2025年F1第5戦サウジアラビアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル) 現行のF1カレンダーで最長のスパ・フランコルシャン・サーキット(全長7.004km)に次ぐ、2番目に長い全長6.174kmのジェッダ・コーニッシュ・サーキット。平均速度は時速約260kmのモンツァに次ぐ時速約250kmで、全開率もモンツァ並みの高さを誇る。
そのため、ホンダRBPT勢4台がそろって、F1第5戦サウジアラビアGPでパワーユニット(PU)の主要な4つのコンポーネントを新しくした。レッドブルの2台とアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)は2基目で、ローソンは3基目となった。パワーユニットの年間使用基数は、ドライバーごとではなく車体ごとにカウントされているため、ローソンの年間使用基数は、第2戦中国GPまでの角田車に搭載されていた数字が引き継がれている。角田車のパワーユニットは開幕戦の後、データに気になるものが発見されたので調査を行うため、中国GPから2基目を使用していた。
さて、5戦目という早い段階から新しいエンジンを投入してきた理由を、ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)はこう説明した。
「ジェッダ・コーニッシュ・サーキットはパワー感度(パワーユニットの馬力がラップタイムに与える影響)が大きいので、4台とも新品のパワーユニットを投入しました」
サウジアラビアGPで初めてF1が開催された2021年は、開催時期が最終戦アブダビGPの前だった。2022年から昨年までは開幕2戦目だ。そのため、サウジアラビアGPで新品のパワーユニットを投入することは得策ではなかった。
しかし、今年は開幕5戦目。4戦使用したパワーユニットと新品で差が出てくるタイミングとなったため、HRCとレッドブル、そしてレーシングブルズは満を持して新品を投入してきた。ジェッダ・コーニッシュ・サーキットは全開率が高いだけでなく、全長も長いため、予選でもフルデプロイができない。そうなってくると重要なのがICE(エンジン)の純粋なパワーとなる。
ホンダRBPT勢以外にも、金曜日にはルノーPU勢のピエール・ガスリーとジャック・ドゥーハン(ともにアルピーヌ)が新品を投入。土曜日にはフェラーリが2台とも2基目にしてきた。トップチームでパワーユニットを交換しなかったのはメルセデス勢だけで、折原GMも「少し驚きました」と語った。
この驚きは、予選ではHRCにとって喜びとなった。土曜日の予選で、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が逆転でポールポジションを獲得。メルセデスPU勢最高位となった2番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)との差は、わずか0.010秒だった。
現在のF1パワーユニットの10馬力あたりのパワー感度は、コースによっても異なるが、平均して1周あたり約0.2秒と言われている。新品とユーズドのパワーユニットの馬力差は明かされていないが、数馬力はある。つまり、少なく見積もっても、2番手ピアストリとの0.010秒の差を上回るだけのパワー差はあったと考えられる。
折原GMも新品を入れて、結果が出たことを喜んでいた。
「ライバル勢がもっともっと新品を入れてくると思いましたが、入れてこなかったので、我々のニューエンジンの影響でポールポジションまで届いたんじゃないかなとエンジン屋としては思いたい。新品との差は1000分の10秒以上ありますから」
日曜日のレースではスタート直後のコーナーカットとペナルティが響いて、2位に終わったフェルスタッペン。しかし、少なくとも高速コースでは優勝争いができるとわかったことは、チャンピオンシップ争いにおいて、大きな収穫だった。折原GMもレッドブルの雰囲気を次のように語った。
「まだ、全然諦めていません。勝ちを拾えるところでしっかりと拾って、そこにクルマの改善が追いついてくれれば、まだまだ行けます」
[オートスポーツweb 2025年04月25日]