
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第97回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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最近、牛丼チェーンの味噌汁やフードデリバリーの置き配など、いろいろと混入騒動がありました。そこで今回は、ウーバーイーツ配達員の私が考える、フードデリバリーの置き配対策について書こうと思います。
ただ、ここから先の文章の中には不快な思いをする方もおられるかと思うので、今、食事中にご覧になっている方などは、食事後など時間を置いてからご覧いただけたらと思います。
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牛丼チェーンの味噌汁にネズミが入っていた画像が話題となった直後、フードデリバリーで置き配された袋の中にもネズミが入っていたことが発覚しました。レジ袋を閉じた状態で置き配されたものの、中に生きたネズミが入っていたとのことです。
どこから侵入したのかわかりませんが、ネズミは小さな隙間があれば入ってくるので、店、配達員、注文者、それぞれに「ネズミの侵入を許した要因」が考えられます。
まずは店の場合。できたてをすぐに渡される時は問題ありませんが、配達員がマッチングせず、大量に料理が積まれているのをたまに見かけることがあります。ほとんどの店では、それらは明るいところ、掃除の行き届いた場所に積んでいるのですが、一部の店ではお客さんに見えない場所に置いているところもあります。
客席が満席で置く場所がない、といった理由もあると思うのですが、こういったケースでネズミが入ってしまう可能性はあります。ネズミでなくとも、ゴキブリが入る可能性もゼロではありません。
どんなに清潔にしても、消毒を何度しても、食べ物を扱っている限り、ネズミや
ゴキブリの侵入を避けることはできません。築地市場が豊洲に移転した際、1万匹以上いると推定されるネズミを駆除しました。また新宿の歌舞伎町でも街を歩いているとネズミを見かけることがけっこうあります。
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汚いと感じる方もいるかもしれませんが、食料品を扱う限り、店に侵入するネズミやゴキブリを完全にブロックすることは難しい問題です。なので、明るい場所や常に店員の視界に入る場所に置くなど対策をとっていただけるとありがたいです。
配達員の場合、考えられる一番の要因は、複数同時配達を行なう際のリュックの置き場所が悪いこと。
ウーバーイーツ配達員の多くが料理を運ぶために巨大なリュックを使っています。このリュックを背負ったまま店に入ると、店のお客さんの邪魔となるため、配達員に対し「リュックを店内に持ち込まないでください」と指示する店がけっこうあります。
そういった店の場合、リュックを自転車の脇に置くなどして受け取りに行くのですが、複数同時配達だとリュックに1件目に受け取った料理を入れっぱなしの状態で2件目の受け取りに行く、なんてことになります。
この時、人通りの多い明るい場所だと歩行者の通行の邪魔になるので、配達員の多くは人通りが少ない暗いところに自転車とリュックを置いています。
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リュックの開閉部はマジックテープになっているので、長年の使用で経年劣化したリュックを暗い場所に置いて受け取りに行くと侵入されてしまう可能性があります。
リュックだけ明るい場所に置く、店の指示を無視してリュックを店内に持ち込むという方法もありますが、それをやるとBAD評価をつけられたり、ウーバー配達員に対する世間の目が一層厳しくなります。なので、リュックを地面に直置きせず、自転車の後部やカゴの上などに固定しておく。マジックテープが壊れてきたら新しいリュックに買い替えるといった対応をした方がいいと思います。
注文される方の場合、考えられるのは長時間の放置。
一戸建てや共用廊下が外と接しているマンションの場合、ネズミやゴキブリの侵入は不可避。長時間食べ物を放置すると商品の袋の中に入ってくる可能性もありますし、袋が密閉されていても破ってくるケースも考えられます。
以前、隅田川沿いのマンションに置き配をした際、共用廊下の手すりにカラスやカモメがとまっていたこともありました。鳥ならくちばしで袋を簡単に破ってしまうでしょう。
外に接していないマンションでもゴキブリに侵入される可能性はあります。
配達に行くと、たまに部屋の前にゴミを置きっぱなしにしたり、段ボールを山積みにしている方を見かけます。翌朝に出すものを一旦置いておくなど、部屋のドア前のくぼんだスペースなら誰にも邪魔にならないので大丈夫と思っているのでしょうが、こういったところからゴキブリが出てくるのを見たことがあります。
対策として一番いいのは、配達員が置いたらすぐに料理をピックアップすること。もし、数分間置くようなことがある場合は、置き配ボックスの購入をオススメします。
鍵付きで防水性のものなら、密閉性もあるのでネズミやゴキブリの侵入を減らすことができます。また、外に接している一軒家、マンションであれば雨の日に商品の入った紙袋が濡れてしまうことがありません。最近はSDGsの観点からか、雨が降っていてもビニール袋に入れず、紙袋で運ぶよう指示する店もあるので、そういった日でも安心です。
置き配はコロナのタイミングで急遽始まったものなので、システムとしてはまだ完成途上にあるサービス。なので「だから置き配はダメだ!」と否定せず、みんなでアイデアを出し合って、快適なサービスへとブラッシュアップされていったらなと私は考えています。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明