金盛潤一氏 経済的自由を手に入れて、早期退職する“FIRE”に憧れるサラリーマンは少なくないだろう。元商社マンの金盛潤一氏もその1人で、29歳という若さで“FIRE”を実現している。そんな金盛氏に、FIREを実現できた秘訣と、FIREを実現できない人、できる人の特徴を聞いた。
◆29歳の若さでFIREに成功!
――金盛氏がFIREを実現させたときの年齢は?
金盛 FIREに必要な資産額は人によって異なりますが、日本の田舎で必要最低限の暮らしをするのであれば、僕は5000万円あれば実現できると考えています。それでいうと、‘21年に6000万円を貯めることができたので、29歳になりますね。
年収1億円を目指そうかなとも思いましたが、税率が高くてバカらしいのと、当時初めていたスクールの講師の仕事に支障をきたすと考えて、’21年以降は資産を元手にS&P500や暗号資産(仮想通貨)で増やすことにコミットしています。‘22年は相場が悪くて資産を増やすことができませんでしたが、‘23年6月に1億円、’24年5月には2億円に到達しました。
――29歳のときに6000万円を貯めたのはすごいですね。
金盛 本当はもっと早くFIREしたかったので、自分では遅いと思っています。
――いつ頃からFIREしたいと考えていたのでしょうか?
金盛 大学生3〜4年生の時に真剣に考えるようになりました。うちは実家が裕福ではなくて、大学1年生のときに家賃を滞納したり、満足に食べられなかったりするなどして、お金で苦労することが多かったので。
それに、子供の頃に祖父母を亡くしていたのと、今は回復したのですが、母が余命宣告を受けたことも“FIRE”の原動力になりました。生きているうちに親孝行をするには、お金が必要ですから。
◆大学時代に投資で失敗するも…
――どのようにしてFIREを実現したのか教えてください。
金盛 最初は投資にチャレンジしました。大学3年までにアルバイトで200万円を貯めて、50万円は投資、自己啓発の本などを購入する勉強代や情報商材に使い、130万円くらいをほぼすべてSBI証券に入れて、個別株の信用取引デイトレードで2年間運用していました。
最初はうまくいっていたのですが、半年もかからずに再起不能になってしまって……。失敗した理由は単純明快で、当時は就職しないで資産を増やすことを目標にしていたこともあり、冷静な判断ができなくて非現実的な投資に手を出してしまったんです。
――非現実的と言いますと……?
金盛 投資の初心者だったにもかかわらず、大学院に進学して2年以内に130万円を1億円に増やそうとしました。この目標を達成するためには、常に高レバレッジの取引をするしかありませんでしたが、今にして思うとあまりにも無謀でしたね……。
それで大学院卒業後に就職する道を選び、まずは働いて投資の元手を増やすことにしました。収入を増やして入金力を上げることができれば、投資でリスクを減らしても、比較的短い時間で5000万円や1億円に到達できると考えたんです。
――リスクを減らして堅実な方法で増やすことにしたのですね。
金盛 はい。入社した商社は年収が400万円だったので、年収を増やすために1年で退職し、社会人2年目からはフルコミッション制の保険の外交員として働いていました。仕事を通して金融リテラシーを学びつつ、保険の外交員2年目にして年収1000万円を達成。このまま2000万円プレイヤーを目指そうかなとも思いましたが、次のステップに進むために、3年目は仕事をそこそこに、SNSでのマーケティングを学ぶことにしました。
外交員の仕事を通して、営業はできる自信があったので、今後必要になる集客力を高めたいと考えたんです。これが功を奏して、外交員を辞めて始めたSNSマーケティングの仕事で年収3000万円を達成できました。投資で増やした資産を合わせると、29歳のときに6000万円を達成でいたというわけです。
◆若くしてFIREを実現できた一番のポイントは?
――若くしてFIREを実現できたポイントはなんですか?
金盛 ポイントはいろいろあると思いますが、いちばんはマインドだと思います。自分のためだけにFIREしたいと考えても限界はあると思いますが、親が生きているうちに孝行したいという気持ちがあったからこそ、僕は達成できたと実感しています。まだ親孝行はそれほどできていませんが、外食や旅行はお金を気にせずに出せるようになりました。
――テクニックではなく、マインドなんですね。
金盛 マインドでいうと、“普通の人”の意見をすべてスルーできるかどうかも重要なポイントですね。というのも、そもそもFIREを実現できるのは、全体で見てもかなりの少数派なので、“普通の感覚の持ち主”ではないんです。
だからFIREをしようと計画しても、“普通の人”に反対されることが多い。僕も何人もの知人に「無理だ」と言われましたし、投資に失敗したときは「それみたことか」とバカにされて悔しい思いも体験しました。
周囲の反対やわずかな失敗ですぐに諦めちゃうのも“普通の人”ですが、FIREという普通ではないことを実現するためには、すべての反対意見をスルーしてでも、前に進む強い意志が必要になると思います。僕は「いつか見返してやる」という反骨精神も原動力になりました。
――「いつかFIREしたいな……」程度の気持ちでは、絶対に実現できないと。
金盛 僕は実現できないと思います。
◆“FIRE”できる人の特徴
――強い意志があったうえで、FIREできる人の特徴は?
金盛 浪費家ではない、収入の最大化を怠っていない、金融リテラシーの向上を怠っていない。FIREに成功した人は、いずれもこの3つが備わっていると思います。あとは、人生はいつ終わってもおかしくないと悟っている方も強いですね。
僕は子供の頃から親族や知人の葬式に参列する機会が多かったのと、人間の生死を描いた作品をたくさん観てきたので、人間はいつ死んでもおかしくない、だからこそ後悔しないように生きようと昔から考えてきました。
日頃から死を意識して生活をしていると、死ぬこと以外は怖くありません。人間は恐怖心によって行動できなくなることがありますが、僕は生きてさえいれば何とかなると考えているので、学生時代に投資で失敗したり、周囲にバカにされたりしたときも、簡単に乗り越えられました。
――年齢で足踏みする人もいると思いますが、40代や50代からでもFIREを目指す方法がありますか?
金盛 僕はFIREすることで、自由な時間を少しでも増やすことができるのが大きなメリットだと考えています。当然ながら、若ければ若いほどFIREした後に使える時間は増えますが、本気でFIREしたいのであれば、たとえ定年間近であっても、数年の自由を得るためにチャレンジする価値はあると思います。