(画像:八代亜紀 Instagramより)2023年12月、惜しまれつつ73歳でこの世を去った歌手の八代亜紀さん。
今年4月下旬に追悼アルバムが発売予定となっています。しかしその特典として八代さんが20代の頃にプライベートで撮影されたヌード写真が封入されるとわかり、いま批判が集まっています。
◆八代さんの若き日のフルヌード写真掲載と告知
騒動はレコード会社のニューセンチュリーレコードが、今年4月21日に発売予定の八代さんのベスト盤『忘れないで』を告知したことがきっかけでした。
同社のホームページにはそのベスト盤に“お宝”として八代さんが「24歳〜25歳の時に同棲していたT社のNディレクターによってポラロイドカメラで撮影されたフルヌード写真2枚が掲載されています」との記載が。「八代亜紀の初めてのヌード写真です」と謳い文句までついていました。
八代さんは独身時代に、当時既婚だったこのディレクターと男女関係があったことは過去に週刊誌等でも報じられてきたことでした。
しかし八代さんが亡くなった今になって本人の若き日のプライベートな問題を不必要に掘り起こし、プライベートで撮影された私的かつフルヌードという写真を掲載するというのはあまりにも故人を冒涜(ぼうとく)していると思わざるを得ません。
◆「八代さんに対するリベンジポルノでは」憤りの声
事の背景には、当該のレコード会社の代表が、元所属事務所社長に対し、八代さんの楽曲の利権や財産の死後の扱いを巡って憤懣をもらしていることが一部メディアで報じられています。
八代さんへの私的な遺恨や復讐心ではないにせよ、20代の頃のプライベートかつ半世紀以上の時を経て公の目にさらされ、性的な消費や世間のおもちゃにされる恐怖は想像を絶します。
若き日の八代さんのフルヌード写真を“お宝”という表現しているレコード会社の倫理観も、あまりにも世間の常識とかけ離れているのではないでしょうか。
そもそもすでに亡くなっている八代さん本人の許諾が取れているはずがありません。自分の尊厳を利用してお金を儲けようとしているとは、天国の八代さんからしたら許せないのではないでしょうか。
このニュースが拡散されると、X(旧Twitter)では怒りの声があげられていました。
「売上のために八代さんの尊厳を傷つける最低なレコード会社」、「故人への冒涜だし間接的な性暴力」、「プライベートなことを本人の許可なくビジネスにするのはありえない」、「リベンジポルノではないのか」といった批判の意見が多数寄せられ、「#八代亜紀さんの尊厳を守れ」とハッシュタグをつけて多くの投稿がなされています。
また、オンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」では「八代亜紀さんの尊厳を保護し、リベンジポルノを阻止する」と題したオンライン署名が4月9日に開始されました。批判の声は高まるばかりです。
◆女子刑務所を慰問、女性の痛みに寄り添った八代さん
八代さんは元マネージャーで個人事務所社長の男性と1994年に結婚し、2021年の芸能活動50周年の節目に熟年離婚。70歳という高齢になっても、自分の望む女性としての生き方を貫く姿勢を見せていました。
また社会的弱者にも眼差しも向け、被災地や老人ホームなどで訪問公演するなどボランティア活動も盛んに行っていた八代さん。
1981年からはライフワークとして女子刑務所での慰問公演を始め、その後40年近くかけ日本全国のすべての女子刑務所への訪問も達成しました。
女性の心の傷や痛みに寄り添い、八代さんが「あなたたちがここにいるのは男のせいよね」と声をかけ、八代さんの歌を聴いた女子受刑者たちが咽(むせ)び泣いていたという逸話もよく語られています。
◆本人の意思もないヌード掲載は尊厳を踏みにじること
女として生きる苦しみを歌や活動を通して支えてきた八代さんの追悼アルバムで、本人の意思決定もないままヌード写真が掲載される。ファンはもちろん、八代さんに支えられた女子刑務所の元受刑者たちも筆舌に尽くし難い悔しさや悲しみがあるのではないでしょうか。
芸能界全体で女性への性暴力が社会問題となっているこのタイミングで起きている今回の騒動。お金のためなら故人だろうとこれまでの恩があろうと、1人の女性の尊厳を平気で踏みにじる音楽業界の慣習も透けて見えるようです。
どうにかこのベスト盤は発売中止に至ってほしいと願わずにはいられません。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中