人工知能(AI)技術を使い小惑星「りゅうぐう」(下段)と「ベンヌ」表面の岩計約20万個の位置やサイズ、形状などを自動的に識別した結果(東京大提供) 東京大の研究チームは7日、日本の探査機「はやぶさ2」と米国の「オシリス・レックス」がそれぞれ撮影した小惑星「りゅうぐう」と「ベンヌ」の多数の写真から、人工知能(AI)を利用して1メートル以上の岩計約20万個のサイズや位置、形状を短時間で自動識別することに成功したと発表した。
解析から、自転速度が異なるりゅうぐうとベンヌでは、表面の岩や土砂の移動方向が逆になっていたことも判明。惑星科学だけでなく、地上の土木、防災への応用も期待できるという。論文は同日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
東大の清水雄太特任研究員と宮本英昭教授らのチームは、地球や他の天体の岩石約7万個をAIに学習させ、自動識別するシステムを開発。りゅうぐうとベンヌの高解像度画像約1万枚を読み込ませた結果、りゅうぐう表面で約2万個、ベンヌで約18万個の岩をそれぞれ識別した。
研究チームは、りゅうぐうとベンヌ上の岩のサイズ分布に着目。地上の土石流の観察で、岩や土砂は流れた方向に向けて次第に大きくなることが知られており、りゅうぐうでは赤道から南北両極に、ベンヌでは逆に極から赤道に向けて岩が移動していることが判明。りゅうぐうは自転速度が7.6時間と遅く、ベンヌは4.3時間と速いことによる遠心力の差がこの違いを生じさせることも分かった。
識別にかかる時間は1天体当たり半日程度と高速で、2026年度に打ち上げられる火星衛星探査計画「MMX」などでも利用される予定という。
清水特任研究員は「地上でも定期的にドローンで広範囲の斜面を撮影し、大量の岩石を識別しておくことで、崩落の前兆を検出する応用も考えられる」と期待を示した。