漫画『真・女性に風俗って必要ですか?』作者のヤチナツさん(左)と、女性用風俗店「東京秘密基地」のセラピスト・ミツルさん(右) 人気コミック『真・女性に風俗って必要ですか?〜女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件〜』(ヤチナツ著/新潮社刊)が、『ジョフウ〜女性に××××って必要ですか?〜』(火曜深夜0時30分〜ほか、テレ東系)としてドラマ化されて話題になっている。
ひょんなことから女性用風俗店(女風/ジョフウ)の裏方として働くことになったアカリを通して、セラピストや客の人間模様、さらには人生を考えるよすがとなるドラマが描かれている。
そこで、原作者のヤチナツさんと、大手女性用風俗店「東京秘密基地」のセラピスト・MITSURU(ミツル)さんに、女風とは何か、女性はなにを求めて女風にやってくるのかなどを対談してもらった。
◆女性用風俗で大切に扱われ、女としての自信が蘇る
──女性用風俗店のお客さんは既婚者も多いんですか?
ミツル:わりといますね。パートナーとは生活上はうまくいっているけどレスになっている。女風を利用するとすっきりして、夫にも優しくなれると言っていた女性もいます。
ヤチナツ:取材でもそういう話はよく聞きました。女風って、単なるビジネスというより外見などもちゃんと褒めてくれたり、大事に扱われている感じがするから、女としての自信が蘇ると。だから帰ってから夫に優しくなれるんでしょうね。
ミツル:話を聞いていると、結婚してうまくやっていくには二択しかないような気がします。お互いの心をすべてさらけ出し、性癖も含めて話し合ってともに性的に満たされていく。これって唯一無二の愛だと思うんです。もうひとつはお互いに性的な満足は外で得て、生活はうまくやっていくパターン。
ヤチナツ:そうですね、察しろというのは無理がありますよね。でも、全部言うなとも私は思ってる(笑)。
ミツル:え、そうですか?
ヤチナツ:性的なことに関してはね。口数の多い男より無口なほうがエロいから。
ミツル:そうかなあ。愛しているから理解するまで話し合えと僕は思うけど……。
ヤチナツ:いや、たとえば夫にあまりにも自身の性的な要望を説明されると、どうして私がそこまでやる必要があるのよと思っちゃう。
ミツル:だったらそれを言えばいいんじゃないですか。お互いの妥協点が見つかるまで。そうしたらふたりだけのエロい関係ができあがる。
ヤチナツ:その話し合う過程がエロくないんですよ。
ミツル:なるほど(笑)。そこは価値観の違いかもしれませんね。
◆男性的な興奮のしかたをする女性も増えている
──女性と男性の性欲の違いも感じますか?
ミツル:男はやはり本能的に精子を出したいのがいちばんなんじゃないですかね。女性はまず気持ちですよね。性感マッサージなどに入る手前で、自分がどれだけ大事に扱われているか。だから女性は性的な興奮が高まるまでに時間がかかりますよね。でも1度感じると、終わってからも興奮がおさまるまで長く快感が残る。男はジェットコースターみたいなもの。ガーッと上がって落ちていくだけ(笑)。
でも興味深いことに、最近は男性的な興奮のしかたをする女性も増えているような気がします。
ヤチナツ:以前よりは女性が自分の「性」をちゃんと見つめるようになってきたのかもしれませんね。
◆女風の裏方“内勤さん”はかなり頼れる味方
──女風って以前から存在は知られているけど、まだまだ誰もが行くというものでもないような気がするんです。いちばん初めにどうやって相手を決めたらいいのかわからないという女性も多いと思うのですが。
ヤチナツ:どういう人が自分に合うかわかりませんからね。プロフィールなどを見て、気になる男性がいたらチェックして、店によってはメッセージのやりとりなどもできるようですから実際にやりとりしてみるといいんじゃないでしょうか。
ミツル:今回、ドラマの主役にもなっている内勤さん(女風の裏方)に電話で聞いてみるといいかもしれませんよ。外見だけじゃなくて、明るいタイプがいいとか、明るすぎると落ち着かないので物静かな人がいいとか。内勤さんはセラピストの性格もわかっていると思うので、そうやって細かく要望を出せばうまくマッチングしてくれるはず。
ヤチナツ:そうですね。接客のプロなので不快な思いをすることはないと思うけど、あとは相性がありますよね、やっぱり。そこは人間同士なので。
◆性的なサービスに求めるものが男女で違う
──でも考えたら大変ですよね。男性用の風俗だったら、メッセージのやりとりなんてないでしょうし、内勤さんに性格まで要望することもないでしょうし。性的なサービスに求めるものが男女で違うということなんでしょうね。
ミツル:僕らは女性を心身ともに気持ちよくさせるのが仕事です。だからどんな人であっても80点はもらえるスキルをもっているという自信がある。あとの20点は何かというと相性だったり、感情表現だったりお互いの気持ちだったりするんじゃないかなと思いますね。
ヤチナツ:ミツルさんが癒やされたいと思うことはないんですか。
ミツル:最近、僕も心がすり減っているので(笑)、癒やされたいと思うことがよくあります。でも考えたら、お客さんに癒やされることも多々あるんです。前はとにかくお客さんを満足させなければいけないとガチガチにがんばっていたんです。もちろん、今もそれはベースにありますけど、常に自分の感情を排除して仕事をしているからか、ひどくドライになっている自分に気づくんです。
だからたまに僕がお客さんに弱みを見せたり甘えたりすることもある。甘えさせてくれるお客さんというのがいるんですよ、何度も会っていると。そこはもう少し柔軟になってもいいんだろうと思うようになりました。
<取材・文/亀山早苗 撮影/山川修一 漫画/ヤチナツ>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio