13番グリッドからの表彰台獲得。STANLEY牧野が見せた極上の燃費走行と富士で得た手応え/第2戦決勝

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2025年05月04日 22:50  AUTOSPORT web

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山本と牧野の燃費走行が奏功してピット時間を短縮でき、順位を大きく上げることができたSTANLEY CIVIC TYPE R-GT
 スーパーGT第2戦富士スピードウェイの予選でまさかのQ1敗退、13番グリッドからスタートした100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが、10ポジションをアップして3位表彰台を獲得するパフォーマンスを見せた。セーフティカーや赤旗が一度も出なかった中での、3時間の長時間レースでどのように順位を上げて行ったのか、レース後に聞いた。

 土曜日の練習走行で4番手と好調のように見えた100号車STANLEY。だが、その後の予選Q1では山本尚貴がコンマ1秒で4つ順位が変わるという接戦のQ1で、まさかの敗退を喫してしまった。

「(練習走行の)走り始めに自分が走った時はそんなにフィーリングは悪くはなくて、タイム的にも上の方に行けたので、決して気を抜いてたわけではないのですけど、Q1でまさか落ちるとは思っていませんでした。あの僅差の戦いの中でこぼれて、自分の実力のなさを感じたなと思いますし、すごいチームの足引っ張っちゃったなと思っています」と、肩を落とす山本。

 山本は決勝のスタートを担当し、序盤でなんとか前の1台をオーバーテイクして順位をひとつ上げる。だが、スタートで装着したハード側のタイヤが思ったように機能させられず、なかなかペースを上げられない。

「スタートからのポジションをもう少し上げたかったですけど、17号車(Astemo CIVIC TYPE R-GT) に詰まってしまった。今週末は自分が週末にやるべきこと、やらないといけない仕事がしっかりとできなかった」と山本。

 なんとか39周目に10番手まで順位を上げたところで、チームメイトの牧野任祐にステアリングを託した。

 そして、タイヤのコンパウンドを変えて臨んだ牧野は躍進。第2スティントでオーバーテイクを連発して、8番手まで順位を上げたところで、2回目のピットイン。100号車は牧野に第3スティントも続けて託すダブルスティントを選択し、このピットタイミング前後が100号車の大きなターニングポイントになった。

 2回目のピットアウト後、実質2つ順位を上げることに成功。そのアンダーカットを成し遂げたのは、まさに牧野の燃費走行による給油時間の短縮が大きな要因となったのだ。牧野が自身の走行を振り返る。

「ずっとコースティング(アクセルを戻して燃費を稼ぐ走法)をしながら追い上げていて、要所要所でバトルになった時はもちろん(アクセルを普通に)踏んでいますけど、それ以外はかなりコースティングしていましたね」

 今回の富士で、具体的にどこでコースティングをしていたのか聞いてみる。

「1(TGR)コーナーとB(ダンロップ)コーナーはもうほとんど常にしています。サードスティントで『ちょっとガス使っていいよ』とエンジニアから無線で言われた時にはプッシュした周もありましたけど、それ以外は基本、コースティングしていない周の方がたぶん、少ないです。 1コーナーはもうコースティングをする時には200(メートル看板)ぐらい、150(メートル看板)ではもうやってますから」

 通常、GT500のマシンの1コーナーでのブレーキングポイントは100メートル看板手前と言われているだけに、バトルをしながらの牧野の細かなドライビングスキルの高さが伺える。ちなみに、加速の際のアクセルの踏み方についても聞いてみた。

「本当は加速も燃費を意識してやらないといけないのですけど、タイヤのピックアップ(タイヤかすがタイヤについてグリップダウンを招く現象)がある。本当は丁寧にアクセルワークをやれるのがいいんですけど、やはりピックアップを飛ばしながら走りたいので、そこは結構踏んでますね」

 100号車のクルマの作り方、そしてセットアップもそのコースティング、燃費を重視した進め方になっているという。

「今回のようにコースティングをしながらでもきちんと速いクルマを作るというのは本当に大切だと思って、結構、僕らはそこは意識しながらやっています。コースティングをやるとなると結構、エアロの取り方が変わってくるので、そこは今回、レースに強いクルマにできたかなと思います」と牧野。

 そのクルマ作りと共に、今回のピットストップ戦略、そしてレースで追い上げることができた展開に、牧野は別の手応えも感じていた。

「今日のこういうレースこそが、チーム国光のレースかなと思っていて、2020年(タイトル獲得)、2021年とかはずっとそれができていたと思うし、改めてそういうレースが今年、チーム体制が変わった中でもできた。今年はチームのメンバー変わっての初表彰台なので、ひまず良かったと思いますし、チームのみんなの励みになると思います。ただ、1号車が前にいるので、チャンピオンシップ考えたらやっぱりもっといろんなレベルを上げていかないといけないなと思います」

 その牧野は、前日の予選、そして第1スティントでパフォーマンスを発揮しきれなかったチームメイトの山本尚貴への気遣いも忘れなかった。

「今回は特に、自分が履いたタイヤの方は昨日(土曜日)の段階から結構、フィーリングが良かったので、今回は僕がいいパッケージの状況で乗らせてもらう時間が長かったかなと思っています。今週は上側のタイヤ、ハードタイヤをうまく使えていなくて、 その状況で尚貴さんに厳しいところで行ってもらった。 今まで結構、尚貴さんにおんぶに抱っこ状態だったので、今回はちょっと僕がいいところを走らせてもらったというのがあるのですけど、自分自身はやれることはやれたかなとは本当に思いますね」

 いろいろと順風満帆とはいかない週末の中でも、最後のレースではきっちり順位を上げて今季初表彰台を獲得した100号車STANLEY。今回の紆余曲折の内容は、もしかしたら今季のこれからのターニングポイントになるかもしれない。

「そうかもしれませんね。富士では次にスプリントレースが2回ありますし。今回のレース個人的にはなにかいろいろと収穫があったなと思っています」と、牧野。

一方の山本も、今後に期待を見せる。

「 個人的にはこの週末、いいところがなく終わったという感じで反省点が多いのですけど、チームとしては予選の順番からこの表彰台が取れたというのと、チームと牧野選手のスピードを見せられたというのは素直に喜ばしいことだと思っています。僕としてもこの まま終わるわけにはいかないですし、なんで今回ダメだったのかをもう1回見直して、次のレース以降、いい形でまたレースができれ ばなと思います。次のセパンはテストでも調子良かったので、また表彰台目指して頑張りたいと思います」

 開幕から2戦連続でGRスープラが優勝を果たし、2連覇中の1号車au TOM'S GR Supraがこの2戦で優勝、2位でランキング独走状態に入る中、ホンダ陣営のランキングトップ(総合4位)のエース車両として、復活の兆しを見せた100号車STANLEYがどこまでGRスープラ勢に対抗できるか。次のセパン戦が早くも今季の試金石となるのかもしれない。

[オートスポーツweb 2025年05月04日]

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