自民党の資産運用立国議員連盟の岸田文雄会長(中央左)らから提言書を受け取る石破茂首相(同右)=4月23日、首相官邸 自民党の岸田文雄前首相ら有力議員が、勉強会や議員連盟を相次ぎ発足させている。党派閥の裏金事件を受けて麻生派を除く各派が解散。石破茂首相(党総裁)が少数与党の政権運営に苦慮する中、夏の参院選も厳しい戦いが予想される。派閥に代わる新たな結集軸として議員を囲い込み、「次の政局」に備える狙いが透ける。
「能登の本格的復興は道半ばだ。関心を持ち続け発信に取り組みたい」。岸田氏は4月17日、能登半島地震の被災地を支援する新たな勉強会でこう強調した。
岸田氏は資産運用立国議連の会長も務め、4月に少額投資非課税制度(NISA)拡充を首相に提言した。5月3日からアジアの脱炭素化に関する議連メンバーを率い東南アジアを歴訪。旧岸田派関係者は「再登板も視野にある」との見方を示す。
「ポスト石破」候補も活発だ。茂木敏充前幹事長は外交・経済、河野太郎前デジタル相は社会保障改革をテーマに勉強会を発足させた。小林鷹之元経済安全保障担当相と高市早苗元政調会長も勉強会を継続。いずれも所属した派閥にこだわらず幅広く参加を募っている。
「大物」を取り込む動きもある。萩生田光一元政調会長は岸田氏の議連幹部で、東南アジア歴訪に同行する予定。茂木氏の勉強会にも名を連ねる。裏金事件に伴う党の役職停止処分が4月に満了したばかりだが、最大派閥だった旧安倍派メンバーになお一定の影響力を保つ。
派閥はリクルート事件などで政治不信が高まると、表面上は解消しても結束は保ってきた。今回は裏金事件の収束が見えず世論の批判も依然強いためか、現時点で実質的な活動はほぼ止まっている。
一方で、派閥には今も衆参300人超を擁す巨大政党を「分割統治」し、党を二分する政策テーマで意見集約につなげる機能もあった。毎週木曜日の各派総会では人事や国会の情報を共有。執行部は代替措置として、党の方針を代議士会や参院議員総会で報告する取り組みを始めたが、早くも「人を育てる役割までは補えない」(若手)との不満が出ている。
党関係者は「人間は群れる生き物だ。派閥のような集団はなくならない」と指摘した。