大阪高裁や地裁などが入る合同庁舎=大阪市北区 石綿(アスベスト)工場で働き健康被害を受けた男性の遺族が国に損害賠償などを求めた訴訟で、逆転敗訴した国が上告を見送ったことが2日、厚生労働省への取材で分かった。上告期限は1日で、請求を退けた一審大阪地裁判決を取り消し、国に約600万円の支払いを命じた大阪高裁判決が確定。国は救済範囲を狭めた運用を一部見直す。
国は2014年の最高裁判決を受け、一定の要件を満たす元労働者らに、賠償金を支払う救済策を取っている。厚労省は19年、周知せずに救済範囲が狭まるよう運用を変更。賠償請求権が消滅する「除斥期間」(20年)の起算点を、各都道府県の労働局が健康被害を認定した時点から、被害が発症した時点に早めた。
この結果、救済対象から外れた男性(その後死去)側が訴訟で争った。大阪高裁はじん肺の病状の特殊性などから、起算点を運用変更前の「被害が認定された時点」と判断した。
厚労省は石綿肺の患者のみ運用を変更前に戻し、他の疾病については見直しは行わないという。
同省によると、同様の訴訟で2月、最高裁で国敗訴が確定しており、この訴訟も踏まえて上告しなかったとしている。
原告側弁護団の奥村昌裕事務局長は「当然の対応で国はもっと早急に被害者に寄り添うべきだった。全て(の疾病)について救済範囲を元に戻すべきだ」と話した。