「カメラが回ってない時間もずっと…」34歳女優が明かす鈴木亮平との撮影現場でのコミュニケーション

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2025年05月01日 09:00  女子SPA!

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 ファーストサマーウイカさん(34歳)が、作家・朱川湊人の代表作で、ある兄妹の不思議な体験を描いた短編集を映画化した『花まんま』に出演。鈴木亮平さん演じる俊樹の幼なじみで、お好み焼き屋の看板娘である三好駒子役を好演しています。

 近年バラエティのみならず、NHK大河ドラマ『光る君へ』で主人公のライバル・清少納言を演じるなど俳優としても着実にキャリアを重ね、活躍の場を広げているウイカさん。

 その大活躍の背景には、ウイカさんならではのモットーが。ご本人に今回の映画のことを含め、話を聞いてみました。

◆“地元・大阪の理想的なお姉さん像”が浮かんだ

――映画『花まんま』に出演すると決まったとき、率直にいかがでしたか?

ファーストサマーウイカ(以下、ウイカ):最初、前田哲監督やスタッフの方から「ぜひ演じていただきたい役なんです」とおうかがいして脚本を読ませていただいたのですが、おっしゃる意味がわかる、大阪の下町のチャキチャキとした看板娘という印象でした。

自分とはどこか遠くかけ離れた存在のような印象というよりは、これまで自分が生まれ育ってきた中で見てきた大阪といいますか、町の風景、地元の風景の中にいるような理想的なお姉さん像が浮かんだので、それを任せていただけるということは、本当にうれしいなと思いました。

――演じられた彼女は、原作にはないキャラクターですよね。

ウイカ:駒子というキャラクターは原作には登場しないというお話を、そのときにうかがいました。この役をお受けしたあとに原作を読ませていただいたのですが、映画は原作よりもエピソードが膨らまされていて、物語の世界がより広がっている印象を受けました。三好駒子というキャラクターは原作には登場しなくても、「きっといただろうな」と思わせる存在になっていると思いました。

◆自分の経験が活きる喜び

――映画では、鈴木亮平さんと有村架純さん演じる兄妹が大人になった時代を中心に描かれていますよね。

ウイカ:原作は子ども時代のエピソードで終わっていますが、彼らがこれから生きていく中で、たとえばお母さんのような存在であったり、お姉ちゃんのような存在、あるいは恋人や親戚のように世話を焼いてくれる女性が、きっとどこかに存在していたと思うんです。そういう役割を映画の中で任せていただけたことが、とてもありがたいなと思いました。

――ウイカさんにぴったりのキャラクターでしたが、演じやすかったですか?

ウイカ:前田監督も最初に衣装合わせでお会いしたときから「駒子や」とおっしゃってくださったので、変に背伸びをしたり、作り込んで役作りをするのではなく、自分の中にこれまで培ってきた経験や、これまでに見てきた、世話を焼いてくれたお姉ちゃんやおばあちゃんの姿を、そのまま引っ張ってくるような感覚で演じることができました。そういう意味でも、とてもうれしかったですし、自分の経験が活きるような喜びを感じられる役でした。

◆撮影現場では鈴木亮平と関西弁でおしゃべり

――鈴木亮平さん演じる俊樹との関係がとても印象的でしたが、撮影はどのように進みましたか?

ウイカ:亮平さんもわたしも、普段は標準語で話しているのですが、この撮影中はずっと、ふたりとも関西弁で会話をしていました。撮影以外の時間もずっと喋っていたように思います(笑)。音楽や世界遺産の話など、いろいろな話題でおしゃべりさせていただきました。

――幼なじみという関係性なので、役作りにもなりそうです。

ウイカ:幼なじみって共有してきたモノの数が、他の友人とは違っていると思うんです。経験値だけじゃなく、お互いの生態や気質を成長の中で認知し合うというか。「あ、こういうことを気にするんだ」みたいなことを、自然と知っている関係性なんだろうなと思いました。

たとえばスマホを返すときの仕草一つ取っても、そういう細かなところから人間性を感じ取るようなことってあるじゃないですか。メモを取ったりするわけではないですが、なんとなくその人の隣にいて感覚を掴んでいく作業を、雑談の中で行っていたように思います。亮平さんが、「この人と何十年も一緒に過ごしたら、きっとこういう空気感になるだろうな」という雰囲気を演じながら一緒に作ってくださったんです。

私自身はスポットでの登場シーンが多かったので、他の撮影シーンの空気感などは、クランクインの段階ではまだよく知らない状態でした。そうしたなか、作品全体の雰囲気や前田監督とのやり取りを通して亮平さん自身が掴んでいたものを、カメラが回っていない時間にも、ずっと私に伝えてくださっていたんです。

そのやり取りのおかげで、駒子というキャラクターにたどり着けたように思っています。

◆モットーは「ブレていい」

――近年、俳優業も大活躍ですが、仕事・人生において、大事にしていることはありますか?

ウイカ:仕事に限らず、振り返って人生全体で言えることなんですが、最近、自分の中で「モットーは何ですか?」と聞かれたときに答えるようにしているのが、「ブレていい」ということなんです。

よく「ブレない軸」や「芯がある人」って言うじゃないですか。もちろん、それも素晴らしいことですよね。でも私は、ブレていいと思っていて。自分のこれまでの生き方を振り返ってみたときに、本当に好奇心の赴くままに、興味のあること、いろんなことに挑戦してきたんです(笑)。

たとえば、最初は声優になりたいと思っていたんですが、途中で音楽に出会って「音楽をやりたい」って気持ちになって。さらに舞台にも惹かれて、そのたびに自分の興味や好奇心に従って動いてきました。声優の夢も諦めずに学校に通ったり、劇団に所属したり、俳優として世界を広げようと東京に来て、ひょんなきっかけで突然アイドルになったりして。

そうして振り返ると、「結局あなたは何がしたいの?」って聞かれても、「わかりません」と答えてしまうくらい、一本の強固なブレない芯、軸みたいなものはなかったけれども、フニャフニャの芯無し、というわけでもなかった。

――意味が違うってことですよね。

ウイカ:ブレない方が「鉄骨」のような、がっしりした芯を持っているとしたら、私は「しなる竹や縦横無尽に揺れるゴム製」みたいな芯のイメージ。もし最初からガチガチな芯を立てていたら、途中で挫折していたと思うんです。そこまでガチッと決めずに、グニャッと動けたからこそ、次々に新しい世界を経験できた。それが、いま役者としての自分を支える財産になっていると感じています。

もちろん、アスリートの方のように、幼い頃から一つのことに打ち込んできた方への憧れはあります。でも私は飽き性なところがありますし、いろんなことに目移りしてしまう。なので無理に「一本の道」を決め込まなくていいんじゃないかと思います。

ブレながらも少しずつ自分を構築するタイプ。だからこそ、今みたいにいろんな選択肢を持てることがありがたいですし、それによって出会えた役や作品にも、すごく感謝しています。

◆“ブレられること”が幸せ

――実際、体験してみないと、適正はわからないですからね。

ウイカ:ブレることって「急がば回れ」という感じで、私はその経験があったからこそできる役もあって、今があると思っています。高校生・大学生で進路を悩まれてる方に相談を受けるときはよくこのことを伝えますし、転職を考えてる方にも、ダメだったら帰ってきたらいいと思うんです。

ブレたらダメというのは私は違う気がしていて、ブレてもいいんです。わざとブレろとは言いません(笑)。ブレてもいい、をモットーにしています。そういう生き方もあっていい。これからの時代はよりいいんじゃないかなって思います。

――その考え方で大河ドラマへの出演も叶いました。

ウイカ:ありがとうございます! 私のキャラに近いようなキャラクターだったなと思うんです。わたしは、万遍なくブレて今日はバラエティ、今日は俳優と日替わりみたいな感じなので、今の働き方は性に合っています。その中であの大河ドラマの経験は視野を広げてくれて、大事な発見がすごくたくさんありました。

そういう作品に出会えるとグッと伸びたような気がしますし、さらにもっと広げたいって思えるんです。そういう作品にずっと今恵まれているので、そこが一番感謝しています。ブレられることが幸せといいますか、それは選択肢があるということですから。

――今後の人生、特に30代後半としては、どんなふうに生きていきたいですか?

ウイカ:ちょうど今、次のフェーズに入る入口だなと感じています。10年前、25歳の頃はまだグループ活動をしていて、まだ全然テレビにも出ていなかったので、まったく違う世界にいました。そこからまた10年たった今、また何かが変わるタイミングにあると思っています。

女性としての生き方にも、これから体調や考え方の変化が出てくる時期だと思います。ただ、そういった中で「今、働けるうちに働いておこう」と思う気持ちは、これまで以上に強くなっています。

役者としても、演じられる役の幅が広がると思うんです。母親役や、ちょっと頼れる先輩役など、これまでとはまた違った役柄に出会えるのが楽しみです。キャリアの中で、そういう変化を経験できることにワクワクしています。

<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>

【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。

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