佐藤琢磨、一時トップタイムも大クラッシュ。「もっと用心してターン1に入れば」と状況振り返る/インディ500テスト

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2025年04月27日 11:40  AUTOSPORT web

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佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング) 第109回インディ500オープンテスト
 5月25日に行われる第109回インディアナポリス500マイルレースを1カ月後に控え、4月23、24日の両日にオープンテストが行われた。出場車両は全34台で、その中には今年16回目の出場となる佐藤琢磨の名前もあった。日本人ドライバーとしては最多出場の記録を更新し続けている。

 昨年同様レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLL)からの出場でカーナンバーは75、メインスポンサーも昨年同様AMADA USAとなる。

 担当エンジニアも息の合ったエディ・ジョーンズとのコンビネーションが続き、2020年以来の優勝をともに目指す。またストラテジストやメカニックも旧知の人間を呼び寄せて、RLLの中で“チーム琢磨”が再結成したような形だ。

 ホンダ・レーシング(HRC)のエクゼクティブアドバイザーとして日本で多忙な日々を過ごしていた琢磨は、F1日本GP直後に渡米、そのままインディアナポリスのRLLのショップに向かいシート合わせや入念にミーティングを重ねていたという。

 今年の琢磨は昨年のレースから12カ月以上経っているため、リフレッシャーの扱いとなり、リフレッシャーとルーキーオリエンテーション(ROP)に設けられた時間の中で、フェイズ2/210mphでの15周連続走行、フェイズ3/215mphでの15周連続走行までをクリアする必要がある。

 テストの初日は快晴に恵まれたものの、全車のインスタレーションラップの後、コントロールタワーと各チームのインターネットを介したコミュニケーションにトラブルが発生し、スケジュールが大幅に変更されることになった。ROPは14時から2時間が再度設定され、琢磨はこの時間で今年の新車をシェイクダウンし、走行に望むことなった。

 12カ月ぶりにマシンに潜り込んだ琢磨は順調にペースを上げて行き、リフレッシャープログラムは難なくクリア。ROPの中で58周し、平均時速222.437mphのベストタイムをマークして最初のセッションを終えた。

 その後、終了時間が1時間延長された初日最後のプラクティス3では順調に88周を走行。220.354mphをマークして全体の3番手で終了した。また前の車の風の影響を受けないとされる“ノートウ”でも3番手のタイムだった。

 トップタイムのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)や、2番手のジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)など今シーズンのトップコンテンダーと比較しても、まったく遜色のないタイムで、スポット出場のマシンがここまで上位のタイムを出すことは、近年例がないほど。それだけ琢磨の初日の速さは注目を集めた。

 琢磨は初日の様子を「本当に1年ぶりの走行でしたけど、チームが本当にマシンをしっかり準備してくれて、スムーズに走れました。リフレッシャーのプログラムも、徐々に体と目を慣らすことができて、よく考えられたプログラムだと思いました」と語った。

 テスト2日目も天候の心配をすることなく始まったが、今年のオープンテストは予選を想定したハイブーストでの走行時間が設けられ、テスト開始から2時間の間は、予選を想定して単独での走行となる。これは今年ハイブリッドとなった車両で最初のインディ500ということもあっての処置だ。

 琢磨も予選を想定した走行のため、コースイン毎にニュータイヤを装着して、タイムアタックに出る。

 最初の走行3周目には232.565mphというこの日のベストタイムを叩き出し、セッション全体のトップに躍り出た。75号車の持つスピードが本物であることを証明して見せる。

 だが好事魔多し。セッティングをやや変更し2度目の走行に臨んだ琢磨は、タイムアタックの1周目のターン1で一瞬姿勢を見出すと、スピンしながらセーフティーバリアに激突。マシンを大破させてしまった。

 琢磨のクラッシュの15分ほど前には、NASCARドライバーでもあるカイル・ラーソン(アロウ・マクラーレン)が同じ場所でクラッシュしており、スピードウエイは重苦しい空気に包まれた。

 すぐさま赤旗となり、セーフティークルーが琢磨の救助に向かう。幸い琢磨に大きな怪我はなく、自力でマシンから降りることができた。ややふらつきながら、自分のマシンのダメージを一瞥すると、琢磨はうなだれるよう、セーフティビークルに乗ってメディカルセンターに向かった。ターン1進入時のスピードは235mph、約378km/hのスピードが出ており、衝突時の最大瞬間加速Gが94Gを越えていたという。

 マシン後部を中心にダメージはひどく、琢磨のテストはここで打ち切られることになった。

 メディカルセンターからリリースされた琢磨は「少し痛みはあるけど、体は大丈夫です。せっかくいいクルマをチームが作ってくれてスピードも見せられていたので、残念だし、チームに余計な仕事を増やしてしまって本当に申し訳ない」とさすがに意気消沈した様子だ。

 状況が少し落ち着いたところでふたたび話を聞くと「あの周、ターン1に入って行く前のターン4で少しフロントが入り込むような感じがあったので、そこで止めるか、もしくはもっと用心してターン1に入れば良かったかも知れない」と状況を振り返った。

「まだそんなにダウンフォースも削っていなかったし、ニュータイヤの1周目だったからイケるだろうと思ったのがいけなかった。クルマはショップに戻って、詳しくチェックすることになりましたが、またほぼゼロの状態からインディ500に間に合わせなければいけないということで、チームには本当に迷惑をかけてしまって申し訳ないと思います」

「チームはクラッシュの後に、すぐにいろいろと手配を始めてくれたので、インディ500に間に合うように準備してくれています。来月またここに戻って来ますが、その時はまた速さを見せられるようにしたいと思います」

 インディ500を2017年、2020年と2度制した琢磨。15年間の挑戦のなかで今回のように壁に激しく衝突する大きなクラッシュは、デビューイヤー2010年のプラクティス以来だろう。毎年のようにインディ500を走り、6チームを渡り歩いて来た琢磨はファンからは好かれ、ライバルチームからも一目置かれる存在だ。この2日間のテストでもそのパフォーマンスを十二分に発揮しており、何より唯一の日本人ドライバーとして、日本の期待を背負う存在でもある。

 琢磨の16度目のインディ500挑戦は、想定外の始まりとなってしまったが、ここから不死鳥のごとく甦ることが出来るだろうか。インディ500の決勝日は5月25日だ。

[オートスポーツweb 2025年04月27日]

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