
自由な働き方として注目される「フリーランス」。しかし、実際にその道を選んだ人々に話を聞いてみると、理想と現実のギャップに驚かされることもあります。
【漫画】「フリーランスなんて、うらやましい〜」なんて言われますけど…(全編を読む)
フリーランスとは、公務員や会社・団体の従業員として働くのではなく、個人で仕事を請け負う働き方をしている人を指します。「働く場所や時間、請け負う仕事の量などを自分ですべてコントロールできる」というイメージや「頑張ればがんばっただけ報酬に直結する」というイメージもあり、フリーランスという働き方に憧れる方は少なくありません。
フリーランスと発注主をつなぐクラウドソーシングサービスや離れた場所でもスムーズに業務を行えるオンラインツールが増えていることなどを背景に、注目されている働き方です。一方、実際にフリーランスとして生計を立てている方にお話をうかがってみると、それほど“いい話”ばかりでもないようです…。実際に個人事業主の開業届を提出し、専業で取り組むフリーランスの方々に「実際のところ」を聞いてみました。
「時間の自由?納品日守れなかったら次から仕事来ないのに?」
Aさん(関東在住、40代・Webデザイナー)は新卒で求人広告を主に扱う代理店に編集職として入社し、出産を機に会社を退社。その後は元いた会社からの発注やクラウドソーシングを通じてフリーランスとして業務を請け負っています。
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経験者として元在籍していた会社の上司が声をかけてくれたということもあり、自分で営業をしなくても声をかけてくれる発注主を最初から確保した状態で始められました。フリーランスとしては恵まれたスタートと言えますが…。
「在宅ワークで服装は自由なので、ラフな格好をして保育園の送迎もしています。そうすると、同じ保育園のママさんに仕事内容を聞かれることもあるのですが、だいたい『フリーランスなんだ!時間が自由になるんでしょ?子どもがお熱出ても元々在宅だからなんとかなるよね〜うらやましい!!』なんて言われます」
「しかし、正直とんでもないですね。自分が元々発注側だったのでわかりますけど、外注のデザイナーなんて締切厳守が最低ラインです。保育園お迎えに間に合うように朝4時起きで仕事することもありますよ。全部自己責任で『同僚に代わってもらう』なんてこともできないので。『在宅だから卒園行事のお手伝いを』なんて頼まれると、正直イラっとします」
確かに、スケジュール調整のしやすさと働き方は必ずしも一致しない面がありますね。
「クライアントが選べるほど売上が確保できる人なんて一部」
Bさん(関西在住、20代、ライター&事務職)は2年前から副業でクラウドソーシングを使ってライティングのお仕事をしています。今はまだ生活をまかなえるほどの売上を達成できる見込みがないため、一般事務の仕事も辞められないでいるそうです。
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平均的な売り上げは月に5万円前後。それだけを聞くと「いい副業」という雰囲気ですが、この5万円は1件3000円程度の原稿料を10本〜20本書いてやっともらえる金額。それぞれ1本仕上げるには、SNSの調査をして、それをふまえてテキストを書いて…と、少なくとも2〜3時間はかかります。
「同じ時期にライター副業を始めた人たちに聞くと、私はまだ定期的に仕事がもらえている方みたいです。正直手間がかかってしまって、とても時給に換算する気になれない案件もあります。『そんな仕事だったら請けなきゃいい』って言われますけど、それで選べるほど受注が来る人なんてほんの一部だと思います」
毎月安定した売り上げを達成し続けるのは、なかなか難しいことなのかもしれません。
「完全リモートワークができると思っていたのに…」
Cさん(関東在住、30歳、アプリケーションエンジニア)は満員電車での通勤とその往復の時間が無駄に思え、会社を辞めてフリーランスエンジニアになる決断をしました。
これまで仕事の幅が広かったこともあり、エンジニア専門の業務委託紹介サイトで多くの業務の紹介を受けたそうです。そのなかでCさんは、客先に出向いての作業や打ち合わせを求められない「リモートワーク対応の案件」を選んで引き受けているそうなのですが…。
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「基本的に業務で現地に行かなきゃいけないことってほとんどないはずなんです。打ち合わせもオンラインでできますし。それでも『最初の顔合わせとか、先方担当者が希望するなら行きますよ』とサービス精神で言ってしまうと、なんだかんだ結構呼ばれるんですよね」
「ある企業に対しては、最初に担当業務外の次工程について軽くアドバイスしたのが間違いでした。エンドクライアントと進捗を共有したいので、と言われたので出向くと、ちゃっかり次工程の作業者がいて。何をどうすればいいのか、あれこれ質問してきたのでうんざりしました」
何だかんだと、多い時は週2回も客先に出向くことを求められるといい、「前職の正社員のころはリモートワークが週の半分は認められていました。フリーランスのはずが、以前とあまり変わらない働き方になっていることに、モヤモヤしてしまう」と話しています。
すべてイメージ通りというわけにはいかないのが仕事…という意味では、フリーランスも会社勤めも同じなのかもしれませんね。
◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。
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