2025年F1第5戦サウジアラビアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)のバトル F1第3戦日本GPで見事な優勝を飾ったマックス・フェルスタッペン。しかし、その後の第4戦バーレーンでは6位。第5戦サウジアラビアGPでは2位に終わっている。3連戦はどのような戦いだったのかF1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが語る。
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鈴鹿、バーレーン、ジェッダの3連戦は、それぞれがまったく性格の異なるサーキットでのレースであり、フィールドの序列もそれに応じて変化した。まず日本では、現代のF1において総合的な能力が最も高いと評されるドライバーが、その本領を発揮した。マックス・フェルスタッペンが理論的にはありえないこと、つまり最速ではないクルマでレースに勝つという番狂わせを起こしてみせたのだ。
フェルスタッペンは2024年のオーストリア以来となるポールポジションを獲得し、レースではマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリの追撃からリードを守りきった。まさしく卓越したパフォーマンスだった。マックスは言う。「この勝利をホンダに手渡すことが、僕にとっては何よりも重要だった。長年にわたって、彼らはチームのためにとても多くのことをしてくれた。レースをリードしながら、絶対にこれを取り逃がしたりしないぞと思っていたんだ」
だが、レッドブル・レーシングの面々は、バーレーンでは鈴鹿とはまた違った状況になるだろうと考えていた。悲しいかな、その予想は正しかった。
マックスはバーレーンでの週末を通じて、ずっとバランスの問題、ブレーキの問題、タイヤのデグラデーションの問題、そしてクルマとドライバーのオーバーヒートに苦しんだ。それに加えて日曜のレースでは、普段はチームの強みのひとつであるピットストップでもつまずいた。ドライバーに作業終了を知らせる信号システムが、電気的なトラブルで正しく作動しなかったのだ。
レースを終えたフェルスタッペンは、いかにも不満そうだった。「うまく行かない可能性があるものは、ほとんどすべてがうまく行かなかった。しかも僕らが抱えるいくつかの問題は、互いに複雑に絡み合っている。たとえばクルマのバランスが悪ければ、どうしてもタイヤのデグラデーションは激しくなるし、バーレーンではそれが特にひどかった」
レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコはこう語っている。「クルマのバランスが悪く、どうしてそうなるのかという原因の特定ができていない。疑わしいのは空力だが、それ以外にも複数の問題がある。この週末のうちに、オペレーションの面であらゆることが正しくできているか、セルフチェックしてみる必要がある」
どうやら問題の根本は、チームボスのクリスチャン・ホーナーも繰り返し述べているように、風洞でのデータとコース上でのクルマの挙動の相関が取れていないことにあるようだ。
バーレーンでのレース後には、フェルスタッペンがレッドブルを離れる可能性について、多くの記事や噂が飛び交った。2028年末までの契約が交わされているにもかかわらずだ。マルコは言う。「バーレーンでのようなひどいパフォーマンスが続けば、マックスはタイトルを防衛できないだろう。それは私たちが彼を失うリスクにもつながる。昨年のブラジルのように雨のレースになれば彼は強いし、鈴鹿では驚異的なドライブを見せてくれたが、それに頼っているようではダメなんだ」
フェルスタッペンとの契約に、いわゆるパフォーマンス条項が含まれているという推測はおそらく正しい。近年ではどのドライバーの契約にもそうした条項があるからだ。一般にその内容は、あらかじめ指定された期日を過ぎた時点で、選手権の順位が所定の水準を下回る場合、ドライバーは契約を解除して移籍できるというものだ。もちろん、フェルスタッペンの契約で定められた具体的な条件について知っているのは、内部のごく限られた関係者だけだ。
ジェッダにはアップグレードの最初の一部が届いた(これに続いてマイアミとイモラでも投入される)。その効果もあってか、マックスはピアストリとわずか100分の1秒差でセンセーショナルなポールポジションを獲得した。
しかし、レースはいきなり議論を呼ぶ展開になった。フェスルタッペンとピアストリはスタート後の最初のコーナーで互いに譲ろうとせず、コース外へ逃げたマックスがそのままリードし続けたことから、5秒のタイムペナルティを科されたのだ。結果として、彼はピアストリに次ぐ2位でレースを終えた。マックスは言葉少なに「まあ、仕方がない。僕にはどうすることもできない」と語るのみだった。
だが、ライバルたちは警戒すべきだろう。怒りに燃えたフェルスタッペンほど危険な相手はいないからだ。
[オートスポーツweb 2025年05月01日]