
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。母親が娘を誘拐!? いびつなふたりのデコボコ逃避行!
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『KIDDO キドー』評点:★4点(5点満点)
爽やかでちょっと切ない母娘の「ニューシネマ」
うまく「母親」をやることができない若いシングルマザーと、11歳の娘による、小さな逃走と小さな冒険を描いたロードムービーである。
お母さんがうまくできないのは「母親」だけではない。『俺たちに明日はない』のボニーとクライドのような奔放な生き様を渇望する一方、世間との折り合いは悪く、いろいろ苦労してきたことが示唆される。
が、そういう苦労話で安易なお涙頂戴に走るようなことを一切しないところに本作の美点はある。娘の方は「できたらもうちょっと『普通の』お母さんがいいな」と思っているようだが、それでもこの一風変わったお母さんと突発的な行動を共にすることを楽しんでもいる。
お母さんは長年離れ離れになっていた娘をオランダの養護施設から連れ出して、一路ポーランドの実家へと向かう。実家に大金が隠してあるというのだ。それはお母さんと娘にとっての未来の希望である。
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母娘はもちろんアメリカン・ニューシネマのように銀行強盗や殺人をするわけではないが、あるのか分からない未来の希望に向かって駆け抜けるさまは共通している。
往年のフィルムのルックを見事に再現した色味も美しく、爽やかでちょっとだけ切ないエンディングも良い。
STORY:児童養護施設で暮らす少女ルーのもとに、離れ離れだった母親のカリーナが突然現れる。自称ハリウッドスターのカリーナは、「ポーランドのおばあちゃんのところへ行く」と、再会を喜ぶルーを勝手に施設から連れ出してしまう
監督:ザラ・ドヴィンガー
出演:ローザ・ファン・レーウェン、フリーダ・バーンハード、マクシミリアン・ルドニツキ、リディア・サドウカほか
上映時間:91分
全国公開中
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