『“しっぱいを教える教室”の代表が高校生に伝えたい「ガチャ時代」のやりたいことの見つけ方 (赤本進路)』川村 哲也 教学社 近年、「ガチャ」という言葉がいろいろな場所で使われるようになっています。親ガチャや教師ガチャ、社会に出たら出たで、上司ガチャに勤務地ガチャ......。本来ガチャは「何が出るかわからない面白さ」が魅力のはずなのに、「運の悪さや失敗」などのネガティブな意味合いで使われることが多々あります。
そんな「ガチャ時代」において、満足できる"アタリ"を引くためには、どう考えてどう動くのがよいのでしょうか。そのコツを伝えているのが、川村哲也さんによる『"しっぱいを教える教室"の代表が高校生に伝えたい「ガチャ時代」のやりたいことの見つけ方』です。
川村さんの経歴は少し......というか、かなりユニークです。北海道の浦河町という片田舎で医療系一家の子どもとして生まれたものの、勉強面ではずっと落ちこぼれだったといいます。その後、一浪して京都の大学に入り、リクルートに入社したものの1年で退職。現在は「5教科を教えない学習教室」として京都や大阪で教育事業を展開しながら、子どもたち一人ひとりに合った「最先端の新しい教育のあり方」を模索・開拓し続けています。
その内容とは、子どもたちの興味にまかせ、一緒に宇宙にiPadを打ち上げてみたり、地域の梅を使ったジュースを商品化したり、はたまた自作の船で琵琶湖を横断してみたり。川村さん自身がこれまでに数々の失敗を経験していること、そして教室の生徒たちがさまざまなチャレンジを通して変わっていくプロセスや姿を何度も目にしていることから、とにかく「しっぱい大歓迎、人は違って当たり前」だと呼びかけます。
川村さんいわく、「ガチャのアタリを増やすコツ。それは、『引く回数を増やす』こと」(同書より)。言われてみれば当然のことかもしれませんが、世の中にはハズレが怖くてガチャを引かない人もいるものです。
「いろいろ試してみた方が得られるものだらけだし、ぼくのまわりの人たちが証明してくれている。試しにやってみても失敗することはすくないどころか、ガチャを引いたら何かしら手元に残るものがある」(同書より)
その際、「自分から積極的に動く『攻めの動詞』を多めに経験しておいた方が、自分の選択肢が増えていく」(同書より)そうです。具体的には「疑う、探す、吐き出す、広げる」。同書ではこの4つの動詞をもとに、2章以降で「『勉強しなきゃ』は何のため?」「『知っている世界』はどれくらい?」「『最適な世界』は自分でつくれる」「『お勉強のその先』へ踏み出そう」「アタリは『自分の意志』で引く」といったテーマについて語られます。各章の最後には自分で書き込む「5分ワーク」が用意され、自分自身に当てはめて考えられるようにもなっています。
少し前には想像できなかったような未来が急速に現実のものとなっている現代。「学校の勉強を頑張り偏差値の高い大学に入れば人生安泰」といったひと昔前の価値観がすべてではなくなってきている中で、自分が心から納得できる人生を送るにはどのような選択をすればよいのでしょうか。同書は、そんな"自分にとってのアタリガチャの引き方"を教えてくれる一冊となっています。タイトルに「高校生に伝えたい」とあるように、大学受験を念頭に置く高校生に向けたものとなっていますが、将来について考えたい小学生や中学生、またお子さんを持つ親御さんにとってもおおいに参考になることでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]
『“しっぱいを教える教室”の代表が高校生に伝えたい「ガチャ時代」のやりたいことの見つけ方 (赤本進路)』
著者:川村 哲也
出版社:教学社
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