
横浜DeNAベイスターズ・山本祐大インタビュー(前編)
昨シーズン、ベイスターズの正捕手としてベストナインとゴールデングラブ賞を受賞し、リーグを代表する捕手へと成長した山本祐大。今季も「自らを信じ、攻め続ける」姿勢で、チームをさらなる高みへ導こうとしている。
【チーム状況や雰囲気は決して悪くない】
── 昨年はDeNAの正捕手としてベストナインとゴールデングラブ賞を獲得。好守兼ね備えたキャッチャーとしてリーグNo.1の称号を得ました。また山本選手はケガで後半離脱があったもののチームは26年ぶりの日本シリーズ制覇を果たしました。
山本 ほんと昨年は濃い1年間で、「報われた」と心底思うことができました。チームとしても一体感を持ち、いい形で終われたので、この勢いを今季も発揮できるようにリーグ優勝に向けチームメイトを引っ張っていけたらと思っています。またベストナインやゴールデングラブ賞は、1年間頑張った選手にしかいただけないタイトルだと思うので、今年もこの賞を獲れるように頑張りたいですね。
── ただ今季、開幕してから苦しい状況がつづいています。
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山本 チーム状況や雰囲気は決して悪くはないので、どんなことがあろうといい方向に進んでいくんじゃないかと感じています。
── そこは確信している?
山本 そうですね。ここを乗り越えれば、これからもっと上がっていくんじゃないかと。
── 昨年は打率.291と結果を出した打撃ですが、今季は開幕カードでヒットが出ませんでした。「まずは1本出ないと焦る」と聞きますが、あの時の心境は。
山本 そうですね。今季の初打席はゲッツーだったので、「今年はどんな1年になるのかな〜」といった感じでしたね。でも、焦りはありませんでしたよ。
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── そこは以前の自分とは違う。
山本 最近まで打率が1割台で、バックスリーンの表示を見て3〜4年前の自分を思い出して「うわ〜」って(苦笑)。やっぱり数字が低いと、どうしても気持ちって落ち込みがちなんですけど、いろいろな経験をして、あの時の自分よりは強くなったと実感していますし、苦しい時期を越えてきたからこそ、「いいスイングができているよ〜」って自分にポジティブな声をかけてあげることができています。
── クリーンナップの後ろを打ち、高い得点圏打率で打点も稼いでいます。
山本 去年から「いいところで打つ」というのは自分のなかの課題ですし、今の段階ではできすぎなところもあるんですが、体現できているのかなって。
── ミスショットはあるにせよ、それ以上に三振も少なく、ボールの見極めができたうえで積極的に強く振れている印象です。
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山本 状況に応じたバッティングができるようになってきたと実感していますし、あと今年は「いっちゃえ!」みたいな、これまで自分のなかになかった部分が出てきたと思います。
── 大胆さ、みたいなものですか?
山本 はい。自分を信じて「いっちゃえ!」って言い聞かせているところはあるんで......よくなるか悪くなるかは別にして、これまでなかった心境で打席に入れています。
── それはバットを1回だけ引いて、しっかりと軸とタメをつくって強く振る、という自分の形ができあがっているからこそですか。
山本 はい。それは少なからずあると思います。これさえ崩れなければ、というモノが自分のなかで確立できていますからね。
【数字では測れない部分をよくしたい】
── 昨年、各賞を獲得したことでプレッシャーみたいなものはありますか。
山本 それは全然ないですね。守りに入ることなく、自分の感じるままやればいいと思っています。キャッチャーって数字では測れない部分がたくさんあるので、そこをよくしていきたいなと常に考えていますね。
── 数値化できない部分で一番に気にとめていることは。
山本 やっぱりコミュニケーションですね。試合中はもちろん、ベンチやロッカーで打たれても抑えても、ピッチャーとはよく話すようにしています。それこそ僕より年下の若手ピッチャーも増えてきて頑張ってくれているので、いいピッチングを続けさせるのも僕の仕事だと思っています。
── やることは多岐に渡りますね。
山本 はい。あとは1試合でタイムを3回しかかけられないので、マウンドに行けないこともあるんですが、今年に関しては、周りの内野手がすごく声がけしてくれているので助かっています。
── たしかに、牧秀悟選手などが積極的に投手に声をかけているシーンが目につきますね。
山本 ええ、内野陣には「声をかけてください」と話をしていますし、チーム全体としてもコミュニケーションはとれていると思います。
── プロ8年目、レギュラーとしてマスクをかぶっていますが、DeNAは昨年のポストシーズンで存在感を示したベテランの戸柱恭孝選手や若手の松尾汐恩選手、さらに経験豊富な伊藤光選手など、レベルの高い捕手層にあって、山本選手は「さらさら負ける気はない」と開幕前におっしゃっていました。
山本 もちろんです。むちゃくちゃいい刺激を受けていますし、僕自身まだまだ成長しなければいけないと思わせてくれる環境ですね。12球団のなかで、正捕手争いが一番厳しいチームだと思いますし、それが僕らの強みでもある。ライバルではあるけど、敵ではないので心強いですし、負けたくないという気持ちが僕自身、いい方向に働いている。とくに汐恩なんてイケイケの若手ですからね。突き上げは常に感じていますよ。
── 松尾選手は少ないチャンスで、早速ホームランを打っていましたね。
山本 バッティングがいいのは知っていましたけど、やっぱりああいった状況で打てるというのはメンタリティーも含め、すばらしいなって素直に思いました。自分ももっと頑張らなければいけないし、5年後も負けないようにと思いながら日々を過ごしています。
── 松尾選手は学生時代から注目を浴びたドラ1選手。一方、失礼ですが山本選手はほぼ無名の状況からはい上がってきた雑草魂の選手。やっぱりそこは負けられない?
山本 本当そうなんですよ。そこは声を大にして言いたいですね(笑)。
後編につづく>>
山本祐大(やまもと・ゆうだい)/1998年9月11日生まれ、大阪府出身。京都翔英高の3年夏に石原彪(楽天)とともに甲子園に出場。その後大学進学予定も断念して、2017年5月に独立リーグBCLの滋賀ユナイテッドベースボールクラブ(現・滋賀GOブラックス)に入団。17年ドラフト9位でDeNAに入団。ルーキーイヤーからプロ初打席初本塁打を放つなど、存在感を発揮。24年は正捕手として、ベストナインとゴールデングラブ賞を獲得するなど、飛躍の1年となった