチャンネルを始めてみて、気づいたことはありますか?
石田:今さらですけど、撮る側に回ってみて気づいたことが山ほどあります。これまでは撮られる側だけでしたし、私、本当に機材のこととか全然分かってないんです。今も本当についていけていないし、マイクがオンになっていないこともしょっちゅうなんです(笑)。
音声が一切入っていないときもあって、あとで「これ、どうするの!」と。もう真っ青ですよ。撮ったのはいいけど、半年くらい眠ったままの動画とかありますよ。アテレコするしかないかなとか思ってます(笑)。
◆五十肩と老眼の訪れも「なんくるないさ」
――年齢を重ねてきてきたことで感じる変化がありましたら教えてください。
石田:私は五十肩がひどかったです。もうだいぶ良くなりましたけど、長かったですね。
――その間は、何かされたのでしょうか。
石田:いろいろしましたよ。注射も打ちましたし、あちこち病院にも行きました。でも結局は時間です。時間が過ぎるのを待つしかありませんでした。何をやってもダメでしたね。あとは、一番はっきりと変化を感じるのは老眼です。本当に何も見えません(苦笑)。
――まったく同じで何か嬉しいです(笑)。そうした変化にはどう向き合っていますか?
石田:「なんくるないさ」の精神ですかね。「なんとかなるよ」と。そう考えていくしかないですよね。年齢の変化だけでなく、すべてのことにおいて。正解はひとつじゃないし、何かにおいて間違えたとしても、いくらでもやり直しはききますから。大変な時期があったとしても「なんくるないさ」です。あと、物を手放せるようになりました。
――物を手放す。
石田:本当に縁があったり、自分に必要な物とは、また出会うだろうと思うんです。もちろん写真とか、絶対に手放せないと思うものもありますけど、迷ったら、手放してもいいんじゃないかなと。
――手放してみたけれど、取り戻したものはありますか?
石田:手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』。あと銀色夏生さんのエッセイも好きで、何十冊と持っているので減らしたいと思って手放したのですが、結局買い戻しました。
◆娘たちの人生は彼女たちのもの
――では経験を重ねてきたことで、あえて気を付けていることはありますか?
石田:娘たちの人生は、彼女たちのものだということは意識するようにしています。だから、彼女たちの考えを頭ごなしに否定しない。私が生きてきた時代や環境とは違うし、私もアップデートしなければいけない。「自分の時はこうだった」ということほど役に立たないものはないですから。
――たしかに。
石田:いらない情報ですよね。どうしても自分の意見を押し付けがちですが、それはなるべくしないように、たとえ本人たちが痛い思いをするときがあったとしても、本人たちに経験させることが大切かなと思っています。
<石田ひかり プロフィール>
1972年5月25日生まれ、東京都出身。1986年俳優デビュー。その後、映画「ふたり」、NHK連続テレビ小説「ひらり」、フジテレビ系ドラマ「あすなろ白書」などで主演を務める。ドラマ、映画、舞台、YouTubeなど、活動の場を限定することなく幅広い分野で活躍。2025年は『アンジーのBARで逢いましょう』のほか、『リライト』(6月13日公開)、『ルノワール』(6月20日公開)と出演作の公開を多数控える。
(C) 2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会
『アンジーのBARで逢いましょう』は4月4日(金)より新宿ピカデリー/シネスイッチ銀座 ほか全国公開
<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/神戸春美 スタイリング/藤井享子(banana)>
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi