「NHKからパン作り指導の依頼があったのは、昨年の6月でした。私は日本パン技術研究所という学校で『パンの歴史』という講義を持っていましたので、そこを通して今回の朝ドラの話を頂いたのです」
こう話すのは、『あんぱん』で製パン指導を行っている竹谷光司さん。
’48年に北海道で生まれた竹谷さんは、大学卒業後に大手パンメーカーに勤務。’71年からドイツでパンの研修を受け、帰国後は大手製粉会社で開発や基礎研究に携わってきた“日本のパン研究の第一人者”だ。
ドラマで製パン指導を行うのは、今回が初めてのことだという。
「戦時中には乾パンが盛んに生産されていたほか、水あめに小麦粉を加えて作る『軍隊堅パン』という保存食があったのです。
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『あんぱん』に協力するにあたって、昭和初期の8ミリフィルムの映像を確認するなどして、こうした当時のパンを一から全部作って再現してみることから初めました」
ドラマに登場する石窯も、実際にパンが焼けるか検証したという。
「長野県で調達した河原の石を泥で固めて作ったのですが、石窯づくりだけで丸一日かかりました。
初めての試みでしたが、これを使ってすごく美味しいあんぱんが焼けたときは感動しましたね」
『あんぱん』の第一週では、阿部サダヲ(54)が演じる“ヤムおじさん”こと屋村草吉が、あんぱんを持って主人公・朝田のぶの家を訪れる様子が描かれた。
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「阿部サダヲさんと、今田美桜さん(28)はじめ朝田家の3人姉妹には、小麦粉からパンをこねて焼き上がるまでの工程を一度通して指導しました」
4月4日に放送された『あさイチ』(NHK)に阿部が出演した際には、竹谷さんもVTRで登場。
同番組では、劇中でのパンの見栄えをめぐって、竹谷さんと時代考証の担当者との意見が衝突したことなど、竹谷さんのプロとしてのこだわりが明かされた。
そんな竹谷さんも、“風来坊のパン職人”を演じる阿部の筋の良さには驚嘆したという。
「パン生地を捏ねて丸めるのは、いざやってみると初心者にはなかなか難しい。でも阿部さんは、たったの一回で成功していたのです。
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阿部さん以外の方々も、一度である程度のことをすぐに習得してしまうので驚きました」
■阿部は妻同伴で竹谷さんのお店に
竹谷さんは、’10年に千葉県佐伯市に自身のベーカリーをオープンしている。’20年には店を息子夫婦に譲っているが、現在でも工房に立つことがあるという。
この店には、阿部もプライベートで訪れていたそうだ。
「『今度お店に行きます』と言って下さっていたのですが、まさか本当に訪ねてきてくださるとは。
私が店に出られるのはお昼の2時間ぐらいなのですが、そのころに阿部さんが奥さんと一緒にいらしたのです。
その日はたまたま別のテレビ番組の打ち合わせをしていたのですが、そのスタッフたちも私があいさつしてる人が阿部さんだと気付かず『なんか変な人がいるな』と思っていたそうで(笑)。
いい意味で芸能人としてのオーラがないので、私が“阿部サダヲさんですよ”と指摘するまでわからなかったそうです」
パン職人を演じるにあたって、阿部は自宅でもパン作りの修業に専念していたようだ。
「あんぱんを作るうえで一番難しいのが、あんこを詰める作業。
そこで、阿部さんのために練習用のパン生地をあらかじめ作っておいて、ご自宅に持ち帰ってもらっていたのです。
その生地を使って、あんの代わりにゴルフボールをヘラで包む練習をしてもらっていました」
撮影やリハーサルにも立ち会い、朝田家の演者とも積極的に意見を交わしていたそうだ。
「撮影現場の雰囲気は、私が話に入っていけるほど本当に穏やか。
吉田鋼太郎さん(66)は休憩室で気さくに話しかけてくれましたし、パンの仕込みに浅田美代子さん(69)が『私もやりたい!』と飛び入り参加してきたことも。
主演の今田さんは、はつらつとした感じで現場全体を明るく引っ張っていたのが印象的でした。
私個人としても今後の展開にとても期待しています」
“元気100倍”な現場で、ドラマも大成功なるか――。
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