柚香光&樋口日奈、劇団☆新感線の新作で母娘役「全身全霊で日々を重ねていきたい」【インタビュー】

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2025年05月03日 10:10  エンタメOVO

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樋口日奈(左/ヘアメーク:林 まきこ:スタイリスト/阿部絵莉香)と柚香光(スタイリスト:大園蓮珠) (C)エンタメOVO

 2024年5月に宝塚歌劇団を退団した柚香光の退団後初舞台となる、2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective「紅鬼物語」が5月13日に開幕する。鬼が棲(す)まう平安の世を舞台にした“お伽噺(とぎばなし)”のようなファンタジーで柚香が演じるのは、娘とともにこつ然と姿を消した紅子。これまでの男役の衣を脱ぎ捨て、新境地に挑む柚香と、紅子の娘・藤を演じる樋口日奈に公演への意気込みを聞いた。




−二人とも本作が劇団☆新感線初出演になります。出演が決まったお気持ちと劇団☆新感線のどんなところに魅力を感じているのか教えてください。

柚香 エネルギッシュで華やかで、刺激と笑いとパワーあふれた劇団☆新感線の舞台に、私も客席から何度も感動をいただいていましたので、出演が決まったときは本当にうれしかったです。しかも、45周年という記念の公演に主演として出演させていただけるということはとても光栄なことですし、劇団☆新感線ファンの皆さまにも、自分のことをずっと長く応援してくださっている皆さまにも喜んでいただける作品にしたいという意気込みでおります。

樋口 劇団☆新感線の公演を初めて観劇したときは、とにかくその豪華絢爛(けんらん)さに目を奪われました。セットも衣装も全てがパワフルで、終演後しばらく圧倒され、ぼーっとしてしまったほど、不思議な魅力を感じました。そのときからいつか私もこの舞台に立ちたいという思いをずっと持っていたので、今回、こうして出演させていただけることがすごく幸せです。私が観劇したとき、キャストの皆さんからお客さんを楽しませようという思いを強く感じたので、それがパワーを生んでいるのだろうと思います。私も来てくださった方々に全力で楽しんでいただけるように頑張ります。

−“いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective”と銘打ち、新感線流お伽噺を上演するという本作ですが、最初に脚本を読んだときの感想は?

柚香 物語としてとても面白かったです。人と鬼をテーマに描かれている物語ですが、人間の欲や弱さといったものが絡み合いながら進んでいきます。鬼の世界の常識や事情があることも描かれていて、人間と鬼を区別していいのかと考えてしまいました。心をひねりつぶされるような場面もあって、人間の怖さを感じたり、善と悪についてすごく考えさせられるお話です。お伽噺というと子どもに聞かせる童話のイメージがありますが、この作品は生々しくてホラーでダークで、「生きること」をテーマにしたメッセージ性が強い作品だと思いました。

樋口 鬼はお伽噺や昔話にも出てきますので、皆さんが知っている存在ですが、そうしたファンタジーな設定は入り込みづらいのかなと最初は思いました。ですが、実際に読んでみると不思議と違和感なく読み進めていけました。お伽噺ではあっても、同じ世界の延長線上に起こり得る物語のようなリアルさを感じてすごく面白かったです。これが劇団☆新感線の舞台になるとどうなるんだろうとイメージが奮い立たされて、お稽古に入るのがすごく楽しみになりました。

−本作の製作発表で、演出のいのうえひでのりさんが「これまでの新感線の作風とは毛色が違う」と話していましたが、それは脚本からも感じましたか。

柚香 そうですね。生々しい場面は多いと思います。それをどう演出されていくのかでまた作品の印象は変わってくると思いますが、本読みをしていてもすごく生々しさを感じました。温度や湿度がダイレクトに届いてくるような感覚があって。生の醍醐味(だいごみ)を感じていただける粘度があるなと思います。

樋口 まだどういう作品になっていくのか分かりませんが、新感線の緩急がある作風は残っていると思いますし、新感線らしさも感じられるものになるのではないかとも思います。

−それぞれが演じる役柄についてどのように捉えていますか。

柚香 紅子は、「人間ではないし、鬼でもない。でも、人間であって鬼でもある人物」です。心もさまざまな面を持っている多面的な存在で、葛藤や過ちを抱え、自分の行動をコントロールできないときが出てきます。ですが、彼女は壁にぶち当たっても自分自身に問いかけて、必死にもがきながら生きている。鬼の役ではありますが、人間の私たちにも通ずる葛藤や悩みを持っていて、お客さまはとても共感できるのではないかなと思います。鬼というただの架空の存在ではなく、架空でありながら多くの人が持つ感情を共有していただけるような役作りができたらいいなと思っています。

−今回は、母親であり、妻であるという役柄です。宝塚歌劇団で男役をされていた方は退団された後、女性役を演じることに難しさを感じるとも言いますが、この作品は鬼という役柄なのでそういう意味での難しさはないですか。

柚香 今回のお役にも女性らしい部分があります。鬼も演じますので、その演じ分けがキーになってくると思います。もちろん、娘時代、母親、妻としての姿を演じる場面もあるので、その難しさもありますが、平安時代の所作であったり、鬼としての動きをどう作っていくのかは、いのうえさんをはじめとした皆さんと一緒に作っていきたいと思います。女性になる、妻、母という新しい自分の芝居の打ち出し方を作っていくのは、新しい1歩だなとも思いますし、それにプラスして、さまざまな面でも作り込んでいきたいと思います。

−樋口さんは柚香さんが演じる紅子の娘という役どころです。

樋口 私が演じる藤はこの物語の中で唯一の存在として描かれています。鬼である母と、人である父を持つ娘。その葛藤や、そうした立場の子がどのような一生を全うするのかをしっかり考えながら、見てくださっている方々にメッセージをお届けできるように演じたいです。未知なところが多いので、きっと稽古が始まってからたくさんの刺激を受けて作られていくんだろうなと楽しみです。

−柚香さんが母親役で、鈴木拡樹さんが父親役という豪華な家族構成ですね。

樋口 どうしましょう。ぜいたくでございます。

−お二人の親子関係は、どう作っていきたいと考えていますか。

樋口 藤は「鬼だから。人だから」といったことは考えず、ただただ愛を受け取っているのだと思いますので、あまり考えすぎない方が良いのだろうなと思います。

−最後に改めて公演への意気込みと読者へのメッセージをお願いします。

樋口 今回、初出演で、カンパニーで最年少でもあります。さまざまなことを吸収し、どんなことにもトライしたいと思います。この期間に私自身も成長できるよう覚悟を持って臨みます。見に来てくださった皆さんが劇団☆新感線の魅力を再確認できる公演になるよう、そして初めての方には新感線を体験していただき、魅力をお伝えできるよう一生懸命頑張ります。

柚香 お伽噺のような世界観と平安の時代の中で、自分にしかできない紅子という鬼の役を作っていくことに「やるぞ」という気持ちが湧いています。キャストの皆さまと初めてご一緒して、お芝居をする中で温かく快活で朗らかな空気感ができあがっており、そうした皆さんとご一緒できることに大きな喜びがあります。これからどのように稽古が進み、自分がどんな壁に当たって悩むのか分かりませんが、良い作品を作るために全身全霊で日々を重ねていきたいと思います。

(取材・文・写真:嶋田真己)

 2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective「紅鬼物語」は、5月13日〜6月1日に大阪・SkyシアターMBS、6月24日〜7月17日に都内・シアターHで上演。


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