※写真はイメージです。 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、“足が触れてしまった”ことでトラブルになったという2人のエピソードを紹介する。
◆足がほんの少し触れただけなのに…
鈴木隼人さん(仮名・30代)は、帰宅ラッシュ時、身動きひとつとれない満員電車に乗っていた。
「私はいつものように吊り革に片手でつかまりながら、なるべく周りに迷惑をかけないように身体のバランスを保っていました」
鈴木さんの目の前の席には、60代くらいのサングラス姿の男性が座っていたという。男性は、やけに足を広げていたそうだ。
「正直、満員電車でその座り方はどうなんだろうと思いました」
しかし、電車がカーブにさしかかり“ガクン”と揺れた瞬間……鈴木さんの足先がその男性の足に軽く触れてしまったのだ。
ただし、満員電車では日常茶飯事のため気にせずにしていたのだが、突然男性が立ち上がり大声で怒鳴りつけてきた。
「おまえ! 何足ぶつけてんだよ!」
「私はイヤホンをしていたので、一瞬何が起こったのか理解できなかったんです。足がほんの少し触れただけでしたし、ワザとではありませんでした」
男性は、鈴木さんを“犯罪者を見るような目”で睨みつけてきたという。そして、鈴木さんは思い切って、「何ですか?」と聞いた。
◆何も言い返せなかった自分に腹が立った
「ぶつけたなら謝るのが普通だろうが!」
男性は、さらに怒りをぶつけてきたのだとか。
「私は仕方なく、『すいません』と言ったんですが、男性が納得する様子はなく、ブツブツと文句を言い続けていました」
鈴木さんは次第に、心の奥底から怒りが込み上げてきた。
“満員電車で足を広げて座っているのはそっちだろうが! こっちは立ってバランスとるだけでも必死なんですよ。サングラスして偉そうに座っているけど、自分の態度は棚に上げて、ちょっと触れたくらいで人を怒鳴りつけるな!”
「もちろん声には出せませんでした。何も言い返せなかった自分にも腹が立ちまたね」
一瞬の出来事だったが、思い出す度に“ムカつく”のだという。
「あの男、今頃また誰かに迷惑をかけてるんじゃないでしょうか……」
◆謝ったのに“仕返し”してくる男性
仕事を終えた夜の10時過ぎ、高梨裕太さん(仮名・40代)は“早く帰りたい”と思いながら電車に乗っていた。
「時間帯的に電車はそこそこ混んでいて、立っている人もかなりいました。私も吊り革にぶら下がっていました」
その時、電車が揺れ、高梨さんの足先が前の座席に座っていた人に“軽く”当たってしまったようだ。
「座っていたのは50代くらいのサラリーマンでした。とっさに『あ、すみません』と言ったんですが、予想外の反応が返ってきたんです」
男性はいきなり、高梨さんの足のすねを思いっきり蹴り返してきたという。
「何が起きたのかわからなくて驚きました。すぐに、“いや、さすがに何だそれ!”と思いましたね。わざとじゃないんだし、そんなに強く蹴られる筋合いもありません」
高梨さんはもう一度、「すみません」と謝ったのだが……。
◆“ムカつき”が収まらない
「男性は無表情のままスマホに夢中で、私のことなんてまったく気にしていませんでした。無視されている感じが余計にイラっとしました」
高梨さんが謝っているにもかかわらず、蹴り返してくることは理不尽すぎる。男性の態度が余計に腹立たしく思えたという。
その場にいることが億劫になった高梨さんは、次の駅でいったん電車を降りることにした。
「正直、あのまま電車に乗り続けていたら“ムカつき”が収まらないと思ったので」
自宅の最寄り駅に着き、おいしいラーメンをお腹いっぱいに食べて帰ったという高梨さん。
「少しだけ幸せな気持ちになりました」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。