
女性に対するAED(自動体外式除細動器)の使用などをめぐってSNS上で沸いた議論に一石を投じたアイドルの投稿が、X(旧Twitter)で話題になりました。
投稿したのは、事故で脊髄を損傷して車いすで活動している女性アイドルユニット「仮面女子」のメンバー・猪狩ともかさん。投稿によると、今月4日に札幌市内の駐車場で体調不良で休んでいた10代の女性に「大丈夫ですか」などと声を掛け体を触ってわいせつな行為に及ぼうとしたという男が、3日後に警察署に出頭し不同意わいせつ未遂の疑いで逮捕された事件をめぐり、SNS上で女性に対してAEDの使用した場合も被害を訴えられるリスクがあるのではないかと議論が沸きました。
その中で、ともかさんは「女性が倒れていても助けるな!」「女性にAEDを使うのはリスク高いから放置」といった声を目にして「悲しい」と気持ちを吐露。さらに命の重みをこう訴えています。
「AEDではありませんが私は脊髄損傷の事故に遭った際、男性に看板の下敷き状態から助けていただき、とても感謝しています。もしその男性が上記(『女性が倒れていても助けるな!』『性にAEDを使うのはリスク高いから放置』)のような考えの持ち主でしたら、私は放置されて今生きていなかったかもしれません。
『触るな!』と言っている一部の女性の意見も正直理解できません。
その言葉が多少なりとも、貴方以外の女性の命を危機に晒していることに気付けないのでしょうか?
命の危機にそんなこと気にしていられなくないですか?
命の危機に陥ったことが無いから、そういう言葉が出て来るのかと思います。
私が命の危機にあった時、男性に触られたら恥ずかしいとか、下着を見られたら恥ずかしいなんて頭の片隅にもなかったです。
ただ今の苦しみから救ってほしいということだけでした」
|
|
「救命活動が誰でもリスクなく行える世の中になるよう自分の考えを発信していきたい」
ともかさんは2018年4月、東京都文京区の湯島聖堂の敷地内にあった木製の看板が強風にあおられ倒れてきて、下敷きに。事故に遭った際、通り掛かった男性に助けられました。その後、救急車で運ばれて手術を受けましたが、脊髄損傷となり、車いす生活を余儀なくされたのです。しかしアイドル仲間やファンらに励まされ、車いすに乗っていても夢をかなえられるはずとリハビリを頑張り、奇跡的にも事故から4カ月後にステージに戻ることができました。ともかさんは過去に命の危機から男性に助けられた経験があるからこそ、男性の救命活動にストップさせてしまうことを懸念し、Xで声を上げたといいます。
「救命活動をする男性の人権も、女性の安全ももちろん大切です。同等に命も尊いものなので、助けられる命が助からないことはあってはいけないと思い、発信しました。特にごく一部の女性の過敏な攻撃的な反応が、男性の救命活動を萎縮させているところもあると思いますので同性としてメッセージを発信していきたいです」
またAEDの使用についても持論をつぶやきました。
「AED論争は“男性に触られたくない女性”と、“そういう女性を救助した場合社会的・刑事的にリスクを負ってしまうことを恐れる男性”の対立から起きていると考えています。確かに助けるフリをして性加害をする男性、助けてもらった人に対して後になって怒りを現す女性がいるのも事実ではありますが、それは一部の人間です。そういうことをする人がおかしいに決まっています。一例で男性はそういう生き物、女性はそういう生き物と決めつけてはいけないと思うのです。
このほか『もう遅い』などのご意見もいただきました。私は遅いことなどないと信じています。発信することで救える命が失われる可能性を少しでも減らしていけるのなら、救命活動が誰でもリスクなく行える世の中になるよう自分の考えを発信していきたいです。どんな議論が巻き起ころうと私は命は何より尊いし優先されるものだと思います。助けを必要としている人がいたら男性でも女性でも関係なく助ける、そんな世の中であってほしいです。今振り返ると、私は死んでいたかもしれません…男性の救護活動によって新たに生きるチャンスをいただきました。この命を自分のためだけではなく、社会貢献や私以外のために使っていくことが使命だと思っています。これからもAED問題について発信し続けます」
|
|
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)