中山美穂さんを偲んだ岩井俊二氏(C)ORICON NewS inc. 昨年12月6日に亡くなった歌手で俳優の中山美穂さん(享年54)のお別れ会が22日、都内でしめやかに営まれた。中山さんが主演を務めた映画『Love Letter』でメガホンをとった岩井俊二監督が弔辞を読み、式終了後の囲み取材で中山さんへの思いを語った。
【写真】大きな中山美穂さんの写真も…涙ながらに語った中山忍 弔辞で、岩井監督は「悲しみというには実感が伴わず、その現実をなかなか認めきれず、そうするうちにある境地に向かっています」と複雑な心境を吐露。当時を振り返り、映画出演を依頼した当時を振り返り、中山さんを訪ねた段階では、天真爛漫な女性と心の傷を抱えた女性という1人2役について「心の傷を抱えた女性という姿がイメージできず、イメージしきれぬまま対面することになったのです」と明かしつつ、「対面した瞬間、僕は確信しました。あなたならできると。眼の前のあなたはテレビで見ていたイメージとは裏腹に、とても神秘的で近寄りがたいオーラをまとっておりました」と思いを馳せたという。
また、対して中山さんの反応は「私、映画はあんまり好きじゃない。やりたくないだったか、苦手なんですだったか、その場が凍りつきました」と意外なもので、「僕はしどろもどろになって、『僕も今回映画が初めてで、ぜひ二人ですてきな映画を作って一緒に映画をつくりましょう』となんとかつくろってその場を切り抜けました」と振り返り、後日承諾の連絡があって以降の付き合いとなったことを明かした。
当時の中山さんについて「不思議なくらいあなたのオフショットが思い出せません。あなたはずっと役のまま」としながらも、「覚えているオフショットといったら、一緒に夜のカラオケに行って、一緒にロンリー・チャップリンを歌ったことくらいです。チャゲアスのモノマネをして似てない!って全力でポップコーンをぶつけてくれたことくらいです」とコメント。「翌朝になるとすっかり役に入り切っていて、昨日は楽しかったねと言っても、あなたはすごくそっけなかったです。映画に全身全霊で集中していたあなたは、僕に対してそっけなかった…」と声を震わせた。
さらに「そんなあなたが唯一、僕のところに心配そうにやってきたことがありました」とし、藤井樹の役が取れず渡辺博子をどう演じたらいいかわからないという悩みだったという。岩井監督は渡辺博子の性格のほうが中山さんに近いと感じていたが、中山さん本人は「藤井樹の性格はよくわかる。私そっくりだから」と言われ戸惑ったことも明かした。
岩井監督は最後に「時代が変わりました。SNSのことです。このメッセージをLINEで送らせていただきます。天国でゆっくり読んでください…既読がついたらちょっと怖いです」「いや、うれしくて、泣いてしまうかも、です」と中山さんに伝えていた。
式典終了後の囲み取材では、弔辞について「すみません、ちょっと胸がいっぱいになって」とし、「美穂ちゃんとおしゃべりがしたくて頑張りました」と明かした。中山さんについて「本当に唯一無二な方」と表現し、「いずれ僕も近くに行けると。天国に行けるかどうかわからないですけど、行けると思うので、また一緒に映画を作りたいなと思います。こっちで頑張ります」と思いを語った。
中山さんは1970年3月1日生まれ、東京都出身。85年にシングル「C」で歌手デビュー。同年のドラマ『毎度おさわがせします』で注目を集めた。「世界中の誰よりきっと」(中山美穂&WANDS)や、「ただ泣きたくなるの」などもヒット。映画では『Love Letter』でブルーリボン賞主演女優賞、『東京日和』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。
プライベートでは2002年に辻仁成と結婚、04年1月に長男を出産。14年に離婚した。妹は俳優の中山忍。大阪でクリスマスコンサートを予定していた12月6日、中山さんの訃報が伝えられた。54歳だった。