参院本会議で発言する鈴木馨祐法相=4月23日、国会内 懲役刑と禁錮刑を廃止して「拘禁刑」を創設する改正刑法の施行が1カ月後の6月1日に迫った。1907年の刑法制定以来初めての刑罰の種類変更となる。法務省は全国の刑務所などに24の矯正処遇課程を新設。懲罰から再犯防止に重心を移し、個々の受刑者の特性に応じた処遇を目指す。
鈴木馨祐法相は4月25日の記者会見で「より効果的な改善更生が期待される。従来の考え方にとらわれず、円滑に導入できるよう取り組みを進めている」と述べ、拘禁刑導入に向けて職員の意識改革などを進めていると強調した。
犯罪白書によると、2023年に検挙された18万3269人のうち、再犯者は47%に当たる8万6099人。再犯者率は20年に過去最高の49.1%を記録して以来、高止まりしている。
背景には受刑者が「作業」に追われ、再犯防止のための「指導」を十分に受けられない懲役刑の硬直性があると指摘されてきた。拘禁刑導入は、懲役刑と対象者の少ない禁錮刑を一本化し、作業を義務としないことで、作業と指導を柔軟に組み合わせた細やかな処遇を実現するのが狙いだ。
法務省が全国の刑務所や少年刑務所、拘置所に新設する矯正処遇課程は「一般処遇課程」「若年処遇課程」「外国人処遇課程」「依存症回復処遇課程」「高齢福祉課程」「福祉的支援課程」など。特性に着目し、受刑者を各課程に振り分ける。受刑者のスムーズな社会復帰を後押しするため、「農業ビジネスコース」「ものづくり人材養成クラス」「教科指導集中処遇コース」などの特別コースも設ける。
拘禁刑は6月の施行後に罪を犯した人が対象となる。ただ、懲役刑、禁錮刑での受刑者についても順次、新たなグループに振り分けるとしている。

名古屋刑務所=2023年1月、愛知県みよし市