YouTube3000万再生 51歳でソロメジャーデビュー 韓国でブレークした歌心りえ

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2025年04月21日 07:21  日刊スポーツ

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ソロメジャーデビューを果たした歌心りえ(撮影・鈴木みどり)

<情報最前線:エンタメ 音楽>



韓国の音楽番組から人気に火が付いた歌心りえ(51)が4月2日にソロでメジャーデビューした。


カバーアルバム「SONGS」をビクター、「HEARTS」をエイベックスから発売。2つのレコード会社から同時デビューするのは史上初という。「日本語曲を日本語で歌う日本人」として今、韓国で最もホットな歌姫に思いを聞いた。【取材・構成=松本久】


■30年目の節目


今年は昭和100年で日韓国交正常化60周年という節目の年だ。「このタイミングにアルバムを作ることで日本のすばらしい歌を歌い継ぐことができる。もう感謝しかないです。昨年にお話があった時には、素直に『やらせてください』と言いました。私は95年にデビューをしていて、その時は直径8センチの短冊形のCDを出していたんです。それが30年の節目に『歌心りえ』としてメジャーデビューができる。まったく想像していなかったのですごくうれしい。奇跡でしかないって思います」。


レコード会社によると、2社からの同時デビューは史上初だ。「それもビクターさんとエイベックスさんという組み合わせがユニークじゃないですか。2社からお話をいただきましたが、まさか同時にとは思わなかったのでびっくりしています。そして本当にありがたいです」。


ビクターから発売するのが「SONGS」、エイベックスからが「HEARTS」。それぞれ12曲を収録している。「普段から歌っている曲でも、レコーディングの当日に『えっ、そんなんでしたっけ』みたいなやりとりもありました」と振り返る。特に難しかったのが五輪真弓の「恋人よ」だった。「メロディー作りが実に巧妙でリズムが本当に難しい。曲を聴いている分にはサラッと気持ち良いのですが、裏のリズムの取り方が非常に複雑なんです」。


歌心の特徴は、伸びやかな歌声に乗って歌詞がスーッと心に届いてくること。このことを松崎しげる(75)はかつて「景色が見える」と評した。「曲のイメージや映像が見えていないと、聴いている人にも届かないんじゃないかなと思っているんです。ただ、それは同じ映像でなくても構わない。聴く人それぞれの思い出が反映されればいいんです。そして言葉って感情を伝える1つのツールだから、会話をしている感じでキャッチボールのできる歌を歌っていきたい」。


■声帯2回壊す


3人組ユニット「Letit go」のボーカルとして21歳でデビューをして30年。この間には歌をやめようと思ったこともある。19年と22年の2回、声帯を壊した時がそうだった。「特に22年には医師から『ひそひそ声ものどに悪いので筆談をしてください』と言われて人前で歌うのがすごく怖くなった。メンタル的にすごく弱くなってしまって『もういいです。歌以外の違うことを探します』みたいな思いになりました」。弱気になった歌心の背中を押してくれたのが、かつての音楽仲間で08年に結婚をした夫(55)だった。「ずっと見守ってくれていた主人が『いいかげん、歌ってみたらどう』『あなたには歌しかないでしょ』と言ってくれたんです。それで、ちょっとずつ歌い始めました」。


それまでは力を込めてパワフルに歌唱していたが、のどに負担をかけないために柔らかさを意識するように。出力を抑えたことで余裕が生まれ、歌唱テクニックに磨きがかかった。今となっては“けがの功名”と言えるかもしれない。


■歴史が動いた


歌心がブレークしたのは昨年だった。オーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」で準優勝し、韓国の音楽番組「韓日歌王戦」「韓日トップテンショー」などに相次いで出演。圧倒的なボーカル力と表現力が注目され、放送局の公式YouTubeでは「雪の華」のカバーが1000万、「道化師のソネット」が880万回再生を記録。「歌心りえ」としては3000万回を突破した。歌唱の際、テレビ画面に日本語と韓国語の歌詞が並んで流れたことが異例で、日韓の音楽文化の交流・親交の象徴的な出来事としても大きな話題を呼んだ。「韓国のお茶の間のテレビで日本人が日本語の曲を歌ったことで、中高年の人が『えっ!?』と画面を2度見したというコメントもSNSにあって。その時に、本当に歴史的にすごいことが起こったんだなって思いました」。


その勢いのまま、今年2月22日には韓国で初のソロコンサートを開催。「大成功と言っていいと思います」。公演中、地元ファンの優しさに触れるシーンもあった。「歌っている時に、急に低域の声が出なくなってしまって。と思ったら、お客さんが一緒に歌ってくれたんですよ。『ケンチャナヨ』(韓国語で「大丈夫」の意)って声も掛けてくれて。本当に申し訳ないと思って泣きそうになりながら最後まで歌いきった感じでした。感謝しかないです」。今年に入って韓国語教室に通い始めたが、多忙で行けなくなった。そこで今は語学アプリ「デュオリンゴ」でレッスンに励んでいる。「韓国ドラマを見ていて、知っている単語が出てきたら『それ、知ってる』とすごくうれしくなります」。


■紅白出場は夢


今後はこれまでになく多忙になる。初の国内ツアー開催が決まり、アジアツアーの計画もある。年末のNHK紅白歌合戦への初出場を熱望するファンの声もSNSにあふれている。「紅白はもともと、夢の夢の夢のところにずっとありました。もし、そこに近づいているのならすごくうれしいです。もし出場できるなら、故郷の栃木県に錦を飾ることもできるのかなと思っています」と笑顔で続けた。


座右の銘はエスペラント語で「movado」(「たゆまざる前進」の意味)。「この言葉を見つけた時から、ずっと自分の心に置いています。自分なりの全身の力で、歩みの早さで、前進をしていけたらと思います」。


大好きな歌の世界で、たゆまざる前進を続けてつかんだ遅咲きのソロメジャーデビュー。「これまでと同じように、これからも誰かの心に寄り添える歌を歌っていきたい」。芸名「歌心りえ」は「歌は心」との信念からつけた。その思いを胸に、これからも人の心を揺さぶる歌を届け続ける。


■地元から全国ツアー開始


歌心はアルバム発売を記念したツアー「SONGS&HEARTS」を6月14日に出身地・栃木県の宇都宮文化会館でスタートさせる。同25日に東京・世田谷区民会館で行う公演は「バースデー&活動30周年記念」として実施し、9月の兵庫公演まで全8公演を開催する。「初の全国ツアーですごく楽しみです。きちんと健康を管理して、1個1個の公演に臨みたい」と話している。


◆歌心(うたごころ)りえ 1973年(昭48)6月30日、栃木県那須塩原市生まれ。95年に3人組ユニット「Letit go」のボーカルとしてデビュー。「200倍の夢」がポカリスエットのCM曲に起用される。その後はグループやソロとして活動。十数年前から「歌心りえ」の芸名に。24年にオーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」で準優勝。同年フジテレビ系「千鳥の鬼レンチャン」で10連チャン達成。家族は夫と長女(10)。

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