コンビニを入社初日で“飛んだ”40代おじさんの呆れた態度「経験者と思って期待していたのに…」

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2025年04月14日 09:21  日刊SPA!

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※写真はイメージです
 多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。とはいえ、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。業務内容や職場環境が合わなかったなど、人によって理由はさまざまである。
 今回は、わずか1日で姿を消した2人の新人のエピソードを紹介しよう。

◆「自分の能力が活かせない」配属先にショックを受けて…

 市役所に入庁したその日に姿を消した新人職員がいた。その驚くべき顛末を、同僚だった谷川さん(仮名)が明かす。

 そこは毎年10〜15名ほどの新規採用が行われる地方都市の市役所。ある年、15名ほどの新人が入庁した中に、Aさん(仮名)がいた。公立大学を卒業後、1年間の就職浪人を経ての入庁だった。

「現在はひと通りの研修を経てからそれぞれ配属されていきますが、午前中に簡単な説明があっただけで、午後からは所属部署で業務に就く時代です。

 Aさんが配属された先は上水道施設課で技術職でした。事務職ではなかったので周囲も少し違和感を抱いたものの、Aさんは技術系の資格もお持ちなのかな、ならば事務も技術もこなせる一流大学卒業のスーパーマンなのかもしれない、と同期の中でも一目置かれていました」

 入庁初日、挨拶もそこそこにさっそく浄水場の1つが故障するトラブルが発生。

「ちいさな田舎の市役所ですので、施設が故障をすれば、技術職も事務職も関係なく、課の職員が総出になります。新人のAさんには給水支援のお手伝いが回ってきました。

 夕方には浄水場も復旧し、その日の業務は終了。新規採用職員としての紹介は翌日の朝礼で行うことになりました。当然ですが、こういう緊急事態は市役所の業務の中でも日常的にあるものです」

 ところが翌日の朝、上水道施設課にAさんの姿はなかった。

 通勤途中で事故に遭っていないか、昨日の給水支援で体調を崩したのではないか。同僚たちは心配していた。人事課から連絡を試みるも携帯電話はつながらず、夕方に上水道施設課長と人事課長の2人でAさんの自宅を訪問した。

「すると、玄関に出てこられたのはAさんのお父さんで、昨日仕事から帰ってきた彼は、夜中にどこかへ出ていったきり、帰ってきていないとのことでした」

◆1週間後、郵便で届いた退職届

 1週間ほどして、郵便でAさん本人から退職届が提出された。お父さんに話を聞いてもAさんからの連絡はなく、自家用車とともに消えたままだったという。

「退職届も簡単には受理できませんでしたが、紆余曲折あって最終的には退職が決まりました」

 半年後、Aさんのお父さんが人事課に菓子折りを持参し、行方不明になった経緯を説明して謝罪したという。

「行方不明になってから半年ほどは1人で全国を旅していたようです。それはさておき、Aさんは大手企業の企画部門の採用試験にも合格していたようですが、公務員のほうが固くてラクな仕事だと思って入庁したそうです。しかし、まさかの配属先が上水道施設課であったことにショックを受け、その部署では自身の能力が活かせないことなどに不満を抱いていたようです。

 それならそれで自分の口でしっかりと課長や人事課に相談すれば良かったものの、本人のプライドが邪魔をしたようで、言い出せなかったとのことです。同期が集まると今でも1日で行方不明になった彼の話題が出ますね」

◆人手不足のコンビニに救世主が登場

 大村さん(仮名・女性)は、兄がオーナーのコンビニで副店長を務めている。

 兄は直営店を引き継ぎ、フランチャイズで経営を始めたが、その直後から難題に直面していた。

「本部直営店とフランチャイズでは、マニュアルこそあれど、実際は店舗ごとにルールが異なることが多々あります。前の店舗からそのままスタッフも引き継いだのですが、経営する立場からすると地獄のような環境でした」

 スタッフの無断欠勤や深夜勤務中の爆睡など、杜撰な勤務態度が蔓延。そして兄妹が労働環境を厳しく一変させると、それまで自由にしていたスタッフの不満が爆発し、次々と退職者が出る事態となったのだ。

 早朝から深夜まで空いたシフトはオーナーの兄と大村さんで埋めた。

 兄妹でギリギリの状態でまわしていたが、そんなときに奇跡のような人材が現れた。同じ系列のコンビニ経験者というBさん(仮名・40代後半)が、毎週月曜日から金曜日までの深夜勤務を希望して入社を申し出たのだ。

「経験者で、しかも深夜帯希望の方であったため、私たち兄妹は藁にもすがる思いで雇用することにしました」

 しかし、いざBさんと一緒に仕事を始めてみると、違和感が生じた。

「深夜帯に仕事を引き継ぐつもりで働いてみると、Bさんがぜんぜん“できない”ことに気づきました」

 履歴書には同じ系列のコンビニでの勤務経験が記されていたが、じつは深夜帯に働いたことがなかったのだ。

「そのうえ、兄からの指示を聞き流したり、新しいことを覚えようとする素振りがまるでなかったので心配になりました」

 初日は手取り足取り教え、なんとかシフトを終えることができた。「レジや商品の陳列は経験が活かせるので、深夜帯の業務は少しずつ覚えていけばいい」と励まして、早朝のスタッフと交代させた。

◆2度と現れなかった新人

 ところが、この日を最後にBさんは二度と店に姿を現さなかった。勤務時間になっても出勤せず、連絡も取れない状況が続いた。

 本部の担当エリアマネージャーを通じて調査を行うと、驚きの事実が見えてきた。

「コンビニのスタッフたちは横のつながりがあって、以前のうちの店舗はラクだという情報が流れていたようなんです。それでBさんはゆるい労働環境をイメージし、深夜の時間帯は眠ることができると考えて応募してきたようです」

 オーナーが大村さん兄妹に変わり、厳格な体制に整備されていたことを知らなかったようだ。

「本部からの指示により、Bさんにはしっかり1日分の給料が支払われました。彼が1日で飛んでしまった事件以降、面接の際はアルバイトも含めて簡単に採用するのではなく、こちらの業務の内容やどのような人物を求めているのか、事細かくすり合わせをするようになりました」

 現在、店舗の運営は安定し、9年目を迎えているという。Bさんのその後についてはわからない。

「Bさんは当時すでに40代後半でしたので、もう少し成長された50代になっておられることを祈ります」と締めくくった。

<取材・文/藤井厚年>

【藤井厚年】
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスで様々な雑誌・書籍・ムック本・Webメディアの現場を踏み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者として活動中。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。趣味はカメラ。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

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