クイーンエリザベス2世Cを制覇したタスティエーラ(撮影:高橋正和)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ルアーヴル】
現役時代に仏ダービー(G1・芝2100m)を制覇しました。
父ノヴェールは名馬アラジの半弟で、ラーイを経てブラッシンググルームにさかのぼる父系に属しています。母マリーラインベルクはポーラファルコン(ピヴォタルの父)の半妹。母の父ズラコはドイツの大種牡馬ズルムーの甥です。質の高い非主流血統を豊富に含んでいます。
フランスで種牡馬入りし、初年度(2010年)種付け料はわずか5000ユーロでした。そのなかからアヴニールセルタン(仏1000ギニー、仏オークス)やオーヴレイ(ショードネイ賞、リュテス賞)を出して注目を集め、3年目に8戦全勝のラクレソニエール(仏1000ギニー、仏オークス)を出して評価を確かなものとしました。他にワンダフルトゥナイト(英チャンピオンズフィリーズ&メアズS)、ヴィラマリナ(オペラ賞)などを出しています。2017、18年には種付け料が6万ユーロまで上昇しました。初年度の12倍です。
日本では社台ファーム生産のプールヴィルがフィリーズレビューを勝ち、前出のアヴニールセルタンとラクレソニエールもまた社台ファームで繁殖牝馬となっています。距離は万能で、スピードや切れ味もあるので日本の高速馬場に対する適性があります。
母の父としてはマイルCSを勝ったセリフォス、阪神牝馬Sを勝ったデゼル(母はアヴニールセルタン)を出しており、母方に入る血としてはきわめて優秀です。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「香港のクイーンエリザベス2世Cを勝ったタスティエーラはトライマイベスト系に属していますが、この父系は他にどのような馬が活躍していますか?」
トライマイベストはちょうど50年前の1975年4月28日に誕生しました。大種牡馬ノーザンダンサーの息子です。タスティエーラが属するラストタイクーンの分枝は、ニュージーランドのチャンピオンサイアーであるオライリー、オーストラリアのチャンピオンサイアーであるリトゥンタイクーンなどが出ています。前者の孫に、クイーンエリザベス2世Cと同日に行われたチェアマンズSPの覇者カーインライジングがおり、後者の父系もしっかり続いています。ちなみに、ラストタイクーンはキングカメハメハの母の父です。
世界的にみてこの父系は、ラストタイクーンとは別のワージブの分枝に勢いがあります。このラインはダークエンジェルとメーマスという優れたスピード型種牡馬が大成功しており、これらの父アクラメーションは香港の名馬ロマンチックウォリアーの父としても知られています。
ロマンチックウォリアーは昨年までクイーンエリザベス2世Cを3連覇。今年はタスティエーラが勝ったので、トライマイベスト系がこのレースを4年連続で制覇したことになります。