朝ドラ『おむすび』が史上最低視聴率に…業界人が「そもそもヒットは期待できなかった」と語るワケ

0

2025年04月19日 09:21  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

橋本環奈 公式Instagramより
数々のムーブメントを起こしてきた“朝ドラ”こと「連続テレビ小説」シリーズ。
90年代後半にやや低迷期があったが、‘10年以降は20%近い高視聴率をマークする作品が続き、大きな話題を振りまいてきた。

昨年放送された『虎に翼』は期間平均視聴率こそ16.8%だったが、新語・流行語大賞に同作の名ゼリフ“はて?”がノミネートされたほか、テレビ業界の各賞を総なめするなど視聴者の満足度が高い作品だった。

だが、3月28日で最終回を迎えた『おむすび』(全125話)は、期間平均世帯視聴率が13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、朝ドラ史上最低の視聴率を更新してしまったのだ。

国民的知名度を持つ橋本環奈が主演を務めながらにして、不名誉な数字を叩き出してしまった理由を業界関係者たちに聞いた。

◆「史実に基づいた時代もの」というイメージ定着が一因

在京テレビ局でドラマのプロデューサーを担当する50代男性のA氏はこう語る。

「作品の良し悪し以前に、朝ドラが “史実に基づいた女性の半生を描く時代もの”というイメージが定着しすぎたことは大きく影響しているでしょうね。

近年も『おかえりモネ』や『舞いあがれ!』といった現代劇は評価が分かれてしまった。メインの視聴者である中高年層に刺さらない時代設定だったので、当初から高い数字は見込めないとは思っていました」

現代(平成以降)をテーマにしていたことで、そもそもヒットが期待できた作品ではないとフォローはしたものの、A氏は“大コケ”した理由についても熱く語った。

◆平成ギャル文化の掘り下げが甘かった

「“平成”を舞台にしてギャル文化を描いたことは面白そうだと思っていたのですが、ギャル文化の掘り下げが甘く、ギャルたちのポジティブな要素しか描かれていなかったことが残念でした。

SNSでも同じような意見を多く見ましたね。もっとギャルになる若者の本質や心境に迫れば、深いテーマを描けたと思いました。

ストーリー面でも展開がゆっくりすぎて、話が進まないもどかしさがあった。

脚本は『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ系)や『パリピ孔明』(フジテレビ系)、『正直不動産』(NHK)などのヒットドラマを作ってきた根本ノンジさんだったのですが、彼の魅力は日常生活での軽妙な会話劇や突飛なキャラクター。

同作では突飛な登場人物はあまり登場しませんでしたが、緩い会話劇は多くありました。しかし、そんな根本さんの真骨頂が朝ドラではあまり活きていなかった印象。朝ドラは話の展開が異常に早く、飽きさせない作りになっている。

新たな試みとして会話の面白さに焦点を当てたことが、朝ドラ視聴者を離れさせてしまった理由だと思います」

◆母親役の演技に入り込めなかった橋本環奈

また、橋本環奈の演技力についてもA氏は指摘した。

「橋本環奈さんは朝ドラのヒロインらしいピュアさや真っすぐなキャラクター像をよく把握して、好感の持てる演技をしていたと思います。

ただし、それは序盤から中盤にかけてまでの話。娘が生まれた母親役になってからも口調やセリフ回しに変化が見られず、感情移入がしにくいところが多々あった。橋本さんとしても初挑戦に近い母親役だったので難しかったとは思いますが、それにしても演技が稚拙だったかと……」

また、キャスティングなどを務める制作会社の女性プロデューサー・B氏は、同作の不可解な数週間について疑問を呈した。

「年明け放送の16週と17週の2週間にわたって、橋本環奈さん演じる米田結が登場しなかった点が気になりました。

この2週だけメインが仲里依紗さん演じる結の姉・歩のエピソードになっていたんです。エピソード自体は、ギャル文化や多様性を絡めた話で見応えはあったのですが、さすがに『結はどうなっているの?』と思い、冷めてしまいましたね。

細かいキャスティングの事情までは分かりませんが、秋ごろに映画『キングダム』の撮影があったという話は聞きました。もしかすると橋本さんの多忙なスケジュールを前提に、サブストーリーを入れなければならない状況だったとするとガッカリです」

◆朝ドラの醍醐味・サブキャラが跳ねず……

また、深夜ドラマの脚本を手掛ける女性脚本家・C氏にも話を聞いた。

「朝ドラといえばヒロインはもちろんですが、愛されるサブキャラの存在も欠かせないと思っています。『おむすび』ではそういった朝ドラ好きをくすぐるサブキャラクターの深堀りが薄かったこともヒットしなかった理由だと思っています。

『あまちゃん』ではヒロイン・アキの母・春子の青春時代を演じた有村架純さん、『あさが来た』ではヒロイン・あさと対立する千代を演じた小芝風花さん、『虎に翼』ではヒロイン・寅子の同窓生で男装をしたよねを演じた土居志央梨さんが魅力的でした。

『おむすび』では、専門学校の同級生・沙智を演じた山本舞香さんが繊細な演技をしていて惹かれていましたが、登場が少なすぎましたね……」

『おむすび』が最低視聴率をマークした理由を、業界関係者はこのように見ていたようだが、テレビ離れが叫ばれる時代で、13.1%はとんでもない数字であることも忘れてはいけない――。

現在放送中の『あんぱん』とともに、アーカイブ配信などで『おむすび』も改めて見直してみるのもよいかもしれない。

<ライター/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

    ニュース設定