野島樺乃アイドルグループ・SKE48の元メンバーで、ボーカルグループ・et-アンド-の元リーダーであった野島樺乃が、4月16日(水)にソロデビュー曲『One』を配信リリースした。彼女が久しぶりに自ら作詞した同曲は、「“あなたのあと1歩“を後押しできるような曲」を目指して作詞したという。デビューから10周年。アイドル、ボーカルグループを経て、今3度目のデビューを果たす彼女の“今” に迫った。
◆アイドル、ボーカルグループを経て3度目のデビュー
Q.デビュー10周年とソロデビューおめでとうございます!嬉しい発表の連続でしたね。
——野島樺乃(以下、野島):ありがとうございます!おかげさまで、3月31日にデビュー10周年を迎えることができました。翌日の4月1日にはソロデビューの発表をさせていただいたのですが、発表するまでドキドキだったので、「やっと言えた!」と今はスッキリしてます。
Q.ファンの方からの反響はいかがでしたか?
——野島:「おめでとう!」と温かいメッセージを送っていただいたり、SNSで拡散していただけたり、思っていた以上の反響があって嬉しかったです。芸能界に入ったときから歌手として活動することが夢だったので、その夢が叶う瞬間をファンのみなさんと共有できたのは感慨深かったです。
Q.野島さんはSKE48、et-アンド-を経て3度目のデビューとなりますね。これから、また新たな歌手活動が始まりますが、率直に今の気持ちは?
——野島:気合がまた入ったというよりかは、リスタートだなと思ってます。ソロデビューを発表してからまだ数日しか経ってませんし、実感する機会はまだないのですが、今はすごく楽しみな気持ちでいっぱいです。普段からいろんな曲を聴いているんですけど、このメロディの雰囲気が好きだなとか、このフレーズは自分の気持ちに合ってるなとか、音楽に触れる時間が楽しくて、充実した日々を過ごしています。
Q.グループにいた頃から一人でステージに立つことはありましたが、本当の意味での“ソロ活動”はやっぱり身構えたりしますか?
——野島:そうですね、今までの私は状況や環境によって自分自身を繕っていたんですよ。SKE48のときは“アイドルの自分”という服を、et-アンド-のときは“アーティストの自分”という服を着ることで、自分自身を着飾っていたんですね。でも、せっかくソロとして活動を始めていくので、自分の内面の細かい部分とか、悩みとか、打ち明けてこなかったパーソナルな部分を徐々にですが見せていきたいと思ってます。自分自身をさらけ出すってちょっと怖いけど、音楽は歌に乗せて想いを共感し合うものだと思うので、“野島樺乃”という一人の人間の素をもっと好きになっていただけるように試行錯誤の真っ最中です。
◆“1秒後”の今も一生懸命に生きたい
Q.自分自身の内面と向き合うことは大切ですね。今回の新曲『One』は久しぶりの作詞だったと思います。デビュー曲でタイアップも含まれるという特別な楽曲だと思いますが、創作活動の方はいかがでしたか?
——野島:私自身、久しぶりの作詞で思ったよりも時間がかかりました。ソロ活動のデビュー曲でもありますが、今回は「なでしこリーグ」とのタイアップ曲の書き下ろしという初めての経験だったので、普段とは違うアプローチで作詞に挑戦しました。試合中の映像を拝見したり、選手の方がインタビューで発した言葉から共感できる言葉を探したり、歌詞の中で伝えたいと思った言葉をいっぱいメモに書き出して、選手が言葉を発したときの情景を思い浮かべて、自分なりに言語化していく過程を経てから、作詞に取り掛かりました。そこに私の伝えたい言葉を散りばめながら整えていった感じです。今までだったら、例えば「夢」をテーマに歌詞を書こうと思ったら、夢にまつわる期待感や不安を表現していたんですけど、今回のようにいろんな情報を自分で集めてから、一つの作品としてまとめていくやり方は意外と自分に合っていたので、今後の作詞活動にも活かせそうだなと思いました!
Q.サビの歌詞には「1秒先の未来」という印象的なフレーズがありますが、どんな思いを込めましたか?
——野島:選手の方々に向けてももちろん、自分自身も日常的に思っていることで、どんなに頑張ってもなかなか結果が出ないことってありますよね。地道にコツコツやっていくのが大事だなって思っていても、今は1秒後に自分の知らないところで何かがバズって世界が変わってしまうような時代じゃないですか。私自身も1秒先にかける思いで常にやっているので、この言葉は一番届けたかった言葉なんです。ぼんやりとした未来に向かっているよりかは、“今”という時間を一生懸命生きているというメッセージを伝えたかったんです。
Q.今、言葉を欲してる人に寄り添う素敵な歌詞ですね。
——野島:“一生懸命”とか”精一杯”というフレーズで背中を後押ししてくれるエールソングがいっぱいある中で、タイミング毎に刺さる曲って聴く時々の感情によって違うと思うんですけど、この楽曲は「『One』を聴いたから頑張れる!」という曲にするんじゃなくて、あと一歩をもうちょっとだけ頑張ろうと思ってる人の後押しになって、少しでも気持ちが楽になってほしいなと思って……。漠然とすごく大きな何かに立ち向かわないで、“今”を頑張ればいいんだよっていうメッセージを込めました。
Q.『One』では聴き手に寄り添う歌詞を執筆されましたが、逆に野島さんが誰かに背中を押してもらいたいときってどんなタイミングですか?
——野島:私自身プレッシャーに弱いところがあって、だんだん歳を重ねていく毎に緊張感が高まってる気がします。SKE48のときはギラギラしていて、「(公演を)楽しむぞ!」という感情の方が強かったんですけど、今はステージ立つと歌い出しの瞬間まで緊張してしまいます。そんなときに支えになってくださるのはファンの方や、マネージャーさん、家族の存在です。「頑張ってね」って背中をポンとひと押ししてくれる言葉をいただけるとありがたいなって思います。逆に「樺乃ならできるよ!」とか、「大丈夫?」という言葉はプレッシャーになっちゃうんですよ!私も気をつけているんですけど、「大丈夫?」って聞かれたら、ほとんどの人が「大丈夫」としか答えることができないじゃないですか?逆に追い詰められてしまうこともあると思います。「大丈夫?樺乃ならできるよ!」というよりかは、「頑張ってね!楽しんできてね」とか、一言「いってらっしゃい」ってかけてもらえたら頑張れると思います。誰かのエールを受けて踏み出せる一歩ってすごく大きんです。私自身、ファンの方や周りの方々に支えてもらって、後押ししてもらっている側なので、自分も歌で何かできることないかなと思って。 『One』はそういう曲になれたのかなって思います。
◆繕わずに素直な自分を届けたい
Q.ありがとうございます。では、最後にせっかくソロデビューしたということで、また新しく始めたいこととか、今思い描いている夢などがあれば教えてください。
——野島:なんだろうなー?でも、今思うことは過去の自分を超えることですね。漠然とではなくて、この1、2年でできるようにステップアップしていきたいなって思ってます。過去を超えることは絶対にしなくてはならないと思っていて、目標とか夢というよりかは、試練じゃないけど、自分でやるべきことを掲げて、自分にむち打って、今まで立ったことのあるステージにはソロでももう一度立って、et-アンド-のときに実施できた東名阪ツアーはソロでも開催できることを目指しています。
Q.めちゃくちゃストイック!ちなみに超えたい過去の自分はいつ頃の野島さんですか?
——野島:やっぱり「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で優勝してから、SKE48を卒業するまでの期間の自分ですね。あの頃の私は、夢だった歌のお仕事もたくさんいただけて、一人でステージを任せてもらえる機会にも恵まれたし、SKE48の選抜メンバーにも選んでいただけて、自分史上めちゃめちゃ自信に満ちていました。向かうところ敵なしみたいな。それが今ではいろいろと考え過ぎてしまう自分の性格が邪魔をして、何もかもするときに、一歩二歩三歩先ぐらいまで考えるんですけど、やっぱり辞めよう、ちょっとやりすぎかなと思って踏み止まる場面が多いです。いい意味であの頃は尖ってたと思います。だからこそ、あの頃のような尖りを見せていきたいなって思って、個性も曝け出していきたいなと思うし、自分に自信を持って生きたいと思ってるんです。
Q.「歌唱力No.1決定戦」優勝は、今に繋がる重大なターニングポイントでしたよね。
野島:実はまだあるんです。自分の好き嫌いのこだわりも、今後はSNSでちゃんと発信しようと思っています。2025年の目標が“すかさないで生きる”なんですけど、いざやってみようと思うとすごく難しくて……。
Q.自分自身を繕ってしまうことが悩みなんですよね。
——野島;そうなんです。今23歳ですけど、かわいいものとか、キラキラしたものとか好きだし、丁寧な暮らしがしたいとか思ってるんです。でも、誰かに憧れられるような生き方をしなきゃいけないのかなって思うこともあって、そういう建前を優先しちゃうんですよ。今の自分って「こういう野島樺乃でいたい」というような自分像があって、俯瞰してみたらすごく“すかしてる”って自分でも思うんですよ。なので、ちょっとずつSNSで自分の内面を曝け出していければなって。「樺乃ちゃんって実は洗い物とか、翌朝に回しちゃうタイプなんだ」とか、そういう日常生活の場面とかを共有して、ファンの方もついついやってしまいそうなこととか、私もそうなんだよっていうところを出していきたいなって思ってます。みんなが思ってるほど、私は完璧人間じゃないし、今まで繕ってきたところもあります。人に歌を届けるお仕事をしている以上、自分の内面や人となりをオープンにしていきたいなって思います。恥ずかしいですけどね。でも、もう10年やってきましたし、本当に自分が思ったことを素直に伝えられる人でありたいと思うように丸くなったのも事実なんです。私がいつまでもそうやって仮面を被り続けていると、きっとファンの方々も私の前ではこういう自分でいなくちゃって繕い続けることになると思うんです。ソロでやることは自分の考えを変えるチャンスなので、一つひとつオープンにしていけたらいいなって思ってます。
<取材・文・撮影/安藤龍之介>
野島樺乃●2001年生まれ。愛知県出身。’15年にSKE48の7期生として加入。’19年に初開催された「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で優勝。同年25thシングル『FRUSTRATION』で初選抜。’21年にSKE48から卒業し、ボーカルグループ・et-アンド-のリーダーとして活動。’25年、ソロデビューを果たした。
「実は豚骨ラーメンのスープ飲みはもうやめていて(笑)。いくら喉によくても年々キツくなってきたので、今はオリーブオイルを飲むようにしてます。まぁ、これもこれで美味しくないんですけど(笑)」