妻が浮気している――? 新興宗教の勧誘を断ったことをきっかけに、疑心暗鬼で夫婦関係が混乱する不思議な漫画『終末夫婦』がnoteで連載中だ。
主人公は作者・したら領さん(@shitara_ryo)らしきコミカルな恐竜として表現されており、重めな展開をライトに読ませるのも特徴。ジャンル分けが難しい本作はどのように生まれたのか。(小池直也)
――これはエッセイ漫画なのでしょうか?
したら領(以下、したら):フィクションです。フィクションではありますが、感情をリアルに描くために、実生活で生まれた心の動きを元に、拡張して描いています。なので現実と重ねて読んでもらえたら嬉しいです。
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――主人公夫婦が恐竜なのも特徴ですね。
したら:元々SNSのアイコンが黄色い恐竜でして。以前から描いているエッセイ漫画も、主人公の見た目をアイコンに揃えていました。その流れもあり、今作の主人公も恐竜にしました。エッセイの文脈に、フィクションが忍び寄ることで、日常が壊れていく感じを演出したかったんです。
――夫婦の関係性を描こうと思ったのはなぜ?
したら:昭和は「結婚」というものが、誰にとっても、当たり前の前提になっていて。夫が稼ぎ、妻が家庭を回す時代。それが平成、令和ときて、揺らいでいます。
結婚、夫婦、核家族というシステムに無理が生じている。私自身も結婚しているので、その歪みを体感しながら日々暮らしています。普遍的であり、時代性もあったので、テーマとして選びました。
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――作中では夫婦を脅かす存在として「終末教」が登場しますね。
したら:本当に自宅に新興宗教の勧誘が来たことがあって、それがきっかけで登場させました。それは「信じる」とか「期待する」ということに興味があるからです。
結婚も永遠の愛があると思って始める側面があるし、相手を信じたり期待を持つからこそ裏切られて憎しみが生まれる。「信じる」ことのパワーは使い方によって、プラスにもマイナスにもなるじゃないですか。それについて、もう少し描いていけたらと思ってます。
――計画的に作るタイプではないということですが、描きながら発見したことはありますか。
したら:「不機嫌」は家族が破綻する根本的な要因だな、というのは発見でした。そこに集約されるというか。私や妻が不機嫌だと、家が地獄になります。
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色々と問題を抱えながらも、不機嫌を相手にぶつけなければ、何とか生活は続けられます。一方でそれだけだと、根本的な解決にはなっていないなとも思います。
――家庭の空気が悪くなると部屋が汚くなる描写が印象的でした。
したら:あれは漫画的な表現ではありますが、実際そうだと思います。疲れてくると基本的な生活がままならなくなってくる。「風呂キャンセル」なんていう言葉も話題になりましたが。僕も含めて日本人は疲れているのかもしれません。
――夫婦の生活を描くことによって、社会を描いているような?
したら:ミクロを描くことによって、マクロ的なテーマに到達するのは、一つのやり方かなと思います。
――人間関係を良好にするために大事だと思うことは?
したら:「その人の長所や良い部分を見つけていく」ことだと思います。人の個性というのは、良くも悪くも映るので、ポジティブに捉え、伝えることで、自然と関係はよくなるし、楽しいと思いますね。私自身はそれが苦手で、妻からも注意されたりするんですが(笑)。来世はもう少し、ポジティブな面を発見して喜べるような人間になれたらいいなと思います。
©︎したら領/コルク
(文・取材=小池直也)
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