【漫画】年齢が離れた姉、久しぶりに会った印象は？　姉妹の絶妙な距離感を描く『ちかいうちにね。』

　20歳になった主人公・菜乃香のもとに、幼い頃に別れた姉・真知子から連絡が届く。久しぶりに逢うこととなった姉妹を描いた漫画『ちかいうちにね。』がpixivに投稿された。

　たわいない話で盛り上がる菜乃香と真知子であるが、彼女たちの父親はそれぞれ異なる人物であった。それぞれの道へと進もうとする2人にとって、人生の節目とも言える1日が描かれる作品だ。

　菜乃香と真知子の会話が展開されるなか、2人がそれぞれに何を考えていたのかと想像を膨らませてしまう本作。彼女たちの背景、執筆するなかで意識したことなど、作者の盆踊あきらさんに話を聞いた。（あんどうまこと）

参考：【漫画】『ちかいうちにね。』を読む

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

盆踊あきら（以下、盆踊）：「もしも自分の作品が実写化したら、この俳優さんたちを起用したい」と想像することが好きで。本作もとある俳優さんたちの掛け合いを想像し、描いた作品でした。

　現実によくいそうな姉妹の日常を描いた漫画を投稿しているのですが、本作ではその姉妹と対照的な人物たちを描きたいと思いました。そのため父親が異なっていたり、年齢が離れている姉妹といった設定で作品を描きました。

ーー妹・菜乃香の方が社会人っぽく、姉・真知子の方が幼いように見えたりなど、少し変わった姉妹だと感じました。

盆踊：そうですね。私は恐らく良い家庭環境で過ごしてきたと思うのですが、出会う人たちは必ずしも自分と同じような境遇ではなくて。でも、その人たちは家族のことを悲観しているのではなく「私にとってはこれが普通だし」と言うことが多かったです。

　どんな人でも「なんでこんな家庭に生まれたのか」と思うことはあると思いますが、　人生を楽しく過ごすためにも「それぞれの普通があっていいよね」「こういう普通もいいんじゃない」と考えながら本作を描きました。

ーー姉妹の2人を描くなかで意識したことは？

盆踊：姉の真知子は、小さい頃に大人にならざるを得なかったお姉ちゃんであることを意識しました。そのため親元を離れてからはお腹を出した格好をしたり、髪型をオシャレにしたりなど、人の目をあまり気にしなくなったのだと思います。

　小さい頃にちょっと会っただけの妹と再会することになり「大人しかったお姉ちゃんがすごく明るくなっているぞ」と見せたかったとか「自分のようにあなたも自由に生きられますよ」と伝えたい、みたいな感じでしょうか。

　妹の菜乃香はお姉ちゃんがいなくなったりなど、いつかまた家族がバラバラになってしまうことを恐れて大人しく育ったのだと思います。就職活動をしていたこともあり、社会人としてスタンダードな格好をした、これから新生活がはじまる人物として描きました。

ーー姉・真知子が「顔くらい見せておこうと思って…／最後にさ」と話したり、妹・菜乃香が「私もね、（実家から荷物を）全部引き上げてくるつもりなんだ」と話したりなど、2人には共通する思いがあるように感じました。

盆踊：真知子は就職先を決めて、家族から逃げるように一人暮らしをはじめた。菜乃香が家を出ることもあり、もう家族4人で集まることはあまりないんじゃないかと思っているーー。だからこそ妹の引っ越しに便乗して「私は元気だから、もう逢わないよ」と恥ずかしがらずに言えるかなと考えていたのだと思います。

　菜乃香もお母さんとお父さんを2人きりにしてあげようと思いつつ、少しだけ疎外感があって。だからこそ姉に引っ越し先を話し、タイトルの通り「ちかいうちに、逢いましょう」と伝えたかった、といった感じです。

ーー序盤では姉・真知子が車を運転しつつ、終盤では妹・菜乃香が運転し、真知子は助手席に乗りました。

盆踊：助手席に乗ることには特別感があると思います。3人以上いたら誰かが後ろの席に乗らなきゃいけないし、1人ならば自分で運転しなければいけませんし……。真知子は友だちと遊ぶときも自分が率先してハンドルを握るような人なので、彼女にとって助手席に座ることはちょっと特別なものでした。

　菜乃香も車に乗るときはいつもお母さんとお父さんが前の席に座るから、助手席や運転席にほとんど乗ったことがないと思います。

ーー印象に残っているシーンは？

盆踊：終盤の運転シーンです。菜乃香が運転する姿を見て、真知子が妹の成長を実感しつつ、妹が免許を取れる年齢になるまで逢っていなかったんだと考えていたのだと思います。助手席に座りながら。

（文・取材=あんどうまこと）