
【写真】撮影中もずっと仲良し! ラミ・マレック&レイチェル・ブロズナハン撮り下ろしショット
■「いつか一緒に」がかなった『アマチュア』
――本作はラミさんにとって『ボヘミアン・ラプソディ』以来7年ぶりの主演作、レイチェルさんにとって人気シリーズ『マーベラス・ミセス・メイゼル』完結後の作品です。出演の決め手は何でしたか?
ラミ・マレック(以下、ラミ):出演を決める時、演じるキャラクターが主演かどうかや、物語を引っ張る存在であるかということは一切考えません。僕はイエスかノーかがはっきりしていて、本能的に「やりたい」と思える役であることが決め手です。今回の物語は、アクションがあるスパイ作品を、過小評価されている人、つまり“アンダードッグ”の視点で語るという点に魅力を感じました。あと、チャーリーというキャラクターが内に秘めた強さを持っているところにもひかれました。
さらにチャーリーは、人生の中で誰もが恵まれていると感じる「深い愛」に出会っていました。しかし、サラと育んだ愛は、ひどい形で奪われてしまいます。そのストーリーが僕にとって、「喪失とは何か」を深く掘り下げるきっかけになったんです。悲しみの過程、つまり死の受容のプロセスを経て、チャーリーが最終的にどう乗り越え、受け入れていくのかというストーリーを、アクション映画という枠の中で描くことができるという点に、すごくひかれたんです。
レイチェル・ブロズナハン(以下、レイチェル):わたしもラミと同じです。役の大きさや立場はあまり重要じゃありません。素晴らしい脚本や物語だったり、一緒に仕事をしたい監督だったり、この作品みたいに魅力的なキャストだったり、あるいは今まで演じたことのないような役柄だったり。きっかけは色々です。このプロジェクトには、そのすべてが詰まっていました。
特にラミとは長年の知り合いで、いつか一緒に仕事をしたいと話をしていました。しかも今回は彼がプロデューサーも務めていて、これだけのキャストを集める情熱や、プロデューサーとしての努力に感動しました。あとサラが、すごくやわらかさを持ったキャラクターで、それが新鮮でした。長年『マーベラス・ミセス・メイゼル』に出演していて、そういうタイプの役柄を演じる機会がしばらくなかったのも本作に魅力を感じた理由です。
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ラミ:念のためにお伝えします。わたしがプロデューサーとしての手柄や称賛をすべて受け取っているように感じられるかもしれませんが、実際は複数人いるうちの一人でしかありません。本作の監督を務めたジェームズ・ホーズのビジョン、美的感覚、細部へのこだわりと、彼が手掛けた『窓際のスパイ』に心を打たれて参加しました。それまでにもいろんな監督と話をしてきましたが、彼ほど「圧倒される存在感」を感じた人はいませんでした。初対面のときから、強い労働倫理、入念な準備、独自のビジョン、そして最初から最後までやり抜くための確固たる意思を感じたんです。プロデューサーとして、長い時間を共にして、情熱を注ぎ、深く関わっていく以上、自分と同じ思いを共有してくれる人じゃないと意味がないと思うんです。彼はまさにそういう存在でした。
レイチェル:俳優がプロデューサーとして参加しても、いつもうまくいくとは限らないんです(笑)。でも今回は特別な体験でした。素晴らしい俳優が同時にプロデューサーでもある場合、全体像を一度に見渡すことができて、未来を10歩先まで見通しながら、同時に“今この瞬間”にも深く集中できるんです。しかも、撮影監督(DP)や監督など自分が関わって起用した“プロの専門家たち”に信頼して任せるという視点も持っている。今回はまさにそんな感じで、本当に素晴らしかったんです。
ラミはこのプロジェクトの初期の段階から長い時間をかけて本作に向き合っていました。そして、ローレンス・フィッシュバーンをはじめ、カトリーナ・バルフ、マイケル・スタールバーグ、ジョン・バーンサルら素晴らしいキャスト陣をまとめ上げたのも彼でした。だから、本当に素敵な経験でしたし、さらに言うとラミには、一緒に部屋にいると「あなたしかいない」と感じさせる独特な力があるんですよ。そのバランスを取れる人って、なかなかいないんです。
ラミ:レイチェルにそう言ってもらえるなんて、こんなにうれしいことはないですね!
――ラミさんは過去に「自分の内面と深く向き合うタイプ」とおっしゃっていましたが、そんな自身の性格は、今回のチャーリーという役柄に合っていましたか?
■ラミってどんなタイプ? レイチェルは『スーパーマン』の話も
ラミ:いい質問ですね、自分について話さなきゃいけないので…(笑)。チャーリーは、常に何かをはぐらかしたり、避けようとしたりしているところがありますが、そこは僕自身とも重なって見えるんです。でも僕は似ているところもあるけれど、周囲の世界や人間に対して、それなりにきちんと目を向けている方だと思いたいです。僕は若い頃から深い会話を交わさなくても相手の感情を吸収して分かってしまうところがあります。一緒にいるだけで、なんとなく理解できたような気がすることがあって…もちろん100%間違っている時もあるんですけど。
レイチェル:ラミは本当に多層的で複雑な人だと思います。わたしも彼のすべてを知っているわけではないですが、すごく情熱と好奇心にあふれていて、それはチャーリーというキャラクターにも深く根付いていると思います。ラミは自分では絶対に認めないとは思うんですけど、人としても俳優としても、すごく心が広い、寛容な人なんです。自分が信じることや愛する人のためであれば、地の果てまででも追いかけるような人だと自然と想像できます。その情熱は、チャーリーというキャラクターの核にも、すごく強く表れていると感じます。
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――ラミが演じたチャーリーは戦闘能力もなければ殺しの経験もない役でした。その“アマチュア”っぽさは演じる上で強く意識したのでしょうか?
ラミ:自分たちにとって“アマチュア”は、僕たちの“北極星”つまり道しるべになる大切な言葉でした。その軸をブレさせないのが、チャーリーのために必要だったんです。チャーリーは常に“その場で学びながら”動いています。そこにはある種の独創的なひらめきがあって、それは彼が状況に追い込まれて初めて引き出されたものでもあるし、実はもともと備わっていた才能かもしれない。わたしたち一般人では到底できないことをこなす一方で、プロのスパイだったらできることをできないチャーリーの姿も映される。そこがこのキャラクターを面白くしているポイントだと思います。観客がチャーリーに共感しながら、段々といろんなことができるようになる彼を応援していく。しかもその過程が、彼自身にとっても観客にとっても同じくらい“衝撃的”であるというのが、映画としてとても面白いんです。
終盤では彼がメガネをかけるようなシーンもありましたが、以前自分が演じたキャラクターと似てしまうので、使い方には気を付けなければいけませんでした(笑)。今回はチャーリーのアイデンティーを失わずに成長させていくことが演じる上でとても大切でしたね。
――レイチェルさんは今年『スーパーマン』の公開も控えていますね。今回の『アマチュア』の経験は次の作品にも生きましたか?
レイチェル:『アマチュア』の撮影が終わったのが、『スーパーマン』の撮影が始まる数ヵ月前で、まるで次のプロジェクトへ向かうための“追い風”のように、最初から最後まで本当に素晴らしい経験でした。本作のジェームズ(・ホーズ)もDCユニバースの一員で、グリーン・ランタンのドラマ『ランタン(原題)』(2026年に米配信)のパイロット版の監督をしています。だから、ある意味では、ジェームズも一緒に次の世界へ連れて行けた感じがします。
(取材・文・写真:阿部桜子)
映画 『アマチュア』は全国劇場公開中。
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