Huluオリジナル「おとなになっても」©志村貴子/講談社 ©HJホールディングス山本美月、栗山千明らが共演、Huluにて独占配信中のドラマ「おとなになっても」の口コミが広がっている。今回は、原作の志村貴子作品が熱烈に愛され続ける理由に迫った。
本作では、小学校の先生をしている既婚者の綾乃(山本美月)が、行きつけのダイニングバーで働く朱里(栗山千明)との出会いから突然始まった、ビターなおとなの女性同士の恋愛を描く。
4月26日から配信が開始されると、瞬く間にHuluデイリーランキング〈国内ドラマ部門〉において第1位を獲得。その勢いは衰えることなく、現在も大きな話題を呼んでいる。
SNSでは、「原作の世界観を守ってくれてるけど確かに生身でそこにいる綾乃と朱里だった」「おとなになっても、原作が動いている感動。空気感。凄い。凄い凄い」「モヤモヤキュンキュンが止まらないドラマでした!来週も配信楽しみだな〜」と原作を愛するファンの心にも響き、称賛の声とともに口コミが急増中だ。
◆志村貴子作品が熱烈に愛され続ける理由とは?
原作は、漫画雑誌「Kiss」にて、2019年5月号から2023年10月号まで連載されていた志村貴子の同名漫画。
志村作品の最大の魅力は、想像をかき立てる言葉以上の“余韻”。セリフやモノローグが入っていないシーンでも、ふとした登場人物たちの行動や表情で、読者に心情を想像させるところにある。
例えば、原作漫画では、綾乃から「女の人が気になっている」と打ち明けられた渉が、翌日の会社で過ごす様子に焦点が当てられた。
仕事に没頭しながらも無言のまま時間が流れていく様子を、2ページに渡り定点のコマ割りで描写。時計の針だけが一定に進んでいく感覚になるような印象的なシーンで、渉の中にある怒りでも悲しみでもなく、感情が爆発する前の嵐の静けさのようなものが滲み出ているようにも感じられる。
出社前には「会社休みたい」と思っていた渉も、帰りの電車の中では、隣の席の人物に頭を寄りかかられても「とてつもなく心が穏やか」と感じるように。
このことからも、渉が仕事をこなしながらも、感情を整理している最中であったことが存分に伝わってくる。このように、“語らないことで伝える”という志村作品の余白を描写した表現が、読者の想像力を強く刺激していく。
ドラマの第2話でもこの定点シーンは再現されており、濱正悟演じる渉から心情の移ろいがしっかりと伝わってくるよう。映像作品ならではの表現に仕上がっている。
◆人間味溢れるキャラクター描写に注目
さらには、非常に繊細で感情豊かなキャラクター描写も特徴的。
多くの登場人物の中でも、特に繊細に描かれているのが、物語の重要人物である渉の妹・恵利(錫木うり)。引きこもりがちで社会と距離を置いている彼女は実家で暮らし、母・依子(麻生祐未)から常に心配されている。
感受性が非常に高く、美容院に髪を切りに行けばすぐに帰りたいと思い、兄の渉からも「今さら何を話せばいいか分からない」と言われてしまうなど、物語を通じて不安定な存在として描かれている。
このように、誰しもが経験したことのある不安な気持ちや、異性の兄妹との微妙な距離感を繊細に描くことで、恵利の姿には多くの読者が共感を寄せた。
物語の中盤では、恵利が「今の自分を少しでも変えたい」と動き出したことがきっかけで、周囲の人物にも思わぬ影響を与えていくことに。そんな恵利は、ときに「綾乃の本音」を鋭く突くことも。綾乃が“物分かりの良い大人”として抑えてきた感情を引き出し、その価値観にも揺さぶりをかけていく。
まさに“裏の主人公”とも言える恵利は注目人物。志村作品には、このように人間味あふれるキャラクターが数多く登場する。
「おとなになっても」では恋愛にフォーカスは当てられつつも、群像劇な側面も多く、登場人物たちの行動に思わず「わかる!」と共感してしまうこともしばしば。こうした様々な形の恋愛や人間関係の複雑さ、リアルな感情の揺れが、作品への共感と支持を集めてきた理由のひとつだ。
多くの作品で、恋と人生を描いてきた志村が送る「おとなになっても」。
Huluオリジナル版は山本・栗山ほか豪華キャストが集結し、志村の長いキャリアの中でも初の実写ドラマ化となった。原作の魅力を引き出し、映像としてそこで生活を営む登場人物たちの姿は見逃せないものとなっている。
Huluオリジナル「おとなになっても」1〜3話がHuluにて独占配信中、毎週土曜に最新話更新(全12話)。
(シネマカフェ編集部)