画像はイメージです 街中で困っている外国人を見かけたら、優しい気持ちがある人は「助けなきゃ」と思うのではないだろうか。ところが、その親切心が時に裏目に出ることもあるようだ。
「何年か前のことなんですけど、今でも忘れられない出来事です」と話すのは、専業主婦の片岡靖子さん(仮名・42歳)。
◆英語で助けを求めるも、誰からも相手にしてもらえず…
その日、片岡さんは都内の大きなターミナル駅を歩いていた。そこで目にしたのは大きなスーツケースをガラガラ転がしながら通行人に次々と英語で話しかける白人女性だった。
「最初はサラリーマンに英語で話しかけていたんですけど、彼は軽く会釈してサッと足早に去ってしまったんです。次に同世代くらいの中年女性に声をかけていました。しかし、英語が話せなかったようで『アイムソーリー、アイムソーリー!』と申し訳なさそうに退散しました。そんな様子が続き、白人女性は首をすくめてだんだんと険しい表情に。『あぁこれはストレスが溜まってるな』と見てすぐわかる感じでした」
◆善意で声をかけた駅員に対して…
堪忍袋の緒が切れそうな状態だからこそ、「君子危うきに近寄らず」でスルーされ続けていたのだろう。不憫に思った片岡さんは、何かできないかとその白人女性に近づいたそうだ。
「ちょうど私が声をかけようかと思ったタイミングで、若い駅員さんがやってきて女性に話しかけたんです。きっと困っている様子に気づいて善意で声をかけたんでしょうね。聞き耳を立ててみると、その女性はどうやら乗り換えの案内をしてほしかったみたいです。駅員さんの英語は片言でしたが、しどろもどろになりながらも一生懸命説明していました」
しかし、駅員のつたない説明は女性の苛立ちに拍車をかけたようだ。
「『Why!? Why no one speak English in this country!?(なんでこの国の人は英語が通じないわけ!?)』と女性は急にヒステリーモード全開に。甲高い声が駅構内に響きわたって場の空気が一瞬で凍りつきました。なんというか、日本人を下に見ているような感じで。駅員さんがかわいそうで見ていられませんでした」
◆高圧的な態度にげんなり
「英語は話せて当然でしょ!」と言わんばかりの高圧的な態度に片岡さんの親切心は吹き飛び、「やっぱやめとこう……」と静かに方向転換したという。
「ちょっとでも間違ったことを言ってしまったらトラブルになりそうだと思ったので、話しかけるのはやめました。大荷物で慣れない場所を移動してたら、ストレスが溜まってしまうのも無理はありませんけどね。それに、イントネーション的に英語が母国語じゃない感じもありましたし」
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異国の地では困り事が一つや二つは出てくるだろう。しかし、たとえ言葉が通じなかったとしても態度ひとつで人柄は相手に伝わってしまうもの。最低限の敬意や感謝があれば、誰かが助けてくれるかもしれないが、逆もまた然りである。
一方、親切にしようとして「災難に巻き込まれそうになる」という体験は誰にでも起こりうる話。だからこそ、「手を差し伸べる勇気」と「空気を察する能力」の両方が問われるのだろう。
<TEXT/おせりさん>
【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーとサウナ、ホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun