瀧内公美話題を集めたサスペンスドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS)が最終回を迎えたと思いきや、今度は、出演キャストに名を連ねるNHK連続テレビ小説『あんぱん』がスタート。まさに引っ張りだこの女優・瀧内公美さん(35)。
スクリーンでは、浅野忠信さんが実在の写真家・深瀬昌久を演じる映画『レイブンズ』が始まった。
深瀬の最愛の妻で最強の被写体だった洋子を限りなく魅力的に演じ切っている。瀧内さんにとってデビュー時からずっと憧れだったという浅野さんとの共演作であり、また初のイギリス人監督(マーク・ギル)との仕事になった本作。挑んだ感想を聞いた。
◆こんな奇跡的なご褒美はないんじゃないか
――写真家・深瀬昌久さんのことはご存じでしたか?
瀧内公美(以下、瀧内):いえ、知りませんでした。深瀬さんのことは、今回の脚本で初めて知りました。
――では洋子さんについても今回のオファーで。
瀧内:そうですね。脚本を読ませてもらいまして、とても素直で感情表現が豊かな人間味溢れる女性であると感じました。奇抜なことをやろうとしない、そこだけは最初から大事にしていました。
――以前、お話を伺ったときに、「役者として同じことをやっていると終わっちゃうという危機感を持って、常に自分を焚きつけている」とお話していました。
瀧内:そうですね。覚えていてくださり、ありがとうございます。
――今回も挑戦になったと思います。オファーを受けたときのファーストインプレッションはどんなものでしたか?
瀧内:まずは海外の監督の作品であるということ。合作でこんなに大きな役で挑ませていただくということが初めてでしたので、そうしたお話が私のもとに来たことが嬉しかったです。
それから、デビューした頃からずっと憧れていた浅野忠信さんのお相手役をやらせていただくということ。こんな奇跡的なごほうびはないんじゃないかなと思うほどのありがたいお話でした。
◆「believe yourself」の言葉を今も胸に
――マーク・ギル監督とお仕事されて受けた刺激を教えてください。
瀧内:まずはマークというか、海外の働き方のシステムに驚きました。みなさんとても自由でしたし、同時にきっちり分業制であることに驚きました。
「公美にオファーした時点で洋子は公美のものだ」と。俳優領域と演出領域にはっきり境界線がある。プロの役者とは何なのかということを考えさせられました。
この一作でどうのこうのは言えないんですけど、今後合作や海外作品をやっていくのであれば、俳優としてどういった姿勢で挑まなければならないかということの、あくまで基本ベースみたいなものは掴めた気はします。
――監督から言われて嬉しかったことを教えてください。
瀧内:「君は素晴らしい演技をする俳優だよ」と。「だから自信を持って。believe yourself」という言葉を常に言っていただきました。自分を信じなさいと。ちょっと本当に涙が出そうになりました。
――そうなんですね。
瀧内:私は自分のことを疑ってばかりいたんです。「これが正しいのか」「これがいいのか」と苦しんでばかりいたんですけど。常に「believe yourself」と。この言葉は、その後も、現場に行く前に必ず自分に言い聞かせるようにしています。
◆浅野忠信からかけてもらった言葉
――浅野さんのことは、デビューの頃から憧れてきたとのことですが、現場で実際に体感したすごさを教えてください。
瀧内:浅野さんのような表現をやりたい、ああいう存在感を醸し出す俳優になりたいとずっと憧れてきました。
ご一緒するからには、何か盗めるものは盗もうと思っておりましたが、一朝一夕で盗めるものではないと、ファーストカットで衝撃を受けたというのが、一番覚えている感覚です。
普段作品を観ていて、「これって、脚本通りなんだろうか」と常々思っていました。段取りからどういった動きをなさるのだろうと見ていたのですけど、実際に俳優として対峙させていただいたときに、ものすごく細やかなお芝居の積み重ねをなさることを感じました。
映像で見るのと生で感じるのは違うんだなと思いましたね。凄まじいものを感じました。
――脚本から想像される動きとは違った動きをされるときはありましたか?
瀧内:それはなかったです。基本的に脚本通りです。私がイメージしていたものとは全然違っていてやっぱり浅野さんは唯一無二だなと感じることは多々ありましたけれど、脚本から外れることはありませんでした。
あと、存在感における説得力の強さはやっぱりすごくて、ご自身はものすごく腰が低くて優しくて。私が聞いたことはなんでも教えてくださる。本当に温かい先輩でした。
――実際に浅野さんからかけてもらった、ありがたかった言葉を教えてください。
瀧内:それは、、、私の宝物にしたいので、秘密です(笑)。
――(笑)。
瀧内:見ていて勉強になったのは、監督との意見交換の仕方ですね。広い視野を持って、現場のことを見ていらっしゃるのを感じました。浅野さんの体から出てくる言葉というのは、私にはない視点だったので、多角的な視点を持ちながらお芝居をなさっているのだなと、すごく勉強になりました。
◆ゴールデングローブ賞でのスピーチを見て
――浅野さんといえば、真田広之さんがプロデューサーを務めたハリウッド製作のドラマ『SHOGUN 将軍』で、日本人初となるゴールデングローブ賞テレビドラマ部門助演男優賞を受賞しました。世界中でスピーチが注目されましたが、ご覧になりましたか?
瀧内:もちろんです。“私が知っている浅野さんだ”と思いました。すごく謙虚で、「僕は日本人の俳優です。みなさんは知らないと思いますけど」と最初におっしゃっていたのが印象的でした。
その謙虚さと、シンプルに喜びが伝わってくる感じ。常に変容し続け、どこまでも突き進んでいく浅野さんに、私はやっぱりずっと憧れ続けていくんだろうなと思っていますし、浅野さんが作ってきてくださった土壌の中で、私たち後輩は生きています。
その恩恵を受けながら、改めて浅野さんがいる時代に俳優をやれて、本当に幸せだと思っています。
――昨年35歳になりました。最後に、新しく始めたことや変化がありましたら教えてください。
瀧内:体のメンテナンスをよくするようになりました。35歳になって、自分の体と向き合うことを大切にしていきたいという気持ちは強くなりました。
メンタル面も含めて、ちゃんとケアすることを心掛けていかないといけないなと思って、瞑想したりヨガを行ったり。ちょっと走ってみたりとか。仕事だけではなくて、自分自身のために時間を使うことも増えてきたかなと感じています。
――ぜひケアもしていただきながら。今後も活躍期待しています。
瀧内:ありがとうございます。
<取材・文/望月ふみ>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi