激しく風が吹きつけ、雨が降るなか、天皇陛下と雅子さまは政府専用機のタラップを下り、傘も差されずに自衛隊関係者らに声をかけられていく。
4月7日、両陛下は日帰りで硫黄島を訪問された。東京都心から南に約1200キロ離れたこの離島では、第二次世界大戦末期に日米両軍が激突、約3万人が死亡した。1千人ほどいた島民は強制疎開によって島を追われ、軍属として徴用された島民のうち82人が、戦闘に巻き込まれて犠牲となった。いまも1万人を超える犠牲者の遺骨が見つかっていない。
戦後80年の節目である今年、上皇ご夫妻の“慰霊の旅”を受け継がれた両陛下。硫黄島ご訪問は、その大切な第一歩だった。
皇室担当記者は語る。
「今回、天皇陛下と雅子さまが拝礼されたのは3カ所。日本の将兵を祀る『硫黄島戦没者の碑(天山慰霊碑)』、島民の御霊を慰める『硫黄島島民平和祈念墓地公園』、日米双方の戦没者を追悼する『鎮魂の丘』を巡り、拝礼されました。
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戦争を知らない世代に向けて、記憶と記録を継承するという令和の“慰霊の旅”を、お心を一つにして臨まれたいというお気持ちを、訪問中のご様子からひしひしと感じました」
今回の両陛下のご訪問には、戦没者遺族や元島民の子孫も同行している。「全国硫黄島島民三世の会」会長の西村怜馬さん(43)もそのうちの一人だ。
「墓地公園でのご拝礼のあと、予定になかったお声がけをいただきました。雨が降るなか私たちは、雨具を着てフードはかぶっていない状態でした。すると陛下から、『雨は大丈夫ですか』と気遣っていただいたのです。屋内でのご懇談の場でも、両陛下は私たち一人ひとりの目を見て、丁寧に話を聞いてくださって感動しました。
私から“平和を祈る象徴になるような島になってほしいです”と申し上げたところ、両陛下は大きく頷かれて、『今後も体に気をつけて、皆さんで頑張られてください』と……遺骨収集や島民の証言や記憶の継承など、私たちの活動の原動力になったと思います。
また東京に戻られる際、見送りのため整列した硫黄島航空基地の自衛官らに、一人ひとりにお声がけされて、ねぎらわれていたことが印象に残っています」
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そして陛下は雨のなか、雅子さまにも終始気を配られていた。ご訪問の前日には、悠仁さまが筑波大学の入学式を終えて御所に挨拶のため参内された際、陛下と愛子さまが迎えられていたが、雅子さまは同席されなかったのだ。
「いつもご一家そろってお会いになりますが、硫黄島ご訪問に向けてご体調を整えるため、お出ましにならなかったのです。
11日から12日には大阪・関西万博の会場ご視察や開会式へのご臨席も控えていました。さらに16日にはトンガの皇太子夫妻を招いた御所での夕食会、22日には春の園遊会と、雅子さまにとって前例のない、過密なスケジュールとなっているのです。
当然、ご体調への負荷も大きいために、陛下は雅子さまのご負担が少しでも小さくなるように、細部にいたるまでお気を使われていたようにお見受けしています」(宮内庁関係者)
■雅子さまへのさりげないお心配り
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時にはずぶ濡れになりながらも、陛下は硫黄島ご滞在中の6時間、雅子さまを献身的に見守り、ともにお務めに臨まれていた。皇室番組を長年手がける放送作家のつげのり子さんはこう話す。
「慰霊碑への献水では、陛下が雅子さまを待ち、動作を合わせて水を注がれていました。また3カ所のご拝礼では、雨で滑りやすくなった所で、ヒールを履かれていた雅子さまに陛下が視線を向けられていたご様子にも、さりげない陛下のお心配りを感じました」
硫黄島ご訪問後、中3日で大阪万博の会場を訪問された両陛下は、シンボルの「大屋根リング」や日本館を視察された。
前出のつげさんは続ける。
「ご視察中、雅子さまのご表情はとても明るかったと思います。陛下と同じ方向に視線を向けながら話し、頷き合われていました。こうしたご様子からも、ご体調がよいことが伝わってきます。さらには、陛下がふだんから雅子さまに愛情をもって接していらっしゃると感じずにはいられません」
両陛下のご日程は今後も、“慰霊の旅”に加え、万博で来日する各国王室や首脳らのご接遇、さらには国際親善での外国ご訪問など、続々と控えている。
「これから両陛下は、5月の埼玉での全国植樹祭、6月には沖縄と広島、9月に長崎や滋賀への地方ご訪問も控えています。さらに7月には国賓として招かれているモンゴルご訪問にも臨まれます。移動距離も長く、雅子さまのご負担も大きいはずです。
それでも陛下の細やかなサポートに加え、素晴らしい女性に成長された愛子さまの存在に、精神的に安定感を高められているでしょう。きっと雅子さまのお務めへの意欲も、さらに増していかれると思います」(前出・つげさん)
陛下と愛子さまの献身的な支援を受けられながら、前代未聞の過酷な使命の道を、雅子さまは懸命に歩まれていく。
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