予選ステージから快走のグリアシンがERC通算5勝目。フェルスタッペン父も開幕戦で部門制覇

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2025年04月09日 17:30  AUTOSPORT web

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今季より新設のJ2X Rally Teamから参戦するニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が快走
 ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2025年開幕戦『第42回ラリー・シエラ・モレナ』が4月3〜6日にスペインのアンダルシア地方で開催され、今季より新設のJ2Xラリー・チームから参戦するニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が快走。予選ステージから初日のSSSを制すると、本格ステージ群では一度もラリーリーダーの座を譲ることなくキャリア通算5勝目を飾ることに。

 また、こちらも新設となる50歳以上のドライバーを対象としたFIAマスターERC部門では、元F1ドライバーのヨス・フェルスタッペン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が総合13位フィニッシュでクラス制覇を成し遂げ、首位発進を決めている。

 例年、ハイレベルな争いが続くWRC世界ラリー選手権への“登竜門”だが、今季2025年の欧州格式シリーズではイベントの重要な要素である予選ステージを重視するべく、すべてのラリーで「全長6km以上を確保する」との新規約が採択されることに。そこで今回の主催者は6.16kmの新レイアウトを選択した。

 そんな新設予選ステージでは、スタート前から一部で小雨が降ったためグリップが低い状況に適したソフト、またはミディアムコンパウンドをチョイスするか、代わりにハードコンパウンドでカバーし、限られた割り当てをラリー本番用に取っておくのか。ドライバーは難しい決断を迫られることに。

 その状況でスピードを披露したのが、ミシュランのソフトとミディアムのクロスフォーメーションを選択したグリアシンで、ピレリのミディアムタイヤを装着したMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのジョン・アームストロング(フォード・フィエスタ・ラリー2)を従えトップタイムを刻んでみせた。

「クレイジーで簡単ではなかった。いい走りができたが、ラリー全体のことを考えなければならないし、希望するベストなタイヤを使用できなかった。でも全体的には良い感触で、最初のステージまでリラックスできそうだね」と語ったグリアジン。

 さらに有力候補のミコ・マルチェク(シュコダ・ファビアRSラリー2)や前回のイベント勝者であるペペ・ロペス(ヒョンデi20 Nラリー2)、さらにチームMRFタイヤからエントリーするジェームス・ウィリアムズやステファン・ルフェーブル(ヒョンデi20 Nラリー2)らに続き、ERC“ルーキー”のフェルスタッペン父もERC新人最速で7番手という見事な成績を収めるスタートを切った。


■シトロエン勢にアクシデント&トラブル発生

 F1世界選手権4冠王者の父は、「非常にトリッキーで、カットや路面の汚れが多かった」と初ステージの印象を語った。「シェイクダウンでパワーステアリングに問題があったから、これが私にとって初めてのまともな走行だった。この結果にはかなり満足している」

 そのままコルドバ市街で開催された1.50kmのSSSでも「良いスタートだ。ミスはできなかったけどね」と語ったグリアシンがトップタイムを計時し、ポップオフバルブの問題を嘆きながらもライフライブ・モータースポーツのルフェーブルが2番手、そしてミシュランを履いたマッズ・オストベルグ(シトロエンC3ラリー2)とフェルスタッペンが同タイムの3番手で並び立つ。

 明けた土曜のステージでも、午前のループこそ湿ったコンディションの先頭走者でわずかにタイムを失ったものの、グリアシンは正午のサービス時点で地元出身ホセ・スアレス(シュコダ・ファビアRSラリー2)に10.9秒差を保つと、午後のSS6から連続ベストタイムを刻んで初日だけで28.8秒のリードを奪った。

「すべて順調だ。午前は路面が急速に乾いていくなか、タイヤ選択が正しかったかどうかはわからないが、少なくともカットによる汚れはなかった。良いペースを見せられたし、明日は間違いなくもっと良いタイムを出せるだろう」

 一方のライバル勢には災難が降り掛かり、SS2を制したフォードのアームストロングはSS4の19.6km地点でコースオフ。ダメージを受け1分以上をロスすることに。また2022年ERCチャンピオンのエフレン・ヤレーナ(シトロエンC3ラリー2)はSS5で最速となるも、続くSS7ではボンネットの下から蒸気が上がるトラブルでオストベルグにかわされ5番手へ。しかし、そのオストベルグのC3にも問題があり、SS6後にポップオフバルブ、SS7終了時にエンジン出力不足とブレーキのトラブルが発生した。

「エンジンにパワーがなく、フロントキャリパーが壊れている」と明かしたノルウェー出身のオストベルグ。「最後の7kmはフロントブレーキなしで走った。かなりタイムをロスしたよ。なぜ同時にこうなったのかは分からないが……そういうことさ」

 これでさらに楽な展開となった首位グリアシンは、続く最終日も「最初のステージではカットがあったので、リスクを冒したわけではなくタイヤを傷めたくなかっただけ」とセーフティマージンを持つ余裕も見せ、最終パワーステージを終えて後続に42.9秒のリードを奪い、キャリア通算5勝目を飾った。


■部門優勝飾るも、「学ぶべき点がたくさんある」とフェルスタッペン

「週末はかなり厳しかったが、もちろんチームに感謝したい」と喜びを語った27歳のグリアシン。「チームは良い仕事をし、全員が完璧な気分だったので、モチベーションが維持できた。土曜の最後のような勇気が必要なタイプのステージが好きで、そこではクルマがうまく機能した。全力で攻めたわけではなかったが、プッシュしていたのは確かだ。でも、そういうステージでのクルマの感触は本当に楽しかったよ」

 背後の2位には、左後輪にダメージを受け後退したスアレスに代わり、SS9で最速も記録したヨアン・ボナート(シトロエンC3ラリー2)が浮上。フランス出身のターマック・マイスターにとってもERC通算7度目の表彰台となった。

「本当に信じられない。もちろん表彰台は欲しかったが、最初は12番手からの追い上げで難しかった。最高でもトップ5に入れればと思っていたが、最終的に2位になれたので完璧だ」

 そして本格ステージ突入以降「予想どおり、とくに長いステージは難しかった」と語ったフェルスタッペンは、前述のとおり総合13位でマスター部門優勝を達成し、このERC初出場が「向上し続けるためのモチベーションになった」と語った。

「ノート作成の面でもステージの長さに苦戦したし、あちこちがカットされていて路面には泥や水が溜まっていた。大変だったが、自分たちの成果にはとても満足している」と続けた53歳のフェルスタッペン。

「マスター部門で優勝するのはいいことだが、それが我々の目的ではない。我々はトップ選手たちに近づきたいと思っているし、今回そこが難しかった。満足している点もいくつかあるが、改善すべき点や学ぶべき点がまだたくさんあるね」

 2022年にラリーに初参戦したばかりでも急速な進歩を遂げる元F1経験者は、引き続き5月9〜11日に今季初のグラベル(未舗装路)イベントとなる『ラリー・ハンガリー』でもERCの冒険を続ける。

「我々はノート(ペースノート)作成を含め、たくさんのコーナーがあるこのレベルのラリーをもっと経験する必要がある。それが我々が改善しなければならないことであり、そのために我々はここにいる。我々は諦めていない」とフェルスタッペン。

「それが私のモチベーションになるだけだ。我々はそこにたどり着くだろう。あらゆる分野でメモにはたくさんのことが書かれている。すべての情報を吸収できるのは僕だけだし、そこに焦点を当てなければならないね」

 日曜のセカンドステージ終了時には、同週末に開催の日本グランプリで息子マックスが勝利したことを知らされた父は、最後にF1“4冠”の息子を称えた。

「ステージ出走の直前まで見ていたが、最後の14周は見ることができなかったから(彼が勝ったのは)良かった。この(ERCマスター部門)勝利は私にとって良かったが、マックスの勝利の方が重要だ」

[オートスポーツweb 2025年04月09日]

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