参院決算委員会で答弁する石破茂首相=7日午前、国会内 トランプ米政権の相互関税に端を発した世界的な株安の連鎖が、石破政権を大きく揺さぶっている。夏の参院選を控え、国内経済への打撃を懸念。米側との交渉と並行し、2025年度補正予算案の編成を視野に対策を急ぐ。石破茂首相は、野党の取り込みも図るなど、難局打開になりふり構わぬ姿勢を示す。
「関税の引き下げが一朝一夕にできるとは限らない。国内対策に万全を期していかねばならない」。7日の参院決算委員会で相互関税への対応を問われた首相は、トランプ大統領との直接協議と合わせ、中小企業の資金繰り支援などを早急に検討する考えを示した。
前日の6日夜、首相は加藤勝信財務相や赤沢亮正経済再生担当相らを首相公邸に呼び、週明けの市場動向を注視するよう指示。ふたを開ければ、7日の日経平均株価は終値で過去3番目の下落幅となり、自民党幹部は「日本だけの動きではない」と打つ手に乏しい現状を認めた。
自民内ではかねて、改選を控えた参院側を中心に物価高対策の要望が根強かった。相互関税で輸出産業などへの打撃が現実味を帯び、今国会中の補正編成を求める声が、与野党双方で急拡大している。
7日の政府・与党連絡会議で、公明党の斉藤鉄夫代表は「国民に勇気と希望を与える政策をぜひ検討してほしい」と要請。終了後、記者団から消費税減税の可能性を問われ、「あらゆる可能性を議論している段階ではないか」と含みを残した。
こうした声に押されるように、自民の森山裕幹事長は記者会見で補正編成に関し、「機動的な対応に取り組みたい」と言明。自民幹部は「編成せざるを得ない」と語った。
野党側は参院選を意識し、後半国会で「政治とカネ」の追及を強める戦略を描いていた。しかし、4日に与野党党首会談を急きょ呼び掛けた首相は、7日の決算委でも「国難」を強調。「与野党挙げての支援をお願いする」と訴え、関税対応で野党と共同歩調を目指す考えを鮮明にした。
「参院選は関税対策が争点となるかもしれない。首相は『国難選挙』を掲げるのではないか」。「抱きつき戦術」とも映る首相の動きに、野党幹部は警戒感をあらわにした。

政府・与党連絡会議で発言する石破茂首相(右から3人目)=7日午後、首相官邸

政府・与党連絡会議終了後、記者団の質問に答える公明党の斉藤鉄夫代表=7日午後、首相官邸