※写真はイメージです。 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。通勤や通学の時間帯は非常に混雑するが、そこで腹が立った経験がある人も少なくないだろう。
◆「電車内に頭の悪そうなギャルがいる」にカチンときて
学生時代に電車通学をしていた中山なつみさん(仮名)は、派手な見た目のせいでたびたび理不尽な目に遭ってきた。
「世間には“ギャル=バカ”みたいなステレオタイプの人が多くて。ぶつかりおじさんに狙われたり、座っているだけで『まだ若いのに』とか、舞浜駅で降りなかったら『ディズニーじゃないのかよ!』って嫌味を言われたり……(苦笑)」
しかし、ある日の出来事は、彼女の限界を超えるものだった。
「友達と食事をして帰宅中の電車で壁にもたれていると、私のすぐ隣に40代くらいの仕事帰り風の女性がいて、チラチラこちらを見ながらスマホをいじっていることに気がつきました」
その女性のスマホの角度から、つい画面に目をやってしまった中山さん。なんと、LINEのトークには衝撃的な文章が書かれていた。
<電車内に頭の悪そうなギャルがいるんだけど笑。派手な格好してバカ丸出しだよね!バカがうつらなければいいけど笑>
ワケがわからず、一瞬時が止まったという。
「自分は好きでギャルやってるので、ここまで侮辱されるとさすがにスルーできないと思って」
◆相手にさりげなく“仕返し”
そして、すぐに反撃の策を思いついた。
「“偏見がどれだけダサいか見せてやる”と思った私は、トリリンガルの友人に電話して、英語・フランス語・日本語を織り交ぜながら会話を始めました」
三カ国語を駆使する中山さんの姿を目の当たりにした女性は、気まずそうにスマホを閉じてそっぽを向いたという。
「ふと彼女のバッグに目をやると、英語の学習本が見えたんです。劣等感もあったかもしれません」
じつは中山さんは、幼少期から英才教育を受けてきたそうだ。
「昔から派手な見た目で判断されることも多いので、そのぶん猛勉強してきたというのがあります。いろいろありますが、やっぱり好きな格好をしたいので」
とはいえ、電車内での通話は“マナー違反”であることは付け足しておきたい……。
◆荷物で席を確保して「そこ、俺の席なんだけど」
通勤ラッシュ時の電車内。疲れを感じるなか、空席を見つけたときの喜びは、まさに“砂漠でオアシス発見!”みたいなものだろう。
佐々木香織さん(仮名・20代)は、仕事帰りに電車に乗り込むと、その時間帯ではめずらしく空席を見つけた。しかし、「ラッキー」と思ったのも束の間、その席には紙袋が無造作に置かれていたという。
「周囲の人もそこには座ろうとはせず、遠巻きに見ているだけでした。ただ、持ち主は見当たらず、少し躊躇したものの、荷物を横によけて席に座りました」
その直後……。
30代くらいの男性が近寄ってきて「そこ、俺の席なんだけど」と、当然のように席を要求してきたのだ。
佐々木さんは内心煮えくり返りながらも、口論を避けるために「そうですか」と言って、おとなしく席を譲ってしまった。
◆頭の中で“復讐シミュレーション”
席を譲った後、男性は紙袋を横に置いたまま、何食わぬ顔でスマホをいじっている。
佐々木さんは重たい足でそこに立っていたが、頭の中にはさまざまな思いが渦巻いていた。
「いやいや、そこは自由席で指定席じゃないし。何より、電車は混んでいるのに荷物だけ置いて席取りしてるなんて、自己中心的すぎるでしょう」
「紙袋を外に投げ捨ててやればよかった」
「こいつの足をヒールで踏みつけてやろうか」
“復讐シミュレーション”をしていたというが、「やっぱりやらなくてよかった」と思い返した。
「大人になるって、怒りを飲み込むことなのかもしれないって」
このように腹が立つような出来事に遭遇しても、実際は何も言えない人がほとんどなのである(泣)。
<取材・文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
企画、取材、撮影、執筆、対談構成、原稿整理、コンサル、現場サポート、コンビニへの買い出し、芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズ(辰巳出版)ほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo