『2025年 本屋大賞』は阿部暁子氏『カフネ』に決定 「これだけ本を愛する人たちがいることは、書き手にとって救いです」

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2025年04月09日 15:55  ORICON NEWS

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『2025年本屋大賞』発表会に出席した(左から)阿部暁子氏、宮島未奈氏(C)ORICON NewS inc.
 全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2025年 本屋大賞』の大賞作品が9日に発表され、阿部暁子氏の『カフネ』(講談社)が大賞に選ばれた。阿部氏は都内で行われた『2025年本屋大賞発表会』の贈賞式に出席し「いただいた大きな贈り物に報いられるように、いい物語を書ける小説家になっていきたい」と意気込みを語った。

【写真】著者はこの方…!受賞し喜びを語った阿部暁子氏

 受賞のスピーチで「『カフネ』を思いがけなくたくさんの人に手に取っていただくことができました。それは私一人の力ではなく、関係してくれた編集さんたちが私の知らない裏側でガチンコの勝負をして“いかに広めるか”という意見を戦わせてくれたり、営業さんが尽力してくれたり、そうしたたくさんの方の力があって起きた奇跡みたいな、すごいことでした」と喜びを語った阿部氏。

 そして「なにより書店員さんたちが応援してくれたので、たくさんの人の手に届けられたのだと思います」と、本屋大賞を支える書店員に感謝。「本屋大賞は、書き手にとっては本当に憧れで嬉しい賞なんですが、書店員さんにとってはかなり過酷なものではないのなかと思っています。通常の業務をこなしながら、2次投票ともなるとノミネート作を全て読んだうえで、心のこもったコメントをつけて投票しなければいけません。それは本当に大変なんですけど、それをするのは仕事への情熱や教示があるとは思うんですけど、なによりも本が好きという本への愛があるのではないかと思います」と想いを馳せた。

 また、「このホールの景色をみてびっくりしたんですが、ホールいっぱいにいらっしゃる方だけではなく、全国の書店さんも、この本屋大賞を楽しみにしている読者さんも、それだけ本を愛する人たちがいるっていうことは、私たち書き手に取って救いです。そして書き手が一生懸命にいい物語を書くには、これだけたくさんの人が応援してくれることは希望です」と笑顔を見せ、最後に「素敵な場所に立たせていただいて、ありがとうございました。いただいた大きな贈り物に報いられるように、いい物語を書ける小説家になっていきたいと思います」と意気込みを語った。

 阿部氏は岩手県出身、在住の作家。『屋上ボーイズ』で第17回ロマン大賞を受賞しデビュー。著書に『どこまでも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』『パラ・スター(Side宝良)』『金環日蝕』『カラフル』などがある。

 『カフネ』は『第8回未来屋小説大賞』『第1回「あの本、読みました?」大賞』を受賞した注目作。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく…。というストーリーとなっている。

 今回で第22回目となる今回の本屋大賞は、2023年12月1日〜2024年11月30日の間に刊行された日本の小説が対象。一次投票を2024年12月1日より今年1月5日まで行い、全国の488書店、書店員652人が投票。その集計の結果、上位10作品が「2025年本屋大賞」ノミネート作品として選ばれ、改めて2月3日から行われた二次投票では336書店、書店員441人の投票を集め、その結果により今回大賞作品が決まった。

 なお、特別企画の翻訳小説部門第1位には『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』(レベッカ・ヤロス著 原島文世訳 早川書房)、発掘部門/超発掘本!大賞は『ないもの、あります!』(クラフト・エヴィング商會著 ちくま文庫)が選ばれた。

■2025年ノミネート作品 最終順位
1位『カフネ』阿部暁子(講談社)
2位『アルプス席の母』早見和真(小学館)
3位『小説』野崎まど(講談社)(※崎=たつさき)
4位『禁忌の子』山口未桜(東京創元社)
5位『人魚が逃げた』青山美智子(PHP研究所)
6位『spring』恩田 陸(筑摩書房)
7位『恋とか愛とかやさしさなら』一穂ミチ(小学館)
8位『生殖記』朝井リョウ(小学館)
9位『死んだ山田と教室』金子玲介(講談社)
10位『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈(新潮社)

■歴代大賞作品(書名、著者、出版社※敬称略)
第1回:『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)
第2回:『夜のピクニック』恩田陸(新潮社)
第3回:『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)
第4回:『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)
第5回:『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮社)
第6回:『告白』湊かなえ(双葉社)
第7回:『天地明察』冲方丁(角川書店)
第8回:『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)
第9回:『舟を編む』三浦しをん(光文社)
第10回:『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)
第11回:『村上海賊の娘』和田竜(新潮社)
第12回:『鹿の王』上橋菜穂子(KADOKAWA 角川書店)
第13回:『羊と鋼の森』宮下奈都(文藝春秋)
第14回:『蜜蜂と遠雷』恩田陸(幻冬舎)
第15回:『かがみの孤城』辻村深月(ポプラ社)
第16回:『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)
第17回:『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)
第18回:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)
第19回:『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬(早川書房)
第20回:『汝、星のごとく』凪良ゆう(講談社)
第21回:『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈(新潮社)

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