
『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(越川慎司著)では、世界水準のエリートであるエグゼクティブたちの働き方や「休日」に対する考え方、過ごし方についてお伝えしています。
今回は本書から一部抜粋し、コロナ禍が日本の企業に与えた深刻な「後遺症」について事例を交えてご紹介します。あなたがなかなか休めないのはこの「後遺症」のせいかもしれません。
有給休暇をちゃんと取れていますか?
コロナ禍は、ビジネスパーソンの仕事や働き方に多大な影響を及ぼしましたが、その余波は、日本の各企業に「後遺症」のように蔓延しています。その代表的な事例には、次のような三つがあります。
|
|
【後遺症1】リモートワークの普及で「隠れ残業」が増加
コロナ禍によって、日本企業では不可能と考えられていたリモートワークが飛躍的に浸透しましたが、その普及に伴って、思わぬ弊害が起こっています。在宅勤務が増えたことで、通勤時間はカットできましたが、自宅で仕事をしているとオンとオフの線引きが難しくなり、上司から「早く帰れ」と言われることもないため、「隠れ残業」が増えているのです。
隠れ残業とは、会社に残業の報告をせず、出勤打刻をする前や退勤打刻をした後に仕事をすることで、別名「ステルス残業」と呼ばれています。
弊社が日本のビジネスパーソン7659人を対象に実施した調査では、リモートワークの導入によって、平均で「17%」も働く時間が増えています。
土日の休日に仕事のメールやチャットを確認したり、調べものをすることも隠れ残業ですから、現代のビジネスパーソンの労働時間は確実に長くなる傾向にあります。
|
|
【後遺症2】コロナ前よりも忙しくなって、体調を崩す人が急増中
コロナ禍によるビジネスの抑制が一段落した段階で、今度は深刻な人手不足とインフレに見舞われたことによって、現在は多くのビジネスパーソンがコロナ前よりも多忙な毎日を余儀なくされています。仕事の忙しさに伴う疲労やストレス、リモートワークによる孤立化などが原因となって、メンタルをやられたり、体調を崩すビジネスパーソンが増えています。
【後遺症3】緊急事態宣言の影響で有給休暇を取らない人が続出
有給休暇の取得率が「56.6%」と低迷している背景には、コロナ禍も深く関係しています。決定的な要因は、2020年4月から2021年9月まで、計4回にわたって長期的に発出された「緊急事態宣言」です。
有給休暇は夏季休暇や年末年始休暇の前後に取得する人が多い傾向にありますが、緊急事態宣言下では、不要不急の外出を控える必要があったため、家族で旅行に行ったり、実家に帰省することができず、有給休暇を取らない人が多かったのです。
|
|
こうしたコロナ禍の後遺症が発端となって、オーバーワーク(働き過ぎ)になっていないか、日ごろの働き方を冷静に見つめ直す必要があります。
越川慎司 プロフィール
株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社に勤務した後、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの事業責任者を歴任する。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。京都大学など教育機関で講師を務める他、企業や団体のアドバイザーを務める。(文:越川 慎司)