『片思い世界』(C)2025『片思い世界』製作委員会広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を果たした『片思い世界』。美術の佐久嶋依里、衣装の立花文乃が、個性と工夫が詰まった部屋と衣装の制作秘話を明かしている。
『花束みたいな恋をした』の坂元裕二が脚本を手掛け、土井裕泰が監督を務める本作。トリプル主演が大きな話題となっているほか、主人公らが暮らす家のインテリアや衣装にも注目が集まっている。
現代の東京で古い一軒家に暮らす美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の3人。
屋根裏部屋のようなベッドルーム、一緒にご飯を食べるテーブルに一人一人違う椅子、毎年身長が記される柱に、ホラー映画を観ながらぎゅうぎゅうになって座るソファ、時計がわりのラジオ。3人が暮らす古い一軒家には、懐かしさや温かさを感じる宝物のような家具や小物が詰まっている。
ある理由によって強い絆で結ばれる3人の生活は、広瀬すず演じる美咲の「私たち普通に生きよう」という一言から始まった。ご飯をちゃんと作ること、お風呂に入ること、洗濯物を畳むこと、誰も見ていなくてもトイレのドアは閉めること。誰よりも「普通に暮らすこと」を大切にする3人の個性溢れる“居場所”はどのように作られたのか。
美術の佐久嶋依里は、幼い頃から3人で身を寄せ合って暮らしてきたという設定があるため、3人が住む家もそれぞれのキャラクターありきでイメージしたと語る。
「例えば、量子力学に興味を持つ優花は、幼い頃からおまじないや心霊現象などに関心を持ってきたのかもしれないと想像して、本棚に並ぶ本を選んでみました。水族館で働くさくらはきっと海の生き物が好きなはずなのでベッドには魚のぬいぐるみがあって、手仕事が得意な美咲の近くには端切れ布やミシンなどがいつもあるのではないか、などです」とそれぞれの“好き”をヒントに世界観を作り上げていったと明かす。
また、さくらの誕生日の朝、背比べをするシーンで印象的な柱にはあるエピソードが。元々、佐久嶋が描いたデザイン画にはリビングの真ん中に柱があり、構想段階から柱に3人が背比べをした印をつけようと思っていたとのこと。まだ誰にも伝えていなかったそうだが、脚本の中に3人が身長を図って柱に印をつけるシーンを発見し、坂元氏との思わぬシンクロに驚いたという。
部屋と同じく、3人の生活を彩る大事なエッセンスになっている衣装を担当した立花文乃が最初に考えたのは、色のイメージだという。3人が集まった時に浮かび出る色のイメージについて「何となくですが、揺るぎのない赤と消えてしまいそうな青、という感覚がありました」と話す通り、3人のパジャマや普段着には赤と青が印象的に使われている。
まずイメージ画の作成から着手したという立花氏の頭に浮かんだのは、12年間を3人だけで生きてきた彼女たちの“チーム感”だったそう。「それぞれに個性がありながらもお揃い感があるような、そんなチーム感が欲しいと思いました」。
立花氏が描いたイメージ画には優花が身につけているベストに似たアーガイル柄を中心に、個性豊かな服を身につける美咲、優花、さくらの姿が。
優しい色合いの赤と青の色彩の中に刺繍やパッチワーク、つぎはぎなどが施されており、同じではないけれど確かに繋がっている、3人の強い絆が見事に表現されている。イメージ画にもあるとおり、3人の衣装には、必ずどこかに手作り要素が取り入れられている。
立花氏は「監督とは、彼女たちなりに生活を楽しんでいる感じが現れるといいんじゃないかと話しました。特に美咲は手仕事が得意で、自分だけでなく他の2人の洋服にも刺繍を施したりしているだろうと」と明かす通り、劇中では工夫しながらも唯一無二の着こなしを楽しむ3人の姿が随所に描かれている。
『片思い世界』は全国にて公開中。
(シネマカフェ編集部)