【インタビュー】ラミ・マレック、レイチェルへのオファーは緊張「チャンスを逃すわけにはいかなかった」

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2025年04月16日 17:01  cinemacafe.net

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ラミ・マレック&レイチェル・ブロズハナン/photo:You Ishii
映画『アマチュア』の主人公チャーリーはテロリストに妻の命を奪われ、復讐の旅に出る。CIAに勤務する分析官ではあるもののオフィス業務が中心で、銃を撃ったこともなければ、人を殺したこともない彼を駆り立てるのが亡き妻の存在だ。そんな夫婦の愛の物語を演じ、来日を果たしたラミ・マレックとレイチェル・ブロズナハンには共演以前から親交があったそう。

ラミ・マレックが『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー賞主演男優賞に輝いた年、レイチェル・ブロズナハンは「マーベラス・ミセス・メイゼル」でエミー賞ほか各ドラマ賞を席巻中。映画とドラマの両部門を有するゴールデン・グローブ賞では、揃って主演賞のトロフィーを手にしてもいる。穏やかで優しい空気の中、笑顔で冗談も言い合う2人の間には互いへの確かな敬意があった。

――アクションに彩られた『アマチュア』の根底には、胸を打つ愛の物語がありますね。

ラミ・マレック:実を言うと、僕は脚本の初稿と恋に落ちたわけではありませんでした。興味を引くものではあったけど、完璧ではなくて。でも、それが逆によかったと思う。プロデューサーとして、“何とかしたい!”と思わされたから。その後しばらくして脚本を練り直し始める中、目指したのはリアルで共感できるもの。アクション満載のスパイスリラーだから超現実的な表現も多いのだけど、僕は登場人物にとっての真実を大切にし、地に足のついた映画にしたかったんです。

レイチェル・ブロズナハン:私が読んだ脚本は、おそらくラミたちが改稿を重ねて完成したもの。脚本を読んで、私はチャーリーの物語に感動しました。一見すると、彼はスパイスリラーの主人公らしからぬキャラクター。でも、それが新鮮だったし、彼が心のまま繰り広げる悲しみの旅を追うのが大好きになりました。アクションをし、冒険をし、世界中を飛び回る…という、私たちがよく知る大きなパッケージの中に彼は放り込まれる。でも、私を含めた大勢が彼の旅の中に、自分自身や自分の経験を見出すことができると思います。

――プロデューサーでもあるラミが、妻役にレイチェルを望んだそうですね。

レイチェル・ブロズナハン:その時の写真があるでしょ。見た?

ラミ・マレック:見たよ(笑)。すごくおかしかった。僕らはチャリティイベントにいて…。

レイチェル・ブロズナハン:メットガラね。

ラミ・マレック:そうなんだけど、以前ジミー・ファロン(トーク番組の有名司会者)がメットガラを「チャリティイベント」と優雅に表現していて。だから、僕も彼の言い方を見習おうと思ったんだけど…。

レイチェル・ブロズナハン:ごめん(笑)。

ラミ・マレック:とにかく(笑)、僕はそこでレイチェルに声をかけました。人として、俳優として、彼女をずっと尊敬してきたから。でも、だからこそ(出演してほしいと)声をかける前は緊張して。気になる子に声をかけるのと一緒で、そういうときは不安になるでしょ? 断られるかもしれないし、断られたら傷つくし。だけど、聞いてみなければ「イエス」の返事はもらえない。二度とないかもしれないチャンスを逃すわけにはいかなかったんです。結果、こうして日本にも一緒に来られました(笑)。

レイチェル・ブロズナハン:ラミはそう話してくれるけど、私たち、「いつか一緒に仕事をしたいね」とは言っていたんです。私もラミを人として、俳優としてずっと尊敬してきたから。そもそも、1本の映画を作ること自体が奇跡的で素敵なこと。しかも、俳優がプロデューサーとなり、奇跡を担うなんてすごく大胆ですよね。プロジェクトについて監督や脚本家、自分以外の俳優と話をするなんて、考えただけでも緊張しちゃう(笑)。そんな彼の誘いを断る選択肢なんてなかったし、正直に言ってどんなオファーでも受けたと思います。この業界で最も才能があり、寛大で、親切な人が抱いている情熱の一部になりたかったから。

――『ナイト・ミュージアム』から『ボヘミアン・ラプソディ』、そして『アマチュア』まで、それにしてもラミは役の幅が広いですね。

ラミ・マレック:『ナイト・ミュージアム』は僕の初出演映画で…。

レイチェル・ブロズナハン:『ナイト・ミュージアム』が初出演映画なの!? すごい!

ラミ・マレック:(照れながら)そうなんだ。あの映画では、素晴らしいキャストと一緒に過ごすことができて。特に、ロビン・ウィリアムズからは生涯大事にすべき教訓をたくさん受け取りました。言ってしまえば、彼は僕のメンター。『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ(・マーキュリー)もそう。彼の人生を演じ、体現することで多くを教わりました。この『アマチュア』では、ローレンス・フィッシュバーン演じるヘンダーソンがチャーリーのメンターだし。そして、レイチェル。レイチェルも僕がこの作品で出会えたメンターです。

レイチェル・ブロズナハン:そう言ってくれて、すごくうれしい。

ラミ・マレック:だって、本当のことだから。撮影現場で、僕はレイチェルから多くを学びました。何気ない会話をしているときも、一緒に芝居をしているときも。レイチェルは多くのことに目を配りながらも冷静で、色々なものを背負っているのに気品があってエレガント。

レイチェル・ブロズナハン:あなたもエレガントだと思うけど?

ラミ・マレック:ありがとう(笑)。そうありたいと願っているよ。

――「マーベラス・ミセス・メイゼル」に、本作に、そして次回作の『スーパーマン』にと、レイチェルも素晴らしい作品との出会いが続きますね。

レイチェル・ブロズハナン:ありがたいなって思います。私自身、この仕事をする上では“同じことを繰り返さない。そして、同じアプローチを取らない”を心掛けていて。それで言うと、私はラミが今回プロデュースもしていることに心から感銘を受けたんです。映画のプロデュースは初めてでしょう?

ラミ・マレック:うん。

レイチェル・ブロズナハン:そうやって新しいことに挑戦し、自分の情熱を勇敢に形にしていくラミの姿を間近で見ていて刺激を受けました。しかも、彼は型にはまらない。さまざまな役柄に全身全霊で臨み、それぞれ100%異なるものとして体現してきたと思うんです。そもそも俳優はそうあるべきだけど、誰にでもできるわけではないから。

ラミ・マレック:君こそ型にはまっていないと思うけど。以前、なんて言われたんだっけ?

レイチェル・ブロズナハン:「She can't do comedy.(彼女にコメディはできない。)」(笑)。

ラミ・マレック:笑っちゃうよね。信じられないよ。そう言われた後、レイチェルは(「マーベラス・ミセス・メイゼル」で)素晴らしいコメディアンの役を何年も演じ続けたのだから。こうしてプレスツアーを一緒に回っている中でも、感じるのは彼女のユーモア。カリスマ性があって、ウィットに富んでいて、最高なんです。でも、僕らの業界はとかく型にはめてしまいがち。人には色々な可能性があるのに。実際、この映画でレイチェルはまた、メイゼルとは違う顔を見せています。話していて気づいたけど、この問題って『アマチュア』のテーマにもつながりますね。チャーリーも人から「できない」と決めつけられたことをやり遂げますから!







(text:Hikaru Watanabe/photo:You Ishii)

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