
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。未来では人間の感情は不要になる!? 愛と恐怖のSFドラマ!
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『けものがいる』評点:★3点(5点満点)
70年代ディストピア映画の現代版
1910年、2014年、そして2044年の3つの時代を行き来しながら展開する「輪廻転生もの」だが、物語の軸は2044年の未来世界にある。何らかの大災厄を経たその時代、世界はAIが管理しており、人間の突発的な感情は平穏な生をおびやかすものであるとして、あまり歓迎されていない。
それどころか、強い感情や情動は「過去の〈自分〉の人生」に由来するので(?)、そことの繋がりを未来テクノロジーで断ち切ってなくしてしまうことが推奨されている。
「サイエンス・フィクション」の「サイエンス」部分と真っ向から対立する輪廻転生というモチーフが取り入れられているのは異色だが、本作は基本的に1970年代の思索的なディストピア映画の焼き直しで、とくに『THX 1138』や『赤ちゃんよ永遠に』(同作に登場するのとそっくりな大気汚染用マスクも出てくる)、また原点としての『1984』の強い影響下にある。
各時代で愛を育むレア・セドゥとジョージ・マッケイはそれぞれ素晴らしいが、「時代をまたいだ恋人たち」というと『バンデットQ』に登場したアホのカップル(マイケル・ペイリンとシェリー・デュヴァル)を思い出してしまうので困ったものである。
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STORY:2044年、AI中心の社会では人間の感情は不要とされ、重要な仕事を得るためにはその消去が必要だった。主人公ガブリエルは前世から続くトラウマを消去すべく、1910年と2014年へさかのぼるが、そこでひとりの青年に出会う
監督・脚本・音楽:ベルトラン・ボネロ
出演:レア・セドゥ、ジョージ・マッケイ、ガスラジー・マランダほか
上映時間:146分
全国公開中