画像提供:マイナビニュース 「イエコン」を運営するクランピーリアルエステートは4月10日、地方移住についての調査結果を発表した。調査は2024年11月26日〜12月10日、都市圏から地方移住をした経験のある男女(地方移住をしたもののやめて都市圏に戻った人も対象)276名を対象にインターネットで行われた。
○地方移住を考えたきっかけ
都市部から地方へ移住しようと考えたきっかけを聞いたところ、「地方ならゆとりのある生活ができると思った」(21.9%)と答えた人が最も多く、「自然環境に恵まれた場所で暮らしたい」(20.5%)、「都会に疲れた」(19.1%)、「出身地(ふるさと)で暮らしたい」(15.5%)、「働き方の変化」(12.8%)と続いた。
「地方ならゆとりのある生活ができると思った」と回答した人の意見には、気持ち的な理由と金銭的な理由の2種類があるようだ。
「海の近くに住んで、日常的に朝や夕方に海辺を散歩したかったから」(40代男性)、「東京にも通勤できて、空気が綺麗な場所を選んだ」(30代男性)など、自然環境に恵まれた環境で暮らしたい人の中には、日常的に海と触れ合える環境を求めた結果、地方移住を考えた人がいる。また、東京への通勤を前提に少しでも空気のきれいな環境に住みたいという人もいた。
「都会で疲弊して働くよりも、田舎でそこそこ働きながら暮らしたかった」(40代男性)、「年齢とともに都会の忙しさに疲れて、地方でのんびりした時間を過ごしたくなった」(40代男性)、「仕事の関係で首都圏で暮らしていたが、通勤や普段の生活において人が多く精神的に疲労していた。結婚を機に地元に拠点を構えて移住をしました。勤め先の本社も地元にあり、希望を出して受理された」(30代男性)といった声もあった。
○移住先を決めた「決め手」
移住先を決めた「決め手」については、「親や親族などの家族が住んでいる土地だから」という理由が37.7%で1位となった。ランキングでは、移住支援の充実や移住者を多く受け入れているかどうかはあまり考慮されていない。
「家族が住んでいるから」を選んだ人からは、「高齢の両親が住んでいて最後の親孝行になると思った」(50代男性)、「両親が共働きで忙しかったため、祖父母がいる環境で生活した方が良いと思ったから」(40代女性)、「生まれ育った土地なので、親や兄弟も近くにいて土地勘もあるので良いと思った」(40代女性)という声も寄せられている。両親が高齢になるにつれて心配事が増えるため、親孝行を目的として実家の近くに住むという選択をする人も見られる。また、子育て世代にとっては、近くに祖父母がいることが安心につながりやすい。親や兄弟など親族が住んでいる地域であれば、地方移住に伴う不安も軽減されると考えられる。
「趣味を楽しめるスポットがある」と回答した人からは、「サーフィンやキャンプが気軽に楽しめると思い移住を決意しました」(20代女性)、「山登りが好きで休みの日に登山を楽しめるのが理由です」(40代女性)、「ランニングが好きなので、広大なクロスカントリーコースがあることを重視した」(20代男性)などの声があり、さまざまな趣味が伺える。海や山、ランニングができる広々としたコースなど趣味によって求めるスポットは異なる。
また、移住にあたって心配なのは仕事だが、「パートナーの職場の本社があるためです。他県も候補にありましたが、どうせならと本社の県に引っ越しました」(30代女性)、「会社の支店があったのと新幹線、飛行機の利便性がよいこと」(40代男性)、「リゾートバイトで募集していて、沖縄で働いてみたいと思っていたから」(20代男性)といった回答がみられた。
就職先を重視した意見には、勤めている会社の本社や支店がある地方へ移住した人も一定数いる。他にも、移住したい地方での募集があったからと移住を決めた人もいた。
○77%の人が地方移住に満足している
実際に地方移住をして満足しているかどうかを聞いた質問では、「満足している」「どちらかというと満足している」を合わせると77%の人が地方移住に「満足」していると回答した。
○移住して良かったことは?
地方移住して良かったことの1位は「自然が近くにあって触れ合える」ことだった。他にも「人混みから解放された」「家賃が安い」などの回答も多くあったが、複数の理由を選択した人が多く総合的に満足している様子がわかった。
「自然が豊富だったので休日は癒されることが多かったです。また野菜は新鮮なものが入手できました」(50代男性)、「自然が多かったので心が癒されるのと人込みから解放されてストレスをあまり感じない点が良かったです」(30代男性)など、自然の豊かさに加えて新鮮な野菜が手に入ると喜んでいる人や、人が少ないためストレスを感じなくなったと喜ぶ人がいた。
また、「家族との時間が増えた。電車通勤から解放された」(40代女性)、「家族や親類が近くにいるので合う機会が増え、地方都市でも自然が近くにあり、食材も都市部に比べて新鮮で安いと思った」(40代女性)といったメリットも挙がっている。
○6割の人が移住先で孤独を感じていない
移住先で孤独を感じたことがあるかどうかについては、63%の人が「いいえ」と回答している。それだけ地方移住を満喫している人が多いということかも知れない。(データからは移住先に元々家族親戚が住んでいる人を除外している)
○地方移住で後悔していること
地方移住の後悔については、一番多い意見は「後悔していない」(20.7%)で、次に多いのが「仕事が少ない」(14.8%)だった。
「まず最初に仕事を見つけるのにとても苦労をしました。さらにどこへ行くにも車が必要な環境で店も限られ選ぶことができる選択肢がとても狭かったです」(30代男性)、「これがネックなのですが、仕事が少なく、お給料も東京より安かったです」(50代女性)、「B to Bの仕事をしているのですが、地方ではフリーランスと契約してくれる企業は少なく、苦戦しています」(30代男性)といった声が挙がっている。仕事を見つけるのに苦労したり、仕事が少ない上にどうしても東京と比べると収入が下がる点や、新しい取引先が中々見つけ辛く、苦戦している様子が伺える。
仕事の面以外では「ずっと都会で過ごしてきたしマンション暮らしだったから庭付きには、憧れていたが実際木や草が生い茂り管理が大変」(50代女性)、「新潟県は冬に大雪となる。家を買ったのだが、大雪になると、自分で屋根の雪下ろしをしないといけない。これが大変である」(60代男性)といった意見もあった。マンション暮らしだった人は庭の管理が大変になったと感じているようだ。雪の多い地方に移住した人の中には、想像以上の雪に改めて大変さを実感している人もいた。
○想定外のデメリット
移住前にある程度は予測していても、実際に移住してみると想像以上だったデメリットもある。主に「交通の便」「教育格差」「医療格差」について想定外のデメリットを感じている人が多いようだ。
「交通機関が不便です。列車の待ち時間が長いです」(40代女性)、「車が必需品になってくるので、燃料費の負担が増えた」(40代男性)、「公共交通機関が少なく、不便であると同時に料金も高い。移住先ではバスしかなく、本数も少なかった。車社会なので、車がないと非常に不便」(60代女性)など、列車やバスの本数が少ないため、待ち時間が長いといった意見や、車が必要になるためガソリン代などの負担が多くなるといった意見が見られた。
教育に関しては、「子どもの教育リソースが少なく質も都会の方がいいなあと改めて感じました」(30代男性)、「子供の小学校受験を考えていたのですが、良さそうな学校は遠いところばかりなので通学時間を考えると受験を諦めるしか無かったこと」(40代女性)、「子どもの大学進学で自宅から通える大学が少ないので、都市部に一人暮らしさせなければならず、その費用が大きい」(50代女性)といった声が寄せられている。
都会では数多くある塾や私立の学校が地方では少ないという意見があった。そのため、小学校〜高校の間は選択肢が非常に少なく、大学進学の際は一人暮らし費用の負担が大きいといった悩みがあるようだ。
その他にも、「夜間や休日に体調不良になった場合の技術を持った医師の治療が受けられるところが無かった点です」(30代男性)、「自然環境が過酷すぎて、雪が降った時などは本当に想像以上に積もってどこにも行けないというのが予想外でした」(40代男性)といった意見が見られた。
○移住を継続できるかどうかは最初の3年以内が鍵
既に移住をやめた人に、移住後何年でやめたのかを聞いたところ約70%の人が3年未満でやめているとわかった。逆に最初の3年を乗り切れば、その後も長く移住生活を続けられる人が多いようだ。
○地方生活をやめた理由トップ3は「生活環境の変化」「買い物が不便」「移動手段が不便」
地方生活をやめた理由には、生活環境の変化に対応できなかったという意見が多く、次に買い物の不便さ、そして移動手段が不便だったという理由が多く挙がった。
「一番近い場所まで買い物に行くのにも車が必須で移動時間が長く、冬場はかなり雪が積もってどこにも行けないということも多かったというのが理由です」(40代男性)、「不便で車がないと!というのは大阪人には理解できないです。大変としかいいようがないです」(50代女性)といった声が寄せられている。
また、「東京と比べると娯楽も少なく楽しくないなと思った」(30代男性)、「一度都会の便利さに慣れてしまうと地方の生活に物足りなさを感じた」(30代女性)という声もあった。都会の生活を経験しているため、娯楽の少なさや不便さに慣れなかった人もいるようだ。
「当初テレワークで仕事予定でしたがコロナ禍が開けて出勤する必要が発生したので」(40代男性)という人もいた。さらに、「収入が減っても気持ちにゆとりのある生活ができると期待していましたが想定より物価が高く、その他のストレスも相まってうまく適応できませんでした」(30代女性)という声もあった。ある程度は予想していても、実際に移住してみると思ったよりも不便だったり物価が高かったり、移住先は気に入っていたものの収入が減少したために諦めた人もいたようだ。
○地方移住する前に準備したこと
地方移住をするにあたって「特に準備はしていない」人が1番多いものの、次に「転職活動」をした人が多いという結果となった。次に多いのは「移住先の相談窓口に相談した」で、お試し移住や2段階移住を利用した人は少数だった。(データからは移住先に元々家族親戚が住んでいる人を除外している)
○移住前に現地を訪れた回数
移住前に現地を訪れた回数は「2回」が一番多く、続いて「5回」だった。(データからは移住先に元々家族親戚が住んでいる人を除外している) 地方移住を考える人は下見を重視しているとわかる。
「移住する地域に実際に行ってみる。季節によっても姿かたちが大きく変わる可能性があるため注意してほしいです」(20代男性)、「移住前に何度か現地に足を運び、実際に移住した人にいろいろ聞いてみる」(40代男性)など、今後移住を考えている人へ向けたアドバイスでも何度か現地を訪れることを勧める人が多くいた。
季節によって環境が大きく変わる地域もあるため、移住を検討する際には季節を変えて訪れてみることが重要となる。また、すでに移住している人から直接話を聞くためにも、何度か現地に足を運ぶ必要があると考えられる。
○移住支援制度を使った人はわずか7%
色々な自治体が移住支援制度を用意しているが、実際に使った人はわずか7%だった。移住したい自治体に制度がないなどさまざまな理由があると考えられるが、ほとんどの人が支援制度を使っていないことがわかった。
実際に移住支援制度を使った人は、「県外移住者に対して10万円」「その市で雇用され、5年住むならいくらあげます、といった市の制度」「リモートワーク支援金」「就業支援金、引っ越し費用など」を利用したようだ。自治体によってさまざまだが、幅広い支援制度があるとわかる。
○移住後の生活費の変化
移住後の生活費の変化を見ると「増えた」との回答は18%で、「変わらない」が16%、「減った」人は66%と移住前よりも減ったと答えた人が多い傾向だった。
一方収入の変化についても、「増えた」人は15%で、「変わらない」と答えた人は38%、「減った」人は47%で、こちらも減少している人の方が多いという結果となった。必ずしも、地方移住すれば家賃や物価が低く経済的に楽になるというわけではなさそうだ。
○6割程の人が移住にあたって新たに仕事を探している
地方移住にあたって仕事をどうしたかの質問では、58%の人が新たに仕事を探したと回答した。元の仕事を引き続きしている人は33%だった。またリモートワークについても聞いたところ、「していない」と答えた人は64%と、移住先で仕事をしている人が多いとわかる。
リモートワークをしている人が36%いるという点に注目できる。「コロナ禍をきっかけにリモートワークが導入されたこと、本社または支社への出張経費も一定額使えるため」(40代男性)、「テレワークが普及していたからその影響もあり移住を決めた」(40代男性)といった声もあるように、移住を決めた理由にテレワークの導入を挙げる人もいる。元の仕事をしている人の中には、テレワークで続けている人も一定数いるようだ。
○仕事のスキルが移住後に役立った人も多数
「もともと英語を使った仕事をしており、引っ越し後も継続的に英語力を鍛えていたことが、地方にしては給料の良い仕事を得られた理由になった」(50代男性)、「エンジニアだったので、移住前に磨いた技術力は、移住後も役にたった」(60代男性)、「国家資格を持っていたので選ばなければ職を探せたのが移住に有利だったと思う」(40代女性)など、元々持っていた仕事のスキルが、移住後に役立った人も多数いた。英語やエンジニアとしてのスキルなど、身につけた力が役に立ったという意見もみられた。どこでも職があるような国家資格も、地方移住にあたっては心強い。
「ライターを副業でやっていたためどこに行ってもできるので良かったと思った」(40代女性)と、副業でやっていたライター業が役に立ったという人もいた。パソコンさえあればどこでも仕事ができるのは、地方移住にとって有利となるようだ。
○移住地での人付き合いについて
移住先で活発に人付き合いをしているかどうかを聞いたところ、「活発」と「活発ではない」の比率はほぼ半々となった。
地方で行われる祭や自治会のイベントなどに「よく参加している」と回答した人は11%、「たまに参加する」が47%、「参加しない」が42%と地域の活動に積極的に参加している人は少ないようだ。移住先の人や自治会などと、うまく距離をとって付き合っている人が多いのかもしれない。
○地方移住、成功の秘訣は?
地方移住に満足している人が多い一方で、さまざまな理由でやめてしまった人もいる。地方移住を成功させるには何が必要なのか、移住経験者に聞いたところ、「転職市場で需要があるスキルを磨けば、どこに引っ越しても仕事を得るのに役立つと思うので、引っ越す前からそれを意識していればよいと思います」(50代男性)、「転職活動をして仕事を決めてからか、リモートワークで働ける体制を作ってから移住したほうが良いです」(50代男性)など、仕事に関するアドバイスが多く寄せられた。
仕事以外にも、「地方では都市圏に比べて自然が多くて不便なこともあるので、部分的な良さだけでなく、季節によってどんな場所なのかよく見てから移住した方が良いと思います」(40代女性)、「メリットもあればデメリットもあるので、しっかり移住先の環境や自治体が自分のライフスタイルに合ってるか情報を精査して地方へ移住を行うようにしましょう」(30代男性)、「移住先の制度や、医療機関や買い物場所の有無をネットでもいいので調べたほうがよい。可能ならば一度現地に行って雰囲気を感じてみると、自分に合うのかが感覚的にわかると思う」(40代男性)など、下調べを十分にするといったアドバイスも多くあった。(Yumi's life)