政府は、米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入拡大について本格的な検討に入った。トランプ米政権の関税措置見直しを巡る日米交渉では、米側が求める日本の貿易黒字削減に向け、どのような具体策を打ち出すかが焦点。対米黒字の圧縮に直結するLNGの輸入拡大は、日本にとって有力な交渉カードになり得るとみている。
日本は2024年に米国から5426億円のLNGを輸入。国別ではオーストラリア、マレーシア、ロシアに次ぐ4位で、シェアは8.7%だった。ロシアからも依然として5481億円を輸入しているが、同国のウクライナ侵攻で供給途絶のリスクが鮮明となり、エネルギー安全保障の観点から調達先の分散が課題となっている。
日米両国は2月の首脳会談で、日本が米国産LNGの輸入を増やすことで合意。石破茂首相は今月20日のNHK番組でも「(米のシェアを)高めていくことはあり得る」との考えを示した。
日本側は価格などの条件を踏まえて詳細を詰める。民間の契約では「長期安定調達が担保されるかが重要」(エネルギー大手)とされる。唐突な高関税の賦課といった政策の不確実性を取り除くべく、交渉で働き掛けていく可能性がある。
ただ、日本の対米黒字は24年に8兆6281億円と巨額で、LNG輸入の拡大だけで解消するのは難しい。日本は非関税障壁の是正なども含むパッケージを米側に提示し、相互関税や自動車などへの追加関税の適用除外を求める考えだ。
一方、トランプ大統領は、米アラスカ州のLNG開発事業を日米共同で進めることに意欲を示している。3月に議会演説で「日本、韓国などが巨額の投資を望んでいる」とも発言した。実現すれば、中米のパナマ運河を経由する現行ルートに比べてLNGの輸送日数短縮や輸送費削減につながる可能性はある。
ただ、同事業は同州北部から南部まで約1300キロのパイプラインを整備するという壮大な構想。電気事業連合会の林欣吾会長は「コストなどが全然分からない。どういう条件があるのか評価していく必要がある」と指摘する。「計画の実現可能性を精査するべきだ」(経済官庁幹部)との声は強く、日本側は関与の在り方を慎重に検討していく構えだ。