香川照之、“1人6役”を怪演し「役者業の醍醐味」実感 “圧倒的な演じ分け”の秘話も明かす

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2025年04月07日 09:10  クランクイン!

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香川照之  クランクイン! 写真:高野広美
 WOWOW『連続ドラマW 災(さい)』(全6話)で、主演を務める俳優・香川照之。あらゆる作品で圧倒的な演技力と唯一無二の存在感を発揮してきた香川が、本作ではなんと6役にチャレンジ。人に“災い”をもたらす“男”役として、6つの違う顔を見せる。“ある男”の放つ不穏な空気に震えるような衝撃作を世に送り出す香川が、本作を通して実感した役者業の醍醐味などを語った。

【写真】香川照之、“災い”をもたらす“男”役を怪演 インタビュー撮り下ろし&場面カット

■6役へのチャレンジ「よくぞ、僕の触手が動くお話を書いてくださった」

 完全オリジナルとなる本作は、現代を生きる罪なき6人の主人公たちの人生を描く群像劇。6人の登場人物のもとに香川演じる“ある男”が現れ、ある“災い”が無慈悲に降りかかる様を描く。“男”は何者なのか? “災い”とは何なのか? いつ、誰に“災い”が降りかかるのか…。多くの謎が観る者の心理を揺さぶり、“男”の存在がこれまでにない恐怖をもたらす。

 監督・脚本・編集を務めるのは、監督集団・5月(ごがつ)の関友太郎と平瀬謙太朗。東京藝術大学大学院の佐藤雅彦研究室から生まれた映画制作プロジェクトとして活動を開始した彼らにとって、初めての長編映画となる『宮松と山下』でも主演を務めていた香川。再タッグとなる本作で、“災いをもたらす6人の男”という役者冥利に尽きるような役柄を受け取り、「5月組というのは、僕が本当に信頼している監督たちです。よくぞ、僕の触手が動くような変なお話を書いていただいたなと。お誘いをいただいて嬉しゅうございました」と喜びを噛み締める。

 群像劇の中で、“ある男”は姿を変え、口調を変え、顔つきを変え、性格や所作まで変えて、まったくの別人となって6人の登場人物たちの前に現れる。監督陣から演じ分けについて特別なオーダーはなく、香川は脚本を読み込んで6人の“ある男”を作り出していったという。

 香川は「脚本を読むと、“ある男”の職業などタイプの違いが書かれていました。演じ分けについては僕に任せていただいた部分が多く、おそらく監督たちも僕がどのように演じるかを楽しみにされていたのかもしれないなと思っています。『この人は早口で話しましょう』『この人は低音で話しましょう』『丁寧な人にしましょう』などいろいろな提示をさせていただきました」と提案をしながら、ものづくりに専念。

 5月の監督陣は『宮松と山下』の公開時に、香川について「顔全体が可動域。顔の演技が豊か」と顔を自在に動かせると驚いていたが、香川は「今回はなるべく顔の可動域を使わないように、それぞれの役を演じました。暴発する必要のあるクライマックスで可動させたところ、関さんも平瀬さんも大喜びしていた」と顔の演技にメリハリをつけたと語りつつ、「実はそれぞれ話し方や特徴など、身近にモデルにした人がいる。6話は香川照之さんがモデル。自分自身で演じました」と6役の秘話を明かす。


■役者業の醍醐味を実感!


 本作で役者業の醍醐味を感じた瞬間について聞いてみると、香川は「撮影はほぼ順撮り(台本の冒頭から順を追って撮影を進める方法)で進み、毎回新鮮に臨むことができました」と述懐。

 「短期間の中で、いろいろな役をできるというのはとても面白いことでした。カツラをかぶったり、違う衣装を着たり、違う話し方をしたりと、これは役者業の醍醐味だなと。周りのスタッフも『昨日まで演じていた人と、まったく違いますね』とあらゆる“ある男”になった僕の姿を見て、毎回喜んでくれたりして。そういった反応もうれしく、衣装やメイクの皆さんもいろいろと考えてくださってとても感謝しています」と目尻を下げる。

 また全6話の中で“男”と対峙することになる役者たちと過ごした時間も、充実感にあふれるものだった様子。香川は「皆さんが現場に持ってきてくださったお芝居は、とても上質なものでした。皆さんがこの作品に必要な空気感や間をわかってくださっていて、静寂すらも楽しんでくださった。10代の中島セナさんも、すばらしいものを持ち込んでくださった」としみじみ。

 さらに「WOWOWさんの作品では、あまり時間尺を気にせずに表現に挑めるというよさもあります。尺が決まっていると、どうしても『もう少しセリフを速く言ってください』『この尺に収めてください』というオーダーも出てきます。『どれだけ時間をかけてもいい』という環境の中で芝居ができるというのは、とてもありがたいことでした。今回は、役者同士がゆったりと無言の時間を使うこともできました。理想的な“間”を突き詰められたことも、非常にうれしかったです」と幸福感を口にしていた。

■「災いのない1年に」と込めた願い


 5月との仕事は毎回、刺激的だという香川。「彼らは映画が大好きなので、本作にも様々な映画のオマージュカットもふんだんに入っています。現場でも『あの映画のように、ここは引きの画で撮りましょう!』などずっと映画の話をしているんですよ」と活気に満ちた現場を振り返りながら、「本作は目に見えない恐怖を、新しい形として表現しようとしている作品です。僕は、ドラマにもいろいろな作品があっていいと思っています。今はそういった裾野もどんどん広がってきていますから。関監督、平瀬監督は、勇猛果敢に見たことのないようなドラマの提示の仕方に挑んでいる。新たな分野に斬り込み、観客、そして世界を驚かせるような作品を生み出すチームだと思っています」と並々ならぬ信頼を寄せる。

 人々に突然襲いかかる“災い”が描かれるが、香川は「人間が人間に向けて災いを起こしているように見えるけれど、本来それは偶然ではなく必然として起きているもの。我々は9割以上、目に見えないものに支配されていて、そういったものを受け入れていかなければいけない。僕は本作のテーマを、そのように受け止めました」と持論を展開。4月放送のドラマで主演を務め、「いい春を迎えたい」と笑顔を見せた香川。「災いのない1年。穏やかな1年を過ごせたらと思っています」と願いを込めていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 『連続ドラマW 災』は、WOWOWにて毎週日曜22時放送・配信中(全6話)。

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