『ベイビーガール』© 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.A24製作、主演ニコール・キッドマンのタッグによる『ベイビーガール』が公開中。A24史上、“最高に挑発的!”(TIME誌)と評価され、“エロティック・サスペンスの進化版”といわれる本作をもっと楽しむため、鑑賞後におすすめの新旧作映画を紹介する。
『ベイビーガール』でニコール・キッドマンとタッグを組んだのは、俳優としても活躍し、A24と組んだ『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』でフィルムメーカーとして高く評価されたハリナ・ライン監督。本作では自ら執筆した脚本で、その稀有なる才能をさらに進化させた。
今回は“エロティック・サスペンスの進化版”と評される『ベイビーガール』の製作にあたり、ハリナ・ライン監督がインスピレーションを受けた作品や本作の鑑賞後に観ることで、さらに作品を深掘りできる映画を紹介。
実際に監督が本作を生み出すきっかけになった作品もあれば、若いころから個人的に好きで、何千回も観てきた作品もあるという。
まず、エイドリアン・ライン監督の『ナインハーフ』『危険な情事』は、監督が若いころから好きだったと明言する80年代後半の作品。映画を観た当時、自分の中に隠された性的なファンタジーがありながら、それを抱くことを恥じていた監督が、ハリウッドがこれらの作品を堂々と作っていることで、別にいけないことではないと思い直したという。
ちなみに『ナインハーフ』は、「6,000回くらいは見ている」と熱狂的な作品ファンであることを明かしており、さらに、『ナインハーフ』でキム・ベイシンガーがミッキー・ロークの前でストリップのような仕草をする有名なワンシーンの、男女の役割を逆転させたものを『ベイビーガール』の中に組み込んでいる。
一方で、これらの作品の結末が女性差別的と感じ、好きになれなかった監督は「これが私のバージョン」と女性の視点から挑み、『ベイビーガール』を作り上げた。
次に紹介するのは、ハリナ・ライン監督の母国オランダ出身の鬼才ポール・ヴァーホーベン監督の『氷の微笑』。エロティック・スリラーの金字塔といわれ、主人公を翻弄する妖艶な作家を演じたシャロン・ストーンは、当時大変な話題に。
ハリナ・ライン監督は、俳優時代にポール・ヴァーホーベン監督作品に出演した際、彼の「具体的な疑問がなければ映画は作れない」という考え方に影響を受けたと話しており、それが『ベイビーガール』を生み出す問いを生んだことは間違いない。
続いては、ハリナ・ライン監督が映画芸術科学アカデミー公式サイトでオールタイムベストと明かす『ピアニスト』。
イザベル・ユペール演じる“普通でない”性的嗜好をもつピアノ教師の中年女性と、才能あふれる男子生徒とのすれ違いの恋のドラマを『愛、アムール』の名匠ミヒャエル・ハネケが生々しく赤裸々なタッチで描いた衝撃作。カンヌ国際映画祭では賛否両論を呼びながらグランプリ、女優賞、男優賞に輝いている。
さらに、本作で物語の要となる年下のインターン・サミュエルを演じたハリス・ディキンソンが主演、第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞している『逆転のトライアングル』。監督はハリス・ディキンソンを抜擢した理由のひとつに『逆転のトライアングル』を見て「すぐに気に入った」ことを明かしている。
自信満々の男らしさと、人に寄り添える少年のようなピュアな優しさという二面性を持ち、葛藤するサミュエルを見事に表現している彼の、『逆転のトライアングル』での、人気が落ち目のモデル役も必見だ。
なお、2000年代に公開されたジェーン・カンピオン監督の『イン・ザ・カット』も『ベイビーガール』と親和性の高い1作。
大学講師の女性が殺人事件をきっかけに、心の殻に封じ込めてきた性的ファンタジーを露わにしていく様を描くエロティック・サスペンス。
ニコール・キッドマンが製作を務め、当初は自ら主演を務める予定だったが降板しメグ・ライアンが主演に。近年、女性目線のエロティック・サスペンスとして再評価が高まっている。
鑑賞後に観たい!『ベイビーガール』がさらに楽しめる作品まとめ
『ナインハーフ』(1986年公開)
ニューヨークを舞台に、ある男女の9週間半の愛を描く。ニューヨークのギャラリーに勤めるエリザベス(キム・ベイシンガー)は離婚経験のあるキャリアウーマンで、画廊に勤めている。ある日、チャイナタウンに行くと、ジョンと名乗る男(ミッキー・ローク)に声をかけられ、不思議な予感に胸をときめかせた。
そして翌日、ノミの市で高級スカーフを欲しそうにしている彼女に、チャイナタウンで見かけたジョンが、そのスカーフをプレゼントした。彼と打ち解け合い、家に入るや否や、ベッドの用意を始めるジョンに不安を感じたエリザベスは、その場を去る。しかし、ジョンを忘れられずにいたエリザベスは彼と再会し、2人の関係が始まる。
『危険な情事』(1988年公開)
第60回アカデミー賞6部門ノミネートのサスペンススリラー。家族と共にニューヨークで暮らす弁護士ダン(マイケル・ダグラス)は、顧問を務める出版社のパーティで新人編集者のアレックス(グレン・クローズ)と出会う。翌日、会議でアレックスと再会を果たしたダンは、出来心から彼女と一夜を共にすることに。
ダンは一度きりの関係のつもりだったが、運命の出会いと信じるアレックスは異常なほどの執着心を抱き、ダンと彼の妻子に執拗につきまとい始め…。
『氷の微笑』(1992年公開)
殺人事件を捜査する刑事が容疑者の妖艶な作家に翻弄される姿を描き、世界的ヒットを記録したエロティック・スリラー。
サンフランシスコでナイトクラブを経営する元ロックスターの男が自宅の寝室で惨殺された。刑事ニック(マイケル・ダグラス)は被害者の恋人で事件当時のアリバイが不確かな作家キャサリン(シャロン・ストーン)を尋問するが、ミステリアスな彼女に翻弄され、捜査は難航する。
キャサリンの抗えない魅力と刑事としての使命との間で、深みにはまっていくニック。そんな中、さらなる殺人事件が起こる。
『ピアニスト』(2002年公開)
2001年カンヌ映画祭でグランプリ、女優賞、男優賞の3冠を受賞。エリカ(イザベル・ユペール)は、母とふたり暮らしの、国立音楽院の厳格なピアノ教授。彼女に恋した学生ワルター(ブノワ・マジメル)は音楽院で彼女の生徒となり、授業を受ける。ある日、化粧室にいたエリカにキスを迫ると、彼女の性癖が露わに…。
『逆転のトライアングル』(2023年公開)
第75回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)、第95回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞の3部門にノミネートの人間ドラマ。
モデルでインフルエンサーのヤヤ(チャールビ・ディーン)と、人気が落ち目のモデルのカール(ハリス・ディキンソン)は、招待された豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチなクセ者たちがバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。
しかし、ある夜に船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態のなか、弱肉強食のヒエラルキーが生まれる。そしてその頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった――。
『イン・ザ・カット』(2004年公開)
大学で文学を教える女性講師フラニーは、いつしか人間関係や恋愛に失望し、他人には心を許さなくなっていたが、ある猟奇的な殺人事件をきっかけに、心の殻に封じ込めてきた感情を露にしていく。
スザンナ・ムーアの小説が原作。メグ・ライアン、マーク・ラファロ、ケヴィン・ベーコンが出演。
『ベイビーガール』は全国にて公開中。
(シネマカフェ編集部)